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妖槍の小太郎異世界道中記③

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 その日は朝から陽当りがよく、小屋の屋根に兎三点セットを∞水袋の水を使って洗い流した(普通の水で洗うより奇麗になる為)あと干した。サンサンと照り付ける太陽が暖かく、小太郎もまた木の上で丸くなった。

 昨日冒険者登録をしたからと言って、次の日から仕事などする程困っていなかった小太郎は、住処の周りの散策等をする予定ではいたのだが、余りにも気持ち良かった為抗うのを止めて、本能に従う事にしたのだ。

 お昼を過ぎた頃、腹の虫が騒ぎ出した為に起こされた小太郎は、3点セットを確認して重りを載せ替えた後、木から降りて露店を見て廻りながら昼飯にしようと歩いて行った。当然だが脇差しはしている。武装は基本だからね。

 中央広場に着くと端から順に見て廻った。
兔肉の串焼きを1本買って食べながら露店を冷やかした。布屋の前で少し止まり、笠用の紐を少し買いたして、下着を数枚購入した。良さ気な布もあったので着物を作るのに少し買った。糸もついでに買って、針は何処で売っているのか聴いた。チップを払ってその場を跡にして、次の店で肉野菜サンドを買った、甘辛いソースが美味しかったので、また買おうと場所と店主の顔を憶えてから立ち去った。

 腹は膨れたが、明日も来る事になりそうなので他の店のチェックも怠らない。兔肉以外の肉もあったので、明日買おうとチェックして色々回ったが他には人間用の物が多かった為見るだけにして、針を売ってる店へと向かった。

 中央広場を抜けると、鍛冶屋通りがありそこを入った先の真ん中らへんに目指す店があると言うので探したが、何処も入り口が似たような物だったので迷う事になった。

 1つ適当な店に入って聞いてみようと、目の前の店に入っていくと、この世界では珍しく片刃の剣(刀)が、置いてあったので暫く見て回っていると中から店主だろうか?

 一人の男がコチラをチラリと見てから手招きするのでなんだろう?と、思いながら近付くと、俺が持ってる脇差しが気になったらしく、見せて欲しいと頼んできたので、渡してやった。

 鞘に入ったままの状態を確認してからスラリと抜いて刃を確認してると目を見開いて魅入っていた。一通り見てから溜息を吐きチャリと鞘に納めて返してくれた。

 「誰が打ったか知らねーが見事なもんだった。とても良い刀だったありがとう」と、御礼を言われた。少し照れながら、「貰い物の一応家宝だ」そう言うと頷いて業物だなぁと呟いていた。

 その男に針の売ってる店を聞いたら、良い刀を見せて貰えた礼だと言って、二本ばかり拵えてやると言ってきた、いやいやそこまではと断ろうとしたが、気にするなと笑顔で言われちゃ断るのも失礼かと思い、よろしく頼むと頭を下げた。

 少し待っていてくれと言うので店内を見て廻った。暫くすると、ホイと渡された出来たてほやほやの針を見て、中々良い出来だったので、金を払おうとしたら断られた。なので、このままじゃ、貰い過ぎだからと、メイン武器の槍を見せてやった。

 持った瞬間分かるのか「妖槍か……うん。持ち主に完全に支配されとるな、これまた業物じゃわい」と、満足そうに頷くと少し手入れをして貰い返してくれた。やっぱり貰い過ぎなので、クナイみたいな投げナイフを数本買って店主に礼を言ってから店を跡にした。

 なかなかどうして、良い店もある物だと感心して今日は満足して帰った。

 帰る道すがら、路上で良さ気な川魚を童子が売っていたので幾らか聴いたら「銅貨5枚で3匹だよ」
と言うので20匹全部買うと大銀貨一枚を渡した。

 「猫ちゃんこれじゃ多いしお釣りないよ?」と、困っていたので、残りはチップだから気にすんな!と頭を撫でてやった(ジャンプして)
したら満面の笑みで「ありがとう!猫ちゃん」と頭を撫でられてスキップしながら帰っていった。

 童子と言うものは可愛いもんじゃなぁと、こちらの口角まで上がってしまった。

 木に登ると布団も良い感じに乾いており、今日はフカフカで気持ちよく眠れそうだった。鼻歌混じりに布団を小屋に仕舞い、寝床を整えてから扉を閉めて、まだ夕刻だったので、ギルドへ向かった。

 ギルドへ着くと適当に掲示板を覗き明日やるクエストやらを確認しといた、俺はまだGランクなので何ができるか見ると

ゴブリン討伐(必要部位両耳)
薬草採取(各種)
角兎狩り(必要部位角)
街中雑用

 と、あった。雑用以外は物を持ってくれば良いみたいだな……。兔肉は必要だから適当に狩り取るか。
あとは適当に流す事にしようと決めて、バーへと向かう。

 エールと何か、焼いてくれと頼み椅子に座る(乗る)すると、バーの親父がエール片手に
「其処に座ると見えねーからカウンターに座っとけ」というので、それもそうだな、と納得し端っこに陣取った。

 暫くエールをチビチビ呑んでると、冒険者達がチラホラと戻ってきた、数組が受付へと並びその仲間なのか数人がこちらへ流れて座りエールを注文していた。俺に気が着くと何故かツマミを奢ってくれたり、エールのオカワリをくれたりと、何か色々貰えてしまった。
 店主もなにやらしてやったり顔だな。(こりゃ客寄せにされたな)まぁいっかと流し。
奢って貰った礼にと余興をやる事にした。

 真ん中のテーブルへと乗ると何だ何だと人が集まってきた。そこで、銅貨を一枚取り出して周りに見せて触って本物かどうか確認して貰い、それを最後に確認した奴に俺に向かって投げろとお願いした。

 その男は頭に?を浮かべながら放ったので、脇差しで居合抜きしてやった。

 キキィンッと鳴った銅貨が床に落ちて散らばり拾った奴が4つに切れてる銅貨を廻しながら見ては驚いていた。

 ヤンヤヤンヤと拍手喝采、歓声が上がり一つ頭を下げて礼をしたあと、手を上げて「またなー」と言って店を出た。

 流石に夜は少し冷えるようで、エールじゃそこまでポカポカにもならず、足早に木へと登り帰って、買っておいた魚を肴にそのまま網で焼いていき、日本酒をチビリやりながら晩酌した。

 程よく温まったので、今日も楽しかったとお月さんに手を合わせ、寝る事にした。
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