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村にダンジョンが出来た⑥

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 「ハイ!どーぞー!高級焼き鳥セットでぇす!只今無料で配ってまぁす!レンチンしたらすぐ食べれますし、ビールにも日本酒にも合う塩とタレの二種類入ってまぁす!」

 「……なんの肉ですか?」
 「え?……(コカ)鳥っす……焼き鳥なので……」
 「あっ……ですよね!有難うございます頂きます!」

 二万食の高級焼き鳥のうちの五千食分を隣町で無料配布するコージ。

 売り手側をただ困らせるだけの為に注文していたコカトリスの高級焼き鳥が今朝早くに届けられたのだ。分けてでは無く纏まって一括で二万食。

 明け方にドアを叩く音と共にウキウキした内田の声が屋敷に響き

 「毎度お世話になっておりまーす!内田スパゲティ店でございまぁぁす!!御注文のお品コカトリスの高級焼き鳥セット塩タレ二万食!!おっ届けに参りましたぁっっ!!アハッハッハ!!起きろ村長!!早く受取証明書にサインしろオラァッ!!」ガンガンガンガン!!

 空中庭園に引っ越した村長一家は広い屋敷に住んでいた。そこに届けられるのは熊ん蜂マークの宅急便(達くん経営)か、内田の所の翅妖精組合のポスティング商会だけだった。
 どちらかと言うと大量の商品や重いものなどは熊ん蜂マークの宅急便が主流で、内田のポスティング商会は手紙等の軽いものをメインに運んでいた。
 なので、注文は内田のスパゲティ屋だったが、持ってくるのは熊ん蜂マークかと思っていたのだ。
 熊ん蜂マークは決して客が寝てる時間には来なかった。来てたとしても、湖畔で日が昇るのを待ってから来てくれていた。
 なので安心して寝ていたのだが……
 まさか嫌がらせする為だけに二万食の焼き鳥セットを本人自ら持ってくるとは思って……た。

 起きてくるまで俺の部屋だけに響く様に風魔法を操って防音にしてからフライパンでガンガン叩く程念入りとは想定外だったが。

 まあ、来るのは想定内なので耳栓はしていたがな。
 俺が同じ立場なら、同じ事をするだろうし

 受取用紙だけ置いてったら確実に書類を渡すためだけに内田の安眠をぶち壊す用意もしていた。当然他人も巻き込むから防音はしない。

 そのへんが俺と内田の違いだな。

 印鑑を持って内田の前に現れると書類に判子を押す前に、二万食がちゃんとあるのか確認させた。
 嬉々として数えるかと思ってたが目の下にクマを作ってる事から3徹くらいはしてそうだった。
 なので……1万9千食を数えた辺りで
「あ、ちょっと待ってぇ……あるぇ?数え間違いかなぁ?ちょっとから数えてくれるかなぁ?」って言うのを30回ほど繰り返した。
 ちょっと不穏な空気が漂い始めたが、太陽が昇って子供等が学校に行こうとする迄やり続けた。

 ブツブツ言いながらフラフラ飛んでる内田を見送ってアイテムボックスに高級焼き鳥を全てぶち込み、世界樹の元家を改造して建て増しして新たに作った小学校に子供等を届けてから、冒険者ギルドに五千食渡し、皆さんで食べてねと置いてった。

 そして残りの1万五千食を馬車に乗って隣町まで持っていき、公民館前や現場近くで無料で五千食分を配り、残りの一万を売ろうと考えたのだった。

 ある程度配り終えたら馬車に乗り込み夕方の駅前へと走る、屋台を出して焼き鳥屋を始めると直ぐに匂いを嗅ぎつけた奴等(カラス)と初場代を貰いに来たハイエナと許可を取ってるのか聴きに来たお巡りと3種類の方々に囲まれた。

 (犬とハイエナとカラスに囲まれるとは……幸先悪いなぁ……)

 カラスにはマヨネーズを代わりにあげた
 ハイエナには拳と蹴りを食らわして事務所を聞いた
 犬には許可書を見せて追い払った

 中々客は来なかったが、ビール片手に呑みながら焼いているといつの間にか客が来ていた。

 「……いらっしゃい」㋙
 『気付くの遅くない?』㋒
 「あー……少し酔ったのかもな」㋙
 『コージ僕ボンジリ塩で宜しく』㋨
 「あいよー……ってスラスラは隠せよノーム」㋙
 『スカートと思ってくれるよー』㋨
 「んなわけあるか!あーもう、ノームは中入れ!中の椅子で呑めよ!」㋙
 『しょうが無いなー……』㋨
 「ったく……ちゃんと金払えよ?ディーネ」㋙
 『ツケといて……』㋒
 「あー、現金払いのまともな客来ねーかなぁ……」
 『『コージだもん来るわけ無い㋨』㋒』
 「はぁ……類友かよ㋙」
 『それだと僕達までおかしな人扱いなんだけど?㋛』
 「何だよ、シルフまで来たのかよ暇なのか?㋙」
 『コージがうちの人虐めるから仕返しに来た序に呑みにきた㋛』
 「アーハイハイ出来たオヨメデスネ。日本酒でいーよな?㋙」
 『ういうい、そ~言えばこの四人で呑むのは久し振りね㋛』
 「そうか?そうだな……まぁ、一応俺店主なんだけどな㋙」
 『まぁまぁ良き出会いに!』㋒
 「ハイハイ良き出会いに」㋙
 『『カンパーイ!』』㋨㋛

 こうして隣町でもマイペースに魔王と妖精達は酒を呑み交わすのでした

 ※因みに誰も彼もツケ払いな為にその日の売上はマイナスだった

    
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