Shine Apple

あるちゃいる

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七十三話

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 公爵家の邸宅では王族家を招いてパーティをしていた。
 ソフィーを精霊達と共に教会でお祈りに精を出す様に命じたガンダルフは邸宅で働く者たちにそれを教えた、それを知った従業員達が一同に踊り狂っている。
 人が精霊を使役したと勘違いして、大喜びだった。
 精霊を使役するという事は、豊作もするし、国は潤うし、これからの未来は明るいと約束した様なものなのだそうな。

 そんな中、王と王弟は
 「おい弟よ」
 「何だい兄者」
 「ソフィーとうちの王子の誰かと婚姻させろ」
 「馬鹿か、血が濃すぎるだろうが」
 「何とかなる」
 「ならんわボケナス」
 「俺は帝国の王子と結ばせようと考えているんだから、兄者は口を挟むなよ!」
 「馬鹿か巫山戯んな! 聖女で魔導師なのだぞ? 婿をとれ!婿を!」
 等と作り笑顔をしながら口喧嘩をしている。

 その横では大司祭と王妃がワインを飲みながら凱旋パレードを何時やるか等と会議している。

 それを柱の影から青褪めた顔で見守る侍女長のナトリ。

 「どうしましょう……ソフィー様が魔導師と間違えられてるし……精霊様たちはお怒りになられてるし……何度言ってもこちらの話は聞こえないみたいだし……」

 教会で祈りを命ぜられた精霊達は公爵が自分達を下に見ている事が分かった後、ナトリやソフィーに何故かと尋ね、焦る二人の話を理解したあとブチ切れていた。

 今にも暴れだしそうな所を何とかソフィーが教会の祈りの場へ連れていき説得してる所だった。

 その現場をたまたま見てしまい、精霊達を叱っていると勘違いした執事が気を利かせたつもりで行ったのが、神獣アシュに対する言動だった。

 執事が勘違いしてアシュに失礼な態度を取った事を後から知ったナトリが、怒りのままに殴ってしまい、執事は自室で気絶している。

 困った困ったと柱の裏でクルクル回っては、どうガンダルフに進言したら良いか迷っていた。

 その頃タクミ達は超高速で飛んだ事で魔森の草原へと舞い降りて、アシュの聖なる祈りによって邪神の呪いで縛られる地面を剝がしていた。

 主にマロンの力で剝して居るのだが、地下数mにも及ぶ呪縛だったので中々剥がれず困ったタクミ達は作戦を変えるべく、話し合いを行っていた。

 『タクミ様、どうやらこの水晶の塊は五m程地下にある様です』
 「そんなにあるの⁉ 俺のアイテムバッグだけじゃ足りないな」

 『それならワシのバッグに入れますよ? 序に浄化もするので体積的には3分の1は縮みますし』
 「そーなの? じゃあ何とかなるか……」
 『タクミ?それだけじゃないのよ? 五mも草原削ったら川が草原にまで広がるわよ?』

 「あー!そうか……忘れてたなぁ」
 『それなら川の底も削れば良いのではないですか?』
 「それだと水がなー」

 中々上手くは運ばないようで、困っていると脳内通信で公爵家に居るソラから連絡が入った。

 『タックミさまー! 我等もそちらへ帰りますよー!』
 『タクミ様? 王都焼いていい?いいよね?いいって言って!』
 「何だよチェリーの奴 物騒だなおい……」
 「どうかしたの?タクミ」
 俺が呟いた事でメリヌもまた頭の中だけで話をしているのが分かった。
 少し悲しかったが気にしてない素振りで質問をしてみた。
 「何か脳内通信でウサ達がキレてんだよ……」
 「何で?」
 『あんたらまだわかってなかったの?』

 「「何を?」」

 本当に分かっていなかった事に半ば呆れながらラメルは続ける

 『公爵家はソフィーを聖女プラス魔導師だと勘違いしてるってことよ!』
 「何で?」
 『精霊達と普通に話をしていたからよ』
 「そら話すだろ?友達になったんだから」

 『基本、人間とは話さないんだよ僕達は』

 そうマロンは言う
 前魔導師のヨネとも正一ともラメルは日常的に話をしていたが、あくまでも影の中からだったと続ける。

 『それが私達精霊と人との境界線だったんです』
 ブラウンがその後続けて言ってきた。
 『それが今回何故か黒ウサが人前で顕現しているし、まさか私達光精霊に助けを求める事なんて今まで無かった事なので驚いて来てみれば、タクミ様が居たんです。そこから興味が沸いたんですよ』

 続けてレッドが言うと
 はしゃぎながらペロンが
 『来てみたら何やら楽しそうにしてましたからね!』

 憤っていた皆は口々に出会った頃の話をし始めて思い出話をした事で落ち着いてきた。

 「こっち来れるなら呼べば? 私には話が聞こえないんだよ!」

 精霊達が怒りを静めたと思ったら、メリヌがプリプリと怒り出してしまった。

 なので(帰ってこれるならこっち来て話そう、メリヌが聞こえないと怒ってる)

 そう伝えると
 『そりゃ怖い』
 と、笑いながら俺の周りに現れ、ふわふわ飛び始めた。

 『『『ただいまですよー』』』

 と、チェリー、ペロン、レッド、ブラウン、ソラが現れた。

 契約者の側に来るのは簡単だったらしく直ぐに皆が集まった。

 「おかえりー!」

 それを嬉しそうにメリヌが迎えると、メリヌが聞こえてなかった部分を皆で教え始め、そのまま思いで話に花を咲かせた。

 その後ようやく草原の作業へと話が戻って行った。









 『川を先に深く掘るなら水は僕が浮かせますよ!』
 そうソラが受け持ち
 『対岸の壁は私が溶かして固めるよ! 溶けだす前に水と風で冷やして貰わないと駄目だけど』
 そう言うとチェリーはペロンとソラとを交互に見た。
 『じゃあ浮かせた水を僕が壁に散らせば解決だね!』
 任せろとばかりに胸を叩くペロン

 『『それでは作業中人や魔獣を寄せ付けない結界を私達が張りますね!』』
 レッドとブラウンが同時に話だし、大まかな役割分担が決まった。

 『流石に全精霊が居ると楽ね♪』
 そうラメルは本当に嬉しそうに話す。



 闇精霊のラメルはタクミと出会う前まで他の精霊とも対立していた。

 だからヨネも正一も、他の精霊とは契約できなかったし、出会えなかったしラメル自身がさせなかった。

 それが今回、魔導師に俺がなったあと、精霊が現れる度に次々と勝手に契約して行っちゃったもんだから、実はラメルは焦っていた。
 自分は消されるんじゃないかと不安にもなっていた。

 だがそんな事はなく、喧嘩しようにもケバブを作って売ってと毎日忙しい日々を送ってる間にわだかまりが薄まっていた。

 全て己の嫉妬から敵対していたと気が付いたのだ。
 気が付けば皆と楽しく過ごせる様になっていたし、喧嘩もしなくなっていた。

 それをラメルは口にこそ出さないがタクミに感謝していた。

 「よし!始めよう!」

 タクミの言葉でラメルも楽しそうにしながら付いて行く。


 顕現することで全ての人間に悪影響を与え続けていた闇精霊の力は、少しづつ失われつつあった。

 それに伴う様に魔森の結界も薄まりつつある事に、この時は誰も気付いていなかった。

 

 
 
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