月の都の花嫁

城咲美月

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「奏様、何をするつもりなんですか?」

自分の部屋に戻った私にアネッタから、ワクワクした気持ちで話しかけられている。

アレックスも気になるみたいで、ちらりとこちらを見ながらソワソワしている。

クスッ

「アレックスも部屋の中で待機してちょうだい
時には、部屋の中をチェックするのも護衛として必要な事かも」

こほんと咳払いして、ほんのり頬を桃色に染めつつ
「では、ひととき部屋のでの護衛をします
あー、警戒は怠らないよう努めてます」

そう言うアレックスは後ろで手を交差したら、そこで邪魔にならないよう突っ立っている。

「では、早速だけど絵の具を作ろうと思って」
「絵の具!?手作りできるんですか?」

アネッタの驚きようから、鉱物から作れるなんて
想像もしなかった事だろう。
そんなにびっくりされるとは思っていなかった。

まぁ、私も鉱物から作れる事を知ったのは小学生の頃の夏の自由研究からだったから、アネッタの気持ちは理解できる。

まぁ、魔鉱石だけど、と心の中で呟いておく。

「見ててね」
私はそう言うと、ストレージにしたアイテムボックスから
先程回収した土嚢の袋を取り出す。

土嚢を開いて、中を確認したら粉末化されていたのを見つけた

そして
めのう乳鉢で粉末にされていた鉱物の粉を掬う。
粉の状態は、小麦粉と同じくらいだった

うん、バッチリね

「これはもう粉末にしてあるから、簡単なのだけど」

めのう乳鉢の中に必要な分の鉱物粉を入れておいて
パレットに
さらさらとした鉱物粉と膠液を水で2倍くらいの薄さにした物と混ぜて

「こうして、膠と混ぜ混ぜして」
「混ぜたら、ほら少しずつ赤色になってきたら」

筆に色を乗せて、画材のキャンバスに筆をトントンと
軽く叩くようにしたら

「ほら、見て
こうして色がついたでしょ」とキャンバスを2人に見せる。


そして「おぉ~」と拍手をもらった。

「簡単だったでしょ」と私は嬉しくなる。

アレックスは満足したのか「奏様、では、自分はそろそろ入り口の警護に戻ります
部屋の中は異常ありませんでした、奏様面白い物を拝見させていただきありがとうございます」

「いいえ、いいのよアレックス
こちらとしても助かったわ」と微笑む

アレックスの姿が見えなくなると、アネッタが
「それでこの絵の具はどうなさるんですか?」


「もちろん私の手慰め用に使うのよ、私の気分転換になるし」
「そうだったんですか!では、奏様絵のほうは得意なんですか?」
「得意と言うか、好きなの
今度アネッタに描いた物を見せてあげるわね」
「わあ!嬉しいです」
「下手なんだけど」
と笑って誤魔化す。
「そんな!奏様の絵を見せて頂けるのを楽しみにお待ちしてます」
「ええ」

試し書きくらいで作るとしますか

「アネッタ、私これからもう少し絵の具を作りたいから
夕食時になったら教えてもらえるかしら」


「ハイ!承知しました」

そう頼めば、アネッタは元気な返事をして退室していく。



赤、と言う事は辰砂と同じ性質の魔鉱石って事よね
それとも、炎の魔石なのかしら?

絵の具が出来たって事は、鉱物である事は間違いないはず
魔鉱石がある場所は、大抵ダンジョンの中だったり
天然物なら、鉱山にあったりする。
魔鉱石イコール鉱物(同じ性質の)と考えていいのならだけど、もしこの魔鉱石が辰砂と
同じ毒性があると確認できるまで、この魔鉱石の鉱物粉の使用するのはやめましょう。
めのう乳鉢の中で残った鉱物粉はソッと元の土嚢の袋の中に戻す。

幸いと言うか、試し書きくらいで良かったと胸を撫で下ろす。


ストレージからまた別の土嚢の袋を取り出し
さっきの袋を戻して、赤と記録する。

次、本を借りれるのは3日後か
確認できるのも3日後ね


今度は、小さな粒の瑠璃色、ラピスラズリみたいな鉱物が含まれるているのなら、あと藍銅鉱(アズライト)もあれば群青色もできる。
孔雀石は緑青。
代表的な鉱物粉がこの2つ。

大理石があれば良いのだけど、鉄鉱石も。

先程と、同じように膠液と鉱物粉を混ぜながら、絵の具を作っていく。


うん!これはまさしく群青色ね
鉱物粉も綺麗。


でも見分ける為に、素焼きの陶板が必要だわ。
条痕色をするしかないか。

廃棄するための土嚢の袋の中身まで、記載されてなかったのよね。
不純物も混ざってる可能性もあるもの。

魔鉱石の屑粉と、明記はされていたけど
ああいう工場では、廃棄する物も管理が不十分ではいけないがなんとなく不十分な感じがするのは気のせいであって欲しい。
いや、扱いが乱雑だったわね……
思わずため息をつく。
あーもう!

地道にやっていくしかないけど、こういうとき、別のゲームの鑑定のアイテムが欲しくなる。

まぁ、今は絵の具が出来た事は良い事だもの。
何にせよ、魔鉱石イコール鉱物(同じ性質の)だとしても
そうじゃなくても、廃棄されるはずの屑粉をゲットできたし
確か大きな鉱物があったはずよね、それは加工してもらいましょう。
工房があれば良いのだけど、あるよね?
大小の様々な形にして、ジオラマも作ろう
それに、自分だけのオリジナルのアクセサリーも作れるし
使い道は絵の具だけじゃないのよ
知らないから、あんなに乱雑に扱えるのよね。


私は思わずニンマリ口元が緩む。

あ!小分けするビンを買うのを忘れていたわ
リボンや紐なんかも買って、アネッタとアレックスにプレゼントしましょう
喜んでくれるかしら?
ふふふ、また近いうちに行きましょう。

楽しみが出来たと嬉しくなる

忘れないうちに私はメモをした。
ついでに日記帳にも今までの出来事を書いておいた。


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