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33話

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俺の名前は鈴木守武すずきもりたけ(21)
フリーターだ。
大学は家の資金難で辞めた
バイトで苦学生も考えたが、そのバイトも無くなった

今は伝を頼って居酒屋でバイトをしている

その居酒屋も今月で一度閉めるという

店主の相沢さんは今年58になるそうで再就職もままならないが、このままやって行くには辛すぎるという。
なので、今月で閉めるそうだ。

最後の日には店の暖簾を仕舞って二人で呑もうよって事になった。

仕入れをしなかったので其処まで肴は無いが
何時か飲む日が来るかもと取っておいた秘蔵の酒があるという

その酒が此れっと出してきたのが

【妖精王】

とある村で手に入れた720mlの小瓶だが売って貰えた唯一の酒だそうだ

その場で飲むなら幾らでも呑めるが持ち帰るとなると渋りだしたんだって
で、それでもどうかお願いしますと頼み込んで
これ一本だけって事で買えたらしい

中々手に入らない酒で多分これしか出回ってないんじゃないかなってくらいの酒らしい

こんなの呑んじゃっていんですか⁉とびびったが

最後になるかも知れないからって事で
ぐい呑に淹れてコンっと打ち鳴らして呑んだ

これが日本酒?
嘘だろ
此れが米だけで作った酒だと?
信じられん
鼻をくすぐる香りはフルーツの様で
呑めばピリッと筋が入ったようなキレ
喉を通る前に消えたと錯覚するくらいの美味さ

感動した
ただただ美味かった
それしか言葉にできない程美味かった

一口目で固まり
二口目で涙が溢れた
三口目で放心し
四口目で無くなった

暫し呆然とぐい呑を見続けた
「なんすかコレ…」
やっと出た言葉がこれだ

「美味いよなぁ…」と涙ながらに語るおやっさん

「なんて場所で買えたんですか?」
そう聴くと
「麹村だよ」という

何処かで聞いた事がある名前だ…そう思ってたら

「異世界に行けるって噂の村さ」そういった

「美味い酒も真実だった、だから俺は信じてる」だが、異世界に行くには歳を取り過ぎた。少しがっかりしながら寂しそうに言った

「じゃあ俺が行って若返りの水でも探して戻ってきますよ!」と力強く言い放った

「はははは!期待して待ってるよ。この店は畳むけど、住んでる家も此処だから…生きてりゃまた会えるさ」そう言って笑ってくれた

その次の日俺は旅立った
転移届を持って!
ただ其処の村に行くすべが限られていた
なので原チャリを買った(中古で2万乗り出しで7万だった)うう、7万地味に痛いようと半泣きで一般道を走った

旅館に泊まる金なんて無かったから
公園で夜を明かした
少し肌寒い程度だったので我慢出来た

おやっさんのためにも頑張らねば!
そう思い混んでたが
実は違う。いや、それもあるが

あの酒を呑みたい。から
あの酒を作りたいに変わっていた
作れないまでも、関わって生きていたい

そう思った

そうして延々と下道を原チャリで走り
ようやく辿り着いたその場所は丁度稲刈りが終わり、閑散期になったばかりの様だった

周りを見渡し人を探すが見当たらず
どーしようかと佇んでいると
1人の女の子が遠くを歩いてた、その娘は酒瓶を大事そうに抱えてた

なので「すいませーん」と声かけながら原チャリで移動して呼び止めた
その人は背は高かったがとても可愛い顔をしていた
「はい?」と微笑むその口に目が行き
「…あの?」て声に心が踊った
どうやら此れが一目惚れと言うやつだろう

