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35話

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部屋の掃除をしていたら、昔書いた設計図が出て来た。
その設計図は俺がこの村へ越してきた日に書いたらしい、今は集会場になってるあの家にロフトを何時か作ろうと描いたものだった。

俺は懐かしくなって、改めてこの設計図を書き直した。

今の俺の技術なら午前中には終わるだろうし
集大成的に作ろう!そう思った

田辺家伝統の思い立ったら吉日って事で、すぐに取り掛かろう!

後悔とはやってからするものだ!
これは家訓だ!って事で……
朝になったら材木集めを始めた、ドライアドに厚さ2cmと3cmの平板を量産して貰い、柱として使う10cmの角材と、手摺に使う角材も一緒に頼み、午前中は集会場の出入りを禁止した。

先ずは部屋から入った右側に階段を作る

壁に沿って作っていき角には丸みを作って左斜め上へと伸ばす。

取り敢えず階段は完成した、階段の下には棚を作って、1番上の踊り場の真下に倉庫を作った。

高い場所に窓があるこの家は、翅妖精に頼らないと窓の開け閉めが出来なかった、それを出来るようにした。

2階から足を出して座れる感じだ、此れから増える子供達が歩いても落ちない様に手摺を付けて柵にした。

崩れ落ちて来ない様に、柱も適度に付けて支える様に作った。

ぱっと見小さな体育館みたいだった

階段の先にロフトを作った

この家の四分の一くらいの広さだ、まぁ六畳くらいかな?

ベッドとか置けば住める程度にして置く。

我ながら良く出来たと思う!此れなら文句も言われまい。

階段下の倉庫には酒や乾き物を入れていった

台所も置き場が無い事もないが、多少手狭で窮屈そうにしていたからな

ロフトの下にはソファーとローテーブルを並べる

壁に沿って椅子を並べてどこにでも座れるようにしていった

真ん中には囲炉裏があるが、そこはいじらない

天井に隙間があって、雨露は入らないが煙はそこを通って外に出るので2階も快適だ

2階と言っても廊下みたいなもんだか……

煙かったら窓を開ければ良いし…あ。

窓を開けた先にも落ちない様に柵かベランダ的な物でも付けとこう!

そうだ!ベランダならバーベキュー出来る様にしよう!

ははは!楽しくなってきた!!!



『…で?』と腕を組んで仁王立ちのウンディーネさんに見下されながら、正座してる俺がいます…。

集会場は酒飲んで寝落ちしても良いように2階(実質3階)に雑魚寝が出来る様に部屋を作った

広さはそのまま真っ直ぐ建ててあるので30畳くらいある。

その上に屋上で月見酒出来る様に屋上を作り、露天風呂も作った。
露天風呂の下は土妖精に頼んでダイヤモンドくらいの硬さにしたったので、温泉くらい余裕で耐える

お湯はサラマン冷やし場から直接持ってくるが、呑み友の氷妖精に頼んで適温まで冷やして貰う事になった。

排水は屋上からそのままパイプを繋ぎ、近くの用水路へ流し込める様に改造した。

耐震的にあやふやだったので地下に耐震設計を施し、震度8くらいなら平気な様に作った

ついでに地下倉庫にワインセラーと日本酒置き場を作った。

2階のロフトからベランダへ出るとウッドデッキになってて、100人くらい乗っても大丈夫な様に設計

そっからも月が見える…てか、下層の田んぼとか観えるので夜になれば美しい妖精の星が見えるだろう
母さんが喜びそうだったので屋根も作った

「……って、改造をしました。後悔はしてません」

『開き直ってるし…そもそも何で氷妖精と意思疎通出来てんのよ⁉あの子らは特殊で我関せずっていう妖精なのよ!?私でも言う事聞かせられないのに!!!』
と、悔しそうに言う

「え、そうなの?俺よく家で呑むとき酒を冷やして貰ったり一緒に呑んでたりするよ?
ある意味呑み友達的な位置だよ?」な?というと肩に止まってた氷妖精が頷いた

『…あなたもう屋良樫《やらかし》って名前にしたらどーかしら?』頭抱えて溜息しか出なくなったウンディーネを田島に渡し

「まぁ、いーじゃん?楽しめるでしょ?人増えてもさ?」と言っといた

「あ!因みに温泉は水着着用でね?混浴だから」
そう言ったが聞いてるのか聞いてないのか分からんくらい、皆様楽しそうに部屋を物色してる

「うえーい」と誰かが返事したから、聴いてるのか?

