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4話
しおりを挟むドーンッドーンッドーンッ
っと花火が三発立て続けにあがる
海戦の合図だ
「続けーっ!」
先頭にいた将軍が槍を構えて前を歩く
走り出して行くわけではないらしい
どことなく歩いていってぶつかった先から倒して行くスタイルなのか、ただ単に鎧が重くて走れないのかは分からなかった
高台から手前の敵軍など後方などは既に勝った気でいるのか、酒盛りしながら歩んでいた
まぁ、三万人vs三千人だ、10倍の人数がいるのだから余裕綽々なのだろう。
だが、ここは戦場である。
油断した者から死んでいく場所だ
「フッフッフッ!」と婆ちゃんは独特の呼吸法で息をしていた。
何かの疾患かと思えなくもないが、身に纏う雰囲気が違うと語っていた
やがて呼吸が落ち着いてくると同時に婆ちゃんの姿も変わっていった
髪は艶めいて光り輝き
肌は潤ってツルツルに
顔の皺も無くなってプルプルに
唇などもプルプルになっていった
魔闘覇気という技だった
特殊な呼吸法で息を吸い込む時に大気に満ちる魔力を躰に馴染ませて一番全盛期の時の体力と肉体まで活性化する廃れてしまった種族特有の魔法だった
婆ちゃんはその種族の最後の生き残りであった。
更にそこへ武器に魔力を流すと、棒が光り輝き聖剣本来の姿に変わっていった
そして、油断し過ぎた三万人の後方から一気に駆け出したかと思ったら直ぐに肉薄し横に一閃すると手前で酒を飲みかわしていた兵士数十人を薙ぎ払った
薙ぎ払われた兵士達は笑った顔のまま上下に別れそのまま吹き飛んでいった
即死だった
その周りの兵士達も何が起こったのか理解していなかった
突然消えた仲間の下半身から噴き出した噴水の様な血液が上から下へ雨のように降り掛かって初めて斬られた事に気が付いたが、叫ぶ事も出来ずに自分の首もまた空を飛んでいた事に気が付いた。
自分の躰が真下にあり、それを上から眺めている不思議な光景を見たあと視界が黒くなった
婆ちゃんが一閃した横薙ぎから素早く踏み込み集団の中に潜ったあと、首目掛けて360度回転したのだ
その回転からカマイタチ現象が起こり、首という首が宙に舞った。
その首が飛んだ瞬間婆ちゃんの半径5mにいる兵士たち全員の首から噴水の様に赤い血が吹き出し、辺り一面を血の海へと変えていった。
その回転斬りを何発も繰り返した結果、三万人居た兵士がまたたく間に減り、味方と敵軍が唖然とする中半分以上減っていた。
地面は赤黒くなり、歩けばビチャビチャと水の跳ねる音がする程敵兵血液で濡れていた
ボールの様にゴロゴロと転がった頭を踏み、転げ回りながら逃げ惑う敵軍と固唾を呑んで見守る味方の間を赤く染まった元婆ちゃんと光り輝く聖剣が舞っていた。
蹂躙であった。
第一期王国勇者の力は凄まじく
一騎当千どころか、一騎10万と言っても過言では無かった。
三万人Vs10万である
勝てるはずが無かった。
赤い人が舞う度に首が空から降ってきた
その光景は味方ですら震え上がるほど恐ろしい光景だった
唖然と槍を構えていた将軍は、敗走する敵軍の背中を眺めながら赤い人を見ていた
とこかで見た事ある金髪が返り血で赤く染まる髪らしき部分から覗いていた
その時初めて将軍は声を出した
「エクスカリ婆ちゃん!?」
その声が届いたのか赤い人の動きは止まり、片手を上げて
「後方支援!頑張ってるよ!」
そうにっこり笑って将軍に手を振った
「婆ちゃん!後方支援の意味が違うよ!?でもまぁ、助かった!ありがとう!」
そう言って手を振り返し後方に佇む味方の兵隊達を鼓舞した
「わら等の勇者様が先陣を切ってくださった!勝機は我らにある!敗走する敵軍を追い込み勢いのまま城まで攻め行ってしまえ!!」
そう叫ぶと未だ無傷の三千人は手に手に武器を掲げ逃げ惑う敵兵を討ち取るべく駆け出した
赤く染まった元婆ちゃんを正しく婆ちゃんと見極められたのは、返り血で赤く染まって容姿が分からなかったから、そして声である。年老いていても喉はまだまだ若かった為に謁見室で聴いた声と同じだった為である。
これが返り血を浴びて居なかったら、きっと将軍は誰か分からなかった事だろう。
まぁ、このあと将軍は返り血を洗い流し若返ったエクスカリ婆ちゃんに告白するのだが、今は割愛。
その後の戦闘は王国側の圧勝のまま敵の城まで追い込み、取り囲んで数日後無血開城させて勝利したのだった
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