一向に何も言わなくなった原チャリくんに戸惑いながら次の言葉を待つ亮介だった




「付き合って下さい!!!」
鈴木守武は頭を下げる


何度もお断りしてるのだが一向に変わらず同じ言葉を繰り返す

こまったなぁ……

亮介は眉尻を下げて繰り返す

「ですから何度も言う様に僕は男の娘何ですって…」

「そんな嘘付いても駄目です‼信じられません!!!」

「イヤイヤ…困ったなぁ…だいたい貴方は誰ですか?」初対面ですよね?と言うが

「鈴木守武って言います!!!宜しくお願いします!!!」


「イヤ、だからね?男なんですよ!!?ぼ・く・はっ」
誰かタスケテー

『りょうちゃんどうしたの?』とウンディーネ

「あ!タスケテ下さい‼この人が…」
と、ウンディーネの後ろに隠れる亮介

「あ!お姉さんですか!?僕は鈴木守武って言います‼引っ越してきました‼宜しくお願いします」
まだ転移届だしてないけど!

『んー…聴いてないけど…りょうちゃんの知り合い?』と後ろに隠れる亮介に聴く

「違いますよ!!?僕だってさっき知り合ったんですから!!!」首をブンブンと横に振る

『取り敢えずさぁ?守武くん』
向き直り首を傾げて

「はい!お姉様!!!」
一歩前に出ながらにじり寄る

『おね…まぁいいわ…村長のところ行こっか』
話はそれからね?と言いながら2歩下がる

「はい!よろしくお願いしまっす!りょうちゃんもお願いしまっす!!!」ペコペコ頭を下げる

「りょうちゃん言うなっ!!!初対面だろうが!!!」
ウンディーネの後ろから叫ぶ亮介

そこへ田島くん登場
「お?りょうちゃん遂に彼氏できたの?」と揶揄うと

「おお!ありが「違いますからね!!?」そんな食ってかかって言わなくても…」がっかりしながら肩を落とす変態

『まぁ話は村長の処でゆっくりと』とウンディーネ
コッチだよーと促しながら歩く

奇妙な男とウンディーネと田島と亮介の4人は共だって歩き村長宅へと向かった

「鈴木さん原チャリは?」と亮介は冷たく言うと

「あ!乗りますか!?」にこにこしながら乗るなら持ってきます!という

「乗らねーよ!持っていけよ!帰れなくなるだろ?」ウゼーな寄るなよ!とウンディーネの腕にしがみつく亮介

「いや、僕はここでりょうちゃんと住みますから」
ルンルン気分みたいな顔で言う

「住まねーってんだろ!!!僕はホモじゃねーんだよ!!!!」鳥肌が出たのか腕を擦る

「女の子がそんな汚い言葉使ったら駄目ですよー?」子供に言い聞かせるように言うとキモさ倍増だな…

「男だってんだろーが!!!話聞けよおい!!!」
怒鳴り気味になりながら応える

「そんな可愛い男の子なんて居ませんよー?」
まったくりょうちゃんはーメッ!

心底ウザイ奴だった鈴木守武

「ロリコン村長ぉー客だよー」と田島
と、引き戸を開けながら呼ぶと

「だぁぁれがロリコンだ!!!もういい加減名前で呼んで!!!」と半泣きな村長登場

『呼んでるだろ?コージ・ロリコン・村長って?』
クスクス笑いながら応えるウンディーネ

「人の名前にミドルネームみたいにロリコンって入れないでくれる!?」もう本当にやめて!!!?

「ん?りょうちゃん誰その人、彼氏?」
ウンディーネの腕を取って戯れてたら後ろに見かけない人が居るのを見付けた村長

「止めてくださいよ!叔父さんまで!初対面です!!!」

「申し遅れました鈴木守武と申します!おじ様ですか?この度ここに引っ越して来ました!これ転移届けです!!!りょうちゃんとどうかお付き合いさせて下さい!!!」食い気味に身を乗り出して村長に願い出る


