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空への旅③

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 橋の袂まで来ると、門兵が立っていた
私達を見るとにっこり笑って近づいてくると


 「王様から聞いていますよ、どうぞお入り下さい」


 そう言って、案内する人まで呼んで来てくれた。
案内人はこの城の宰相だという。宰相って何だろうと二人の男共は話し合っていたが、少女コミックを読んだことのない二人には分からないだろうな……

 この城から周りにいる人達の姿はまるで中世で暮らす人々の様だった。

 私達三人はこの城の王様に謁見する許可が既に出てはいるが、流石にその格好では会わせることは出来ないから着替えるように言われた。二人の兄弟と私では着替える服も準備する物も違うということで、部屋を別けて案内された。

 不安そうにしてる二人をよそに、私は一人浮かれていた。別々の部屋で色んな服を見せられたのだが、どれもこれも素敵なドレスだったから

 どの服から着ようか迷っていると先にお風呂に入る事になったのだが、そこで躰を洗ってもらった。

 これは流石に恥ずかしくなり、自分で洗えるからと断ろうとしたが、やり方が違うからと逆に 断られてしまった。顔を赤くなるのが分かるくらい恥ずかしかったが仕方ないと諦めていると、隣の風呂場から二人の声が聞こえた。叫び声というか……「あああ~~……」という喘ぎ声に近いものだったと思う。(なにやってんの?あの二人は!)とすこし怒りが沸いてきたが、コッチも大変な事になっていたので、突撃は出来なかった。

 躰の隅々まで洗われて、全身マッサージと
躰に香油?を塗られて全身から何かとても良い香りがするまで、塗りこめられた。ホカホカ躰が暖まり、フワフワした感じになっていると、いよいよドレスを選ぶ段階になっていた。

 好きな色や形を聴かれては、色んなドレスを着せ替えられて、侍女さんたちとキャッキャウフフして楽しんだ。小一時間くらい着せ替えして貰い、頃合いになったからと一番気に入ったドレスを着て、髪も可愛く形作られ、とても綺麗なアクセサリーも着けられて広間へと案内された。

 まるで、お姫様みたいに扱われて悪い気はしなかった。

 広間へと着くと、既に男共は椅子に座ってお茶を飲んでいた。随分待たせてしまったと思っていたが、その顔を見ると待たせた罪悪感は無くなった。

 なんというか……顔を赤くしたまま惚けた様な感じで何とも言い難い幸せそうな顔をしていたからだ

 ナニをされたのかひと目でわかりそうな顔つきだった。(あんたら何をしていたの?ナニをされたらそんな顔になるの?)って顔だった。

 「あ!マイか⁉何だその服……か、かわいいな!あははは……」と、カケルが私を始めて居る事に気が付いたみたいに話しかけてきた。

 タケルは……可愛い感じの侍女さんの手を掴んで全く離そうとしていなかった。顔をだるんだるんになっており、鼻の下が伸びに伸び切っていた。そのまま連れて帰りそうな勢いだ、が。

 「俺ここに住むぅ~~」とか言い始めた。
取り敢えず、頭にたんこぶが出来るほど思いっきり殴って意識を戻してやった。

 兄弟喧嘩を止めるでもなく、侍女さん達は微笑ましく私達を眺めながら、お茶の準備をしていた。

 そのうち扉を叩く音がしたかと思うとガチャリと扉が開いて、宰相さんが現れた。

 謁見の準備が整ったので呼びに来てくれた様だ。
ドキドキしながら私達は宰相さんの後ろを付いて行った

 ひときわ大きな扉の前に佇み、その扉の前で物々しい鎧を着ていた人が扉を開けてくれた。
 その扉の先には長い赤い絨毯が続き、その上を歩いて行くと、三段ほどの階段の上に椅子が置いてあった。


 その少し手前で顔を伏せて待つように言われ、暫くするとガチャリと音がして誰かが歩いてくる音がした。

 「面をあげよ」


 優しそうな声が響き、私達は顔をあげた
そこには写真や動画で何度も何度も見続けた顔があった。夢にまで見たその顔は段々歪んで行った

 どうやら私は嬉しすぎて泣いて居たようだ
そのまま駆け出して抱き着いていた、二人の兄弟も駆け出して抱き着いていた。





 「初めまして、だな。元気にしていたか?お前達」
そう言いながら三人を抱き締めるコージだった

 

 
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