各自ワイワイと部屋を探索したり酒を持って温泉に浸かったりし始めた

怒っては居たがウンディーネも楽しそうだし

作って良かったなぁ。ウンウン
「ほら!コージもいこ!」とシノに誘われ屋上へ向かって歩き出した



何かとても良い夢を見てた気がする…

ワイワイ騒ぐ声に意識が戻ってくる

此処は何処だろう…星が見えるので野原かな

野原……何俺外に放り出されたの?

ガバッと起き上がると…見たことの無い場所に居た

5m程離れた場所に湯に浸かる方々がみえる

岩風呂に入ってる様で盆に徳利乗せて呑んでる様だ

って、ウンディーネさんも、いる!まさか裸か!!?

と、思いジーーっと見るが、湯着なのか薄桃色の着物みたいのを着ていた…なんだ…

他の人は水着のようだ

っていうか、ここ何処?本当に…
「ん?おう、気付いたか?」
とハルトさんが声をかけてくれた

すると、みなさんが一斉に見てくるのが分かる
『さっき起きたよね?私の事ジーッと見てたけど……残念だったわね』そう言ってクスリと笑った

…この妖精なんだかんだでエロイよな…
田島さんが怨めしい……羨ましいだった

「あの、ここ何処ですか?」
『集会場の屋上よ』と、ウンディーネ
『屋良樫《やらかし》・コージ・ロリコン村長が今日の午前中に作ったのよ』まったく非常識なんだからと、ブツブツ呟いてる

村長か…屋良樫って名前なんだな初めて知った

っていうか、集会場にありませんてしたよね?何にも…昨晩は…
「屋良樫村長は異世界人なんですか?」

「だあぁぁれが屋良樫だ!!!!俺の名前は田辺だ田辺!!!」(最近ずっと叫んでる気がする)

「え?そうなんですか⁉さっきウンディーネさんが屋良樫コージロリコンだと言っていたので…」
スイマセンっと謝罪する

「まぁいーよ。ところで御神酒呑んだって?」
ウンディーネさんの頭をグリグリしながら聴かれた
「あ、はい。味わう前に気を失いましたけど…」
その人…妖精王ですよね?大丈夫なんですか?

「…ふーん。何も聞かずに飲んだのか?説明受けた?」ウンディーネの水でゴロゴロされながら聴かれた

「一杯以上呑むと存在消えるとは伺いました」

「一気に呑むと気を失うとかは?」
田島さんの仲裁で仲直りしてる村長とウンディーネ
が更に聴いてくるので

「いえ他には何も聞いてません」

『あの子ったらよっぽど嫌だったのかしらね?』
フフフッと笑うウンディーネさんと
対象的な村長さん。
少し怒ってる気がする
『ちょっとぉ怒気抑えなさいよ…翅妖精が怯えるでしょ?』とウンディーネさん

「んー…無理そう…」と月島さん

「おい!コージ…」とハルトさんも何か少し気圧されてる感じがする

(なんか…凄く怖いんですけど?)

「コージ?なしたの?んー?こーじ?」とシノちゃんが寄ってった。あの状態の村長の頭撫でられるのこの人だけだな…

暫く撫でられてたら治まった怒気に一同溜息を吐いて胸を撫でおらした

この人は怒らせちゃ駄目な人だね…寿命少し縮んだかも(伸びたんだけどね)

「俺帰るから、ウンディーネ頼むな…」
まだ少し怒っているようでシノちゃん連れて3階から飛び降りて家に帰った村長
俺は思わず屋上から身を乗り出して見に行っちゃった

着地はシノちゃんが担ってた
びっくりしたなぁ…

と、皆さんの近くへ歩いて行ったら
何か深刻そうに話してた

「はは、村長こえー初めて見たかも怒ったの…」と新島さん
「いや、怒ることあるだねぇ…」と田島さん

「寿命縮んだよ…」と月島さん
『雫《いのちのしずく》呑んどく?』とウンディーネさん
いやまだいーやと断る月島さん

「任されたが‥ウンディーネよ、どーすんだ?」

『どうするも何も叱るわよ?』肩を竦めていう
流石に何もしないと次会った時にヤバイでしょ?
『ハルトが止められるなら何もしないけど?』
「老人は労るものだろ?」とハルトさん

いや、ハルトさん老人じゃなくてオジさんでしょ
見るからに…違うならちょっと理由知りたいが……
多分…チラッとウンディーネさんを見ると
ニヤってされた

はは、当たりかよ……何でもありか…
おやっさんに手紙書かなきゃな…

「ふんふんふーん♪」と鼻歌交じりにりょうちゃんが来たらしい

フワッと浮いたと思ったらりょうちゃんの側へ飛んでったウンディーネさん

(あ、隠すのやめたんすね…契約したしね)