「え。ああ、もしかしてガチ(ゲイ)な人?」
少し引きながらも聞いて見る

「俺にお願いされてもなぁ…りょうちゃん次第だろ?」と、頭をかいて困り顔になりながら亮介を見る

「そこは断って下さいよ!!!」と村長の後ろに行きながら訴える

『じゃ、あとは丸投げするから宜しくー』
段々面倒くさくなったので帰ることにしたウンディーネ

「後でねー村長」ウンディーネと一緒に手を振って家を出る田島
「あ!お前らっ面倒くさいの置いていくなよ!!おいって!!!」玄関から顔出して捕まえようと身を乗り出すがすでに居らず
玄関閉めながら
「あー!ったく。で、なんの話なの?コレ」
ノリで話していた為まったく理解はしていなかった村長が亮介に聴くと、部屋の奥に逃げながら
「叔父さん!ノリで話すのマジやめて!」
首だけ振り返って怒る

「僕この村で日本酒作りたいんです!りょうちゃんは嫁で!!!」玄関から奥の部屋へ向かいながら言われる村長
即座に反応したのは亮介で
「却下認めない帰れ!!!変態!!!」といって断った

「ちょ!酷いなぁ…りょうちゃん酒造は君が決める事じゃないだろ?」余りにも酷いので窘める

「いや、酒造主は亮介だから間違ってねーよ」
腕組みしながら奥の座敷へ入って座りながら応える村長

「え。」呆けた顔になりながら
「亮介って人が酒造主さんですか?」
なら、今から会いに…
「どちらに居ます?挨拶しに行きたいので」
と、席を立つ鈴木くん

何言ってんの?顎で指し
「目の前に居るだろ?」と苦笑い

「この人はりょうちゃんですよ?」
なにいってんですか?と不思議顔をしてみる

「だから、ソイツが亮介だよ。そんな成りしてるが男だぞ?」男の娘ではあるが。
と、教えてやる

「え!?嘘ですよね⁉」
信じられませんよ!?と動揺すると

スッと立ち上がりながらスカートに手を掛けて
「本当に男です!!!なんなら触ってみますか!?」
少し捲るとそう言った

(これはこれでエロいなぁっと村長は思ったが我慢して言わなかった)
「触っていいの⁉え。エッチなの?りょうちゃんは」ちょっと嬉しそうに頬が赤くなる

『あ、お茶です旦那様』ん、ありがとー
「話進まねー…」とお茶を飲み出した村長
(お茶は屋敷妖精が持ってきた)

「不本意だけど仕方ないでしょ?」少し恥ずかしいが…スカートを更にまくる

ハーフパンツを履いてた亮介
「服の上からにしてよね!」
頬が紅くなり横を見ながら言う

「ハァハァ…い、いきます!!!ハァハァ」
物凄く鼻息荒い…童貞か…ゲイで童貞は何ていうの?とか考えてた村長緊張感は無い

「え。、待って怖っ!!!待ってって鼻息抑えろ!!変態め!!!」太腿握られながら顔まで股間に近づいて来て青褪める

「無茶言っちゃハァハァだめだよー…」
スカートの中に顔を突っ込みながら呟く様に言う

徐に股間を優しく…
ぷにっ…?…ぷにぷに…??…あっれー…?
何か触った感じが自分と似てる

え。ガチで男の娘?エーまじでー…
少し興奮が治まってきて青くなる鈴木くん

もういいだろ?っと顔を押しながらスカートを下ろし突き放し気味に
「だからもう帰れよ?」
マジでガチで帰れ!という亮介

「ここで日本酒作らせてください!」と
本気で土下座を始める鈴木

「だからきゃっ「お願いします!!!関わって生きて行きたいんです!!!」他に行ってください!」と断るがしつこさは先程から分かっているので、どーしたら良いか分からない

お願いします!お願いします!とずーっと頭下げる鈴木くんに根負けした亮介は…
「村長~…」と泣きを入れた

「んー…困ったねぇ」といつから其処に居たのか分からないがシノとイチャコラしていてまったく力になってなかった

「ロリコンこの野郎!!!」と怒鳴っても仕方ない事だった


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