っと見ていると…ガシッとりょうちゃん掴んでどっか消えた……

「ありゃ流石に、ここでは怒らないか…」
酷かったら止めようとしてたのにっと田島さんがいう

「未だに分からないんすケド…村長は何であんなに怒ったんですか?」
そう聞いてみた

「あー…。理由知らんかったな、そーいや…」
と月島さんが説明してくれた

「妖精王の御神酒は、名前の通り神の酒に成るんだよ。だから、不敬にならない様一気に呑ま無いようにしなきゃ駄目なんだ。それに、一気に呑むと死ぬ可能性があるんだよ。だから知らずに呑ませるのは殺人未遂と同じ意味を持つ。呑むならすべてを理解させた上で舐めるように飲まないと駄目なんだ」

「え。じゃあ俺やばかったんすか?」
(((うんうん)))

…男の娘こえー…

「まぁ本人はちょっとした悪戯だったんだろーけど…」
「コージはそーいう事昔から嫌いだったなぁそーいやぁ…」と、ハルトさんが呟いた時に

ウンディーネさんとボロボロのりょうちゃんが登場
…あ、鉄拳制裁なんすか…

『りょうちゃん?する事あるでしょ?』
うわーこえーやべー…スッゲ冷たい声が…

そんなこと考えてるとボロボロなりょうちゃんが這いずってきて
「ご、ごめんな…さい」と言ったあと気を失った

それ見た皆さん生唾飲んで絶句し

「……ディーネ……やり過ぎ…」と田島さんが
突っ込んだ


さすが彼氏…





おやっさん!見つけましたよ!例のもの
直ぐに来れたら来てください!
村までの道は電車もバスもありませんので、自力で走れる物に乗って来てください。軽トラが一番効率良いです

○○県○○市□△町麹村です!!
僕の携帯番号は080-○○○○-○○○○です
迷ったら掛けてきてください

鈴木守武

ーーーーーーーーーーーー

はははっマジか!!!!
行こう!せっかく友人が探してくれたんだからそれがもし違っても構わない!お礼を言って二人で笑おう!

そう決心して店舗を売り払い軽バンは待ってたのでそれに少ない衣服など持ち込んで転移届を持って出ていった!

高速を走り(常に左側)目的の場所で降りて山道を走る、途中の登板車線が終わる部分に車を停めて
夜を明かし、作ってきた弁当を食べて寝た。翌朝日の出と共に山道を登り山道を抜けると
眼下に田園が広がる村に出た
朝焼けでキラキラと光りまるで桃源郷はここだ!と言ってる気がした

そのまま走ると右側の少し高台に…3階…いや?4階…いや、4階は屋上か?みたいな家…寮?よく分からないが大きな建物が左端にあり、その裏に山があった左側は畑の入り口や下の田園へと続く道があり
村の出入り口から少し下がった場所にキャンプ場なのか開けた場所があった
そのもっと手前側に温泉施設のような建物があり

その道路挟んで対面に宿屋があった

取り敢えず旅館へと向かい
駐車場は無かったが空き地があり、そこに車を停めて旅館の中へと入っていった
「ごめんください」
「はぁーい」と返事をしながらパタパタとスリッパの音を鳴らして小走りで来たのは年の頃は40代前半か30代後半くらいの若い女将さんだった
「おや、いらっしゃい。旅行者かい?」朗らかに微笑みながら言う
少し見惚れながら
「…あっ!いえ移住目的で来ました。此方に鈴木守武という若者が居たと思いますが…今はどちらに行かれたかご存知有りませんか?」と訪ねてみた

「ああ、守武君なら仕事に行ってるよ。今日は帰らないかも知れないとは言ってたかな?
何なら村長に(妖精が)伝言しようか?転移届もあるんでしょ?」

「おお、ソレは助かる!是非お願いしよう」
女将さんのご好意に甘える事にして、少し早いが昼職にした。序に地酒(妖精王)も一本つけて貰った

村の中でなら幾らでも呑めるからなこの酒は
出て来たオカズを肴にして昼間から呑んでると
ここの客だろうか年の頃から俺と同じか少し上くらいのおじさんが降りてきた
(筋肉エグいな…ジャッ○ーか?)ってくらいの筋肉だった
ご飯を待ってくる女将の頬も心なしか紅い気がする
ラブロマンスが始まりそうだった
ニマニマして見てたのに気が付いた御仁がこちらに気が付き「やぁ、旅人かい?移住かい?」と聴いてきたので「移住ですよ」っと笑顔で答える
「ほう、さっき見てたのはなぜだい?」(女将に気でもあるのか?)少し威圧を込めてるのか少し怖い

「いやいや、貴方とお似合いだなぁと微笑ましく見ておっただけですよ」昼間の情事みたいだなぁって
「なんじゃそうか!」わしゃてっきり!っと急に明るくなったおじさんに驚きながら

「ここの方ですか?」と聴いてみると
「ああ!こっちの女将はワシの嫁でな?どうせだからと一室借りて住んどるよ」

え。嫁?こんな若いのを?「はは、やりますな」
「いやーはっはっは」それ程でもーと何か打ち解け合い、そのまま呑み会に発展
昼も過ぎた辺りで呑み会に美女とその彼氏も加わり
いつの間にか田辺と言う若者も混じって呑み会は進み、女将も混じって楽しい時間が過ぎていった

「いや!呑んだ呑んだ、楽しかったお礼に今日はワシが奢るよ!幾らだい?」
っと、言うと
「いやそれは悪いですよ!」
と、立ち上がると田辺君がいう

「なに、若い子は奢られていればいーんだよ」
と言って椅子に座らせ

女将に値段を聴くと「金貨1枚だねっ」と言う…

「あぁ、すまないが金貨は持ってないんだ、日本円でいいかな?」と断ると笑いだし

「20000でいいよ」と言ってくれた
随分安いなと思って礼を言って席を立とうとしたら

田辺くんがお泊りはこちらですか?と聞くので

「なに、車もあるしな、そこで寝て朝イチで役場にでも行こうかなってな?ははは」
と、言うと。
今夜は寒くなるので宿で寝たらどうかと勧めてくれた
「おお、部屋が余ってるなら…」と言って女将さんをチラリとみると
朗らかに微笑んで「大丈夫だよ」と笑った

本当に綺麗だなぁこの人は
「それではお願いします」と言って部屋へと案内してもらった

次の日の朝には酒も残ることなくサッパリとした寝起きだった

うん!いい感じだ。久し振りにたっぷり寝た気もする
顔を洗いに洗面所へあるく
タンタンと階段を降りていくと洗面所から昨晩共に飲んだウンディーネさんに出会う
「やぁ、おはよう貴女もここで寝泊まりを?」
『おはよう御座います。そうですね彼氏と共に住んでますわ』とニコリと微笑む

「この村は水が良いのか皆さん美しいですね」
『あら、お上手ね、そーいえば数年前も此処に来ませんでしたか?お酒が買いたいと言ってたような気がしますが』

「おお、憶えていていた人が居ましたか…いや、お恥ずかしい…」

「あのお酒は特別な日に呑みました
人生を掛けて作った店が終わる日にね…」
椅子に腰掛けながらいう

『そう…ですか』

「その時共に呑んでくれた若者と約束しまして」
「私が冒険するには年を取り過ぎたと言うと、彼は若返る水を探してくると、見つけて来ると言ってくれましてね?そして、今回手紙を貰ったので来た次第です」
『その話が嘘だとしてもですか?』
「はい、嘘でも私の為に探してくれて、こうして手紙まで書いて送ってくれた…それだけでも行く価値はあるでしょう?」そういって笑った

その女性は楽しい話と美味しい肴のお礼だと言って
私の前にワンカップくらいの瓶に入った液体を渡してこう言った

『ゆっくり舐める様に味わって最後まで飲みなさいね』と、笑った。その笑顔は女神の様だった

俺は不思議な女性の言う様に舐める様に味わった
何と言う味わいだ
これが日本酒とは思えない
だが、なんの酒かも分からなかった
深く濃く滑らかで時に荒々しく爽やかで何処までも清らかだった……
私はゆっくり味わい、舐める様に呑んだ
一気に呑んだら失礼かと思えたから

ゆっくりと身体に染みていくような…
とても不思議でとても美味しいお酒だった
私はこれが神の酒と言われても信じるだろう
そんなお酒に出会えた
それだけでもこの村に来てよかったと思う
すべて飲み干した私はゆっくりと倒れると意識を手放した

フワフワとまるで雲の上にいる様な感覚になりながら
ゆっくりと、地面に降り立つと段々意識も戻り始め

目覚めました

目覚めると体軽い…まるで羽でも生えたかのようでした

そのまま、外に出ようと駆け出したら…服に足が絡まり転けました

いたたっと立ち上がってビックリです
身長が縮んでいました
手の皺がありませんでした
窓に映る自分を見ると小学生…いや、中学生くらいにまで戻っていました

驚愕です。私は暫くボー然と立ち竦み…ませんでした。
服を撒いて外に出ると走りました
もうダッシュしました
笑いながら「はははははははっ」と笑いながら

すれ違った誰かがギョッとして立ち止まるくらい笑って走り廻りました


『飲ませる量、多すぎたかしら…』





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