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六十八話
しおりを挟む屋上から階段へと向かう途中に露天風呂があった。
一回りほど前の風呂より大きくなっていて男女別々になっていた。
そこを通り過ぎると階段があり、螺旋階段になっていた
螺旋階段を降りていくとホールになっていて壁には巨大な丸い窓が2つあった。
『ここは食堂兼見晴台になるわ』
ラメルはそういって先を歩く。
このホールの真ん中に水の柱があった。
その下には柱を中心にして丸くカウンター席があった。
ソラが自慢気に柱の横に立つとおもむろに手を突っ込んだ。
そして、再び手を出すとその手には魚がピチピチと跳ねていた。
どんな仕組みになっているのか分からなかったが、自由に取り出せるようだ。
そのままカウンターキッチンの中で調理が出来るようだ。
カウンターキッチンの中にも階段が付いていて、下へと続いていた。
その下へと降りていくと、解体場と冷凍冷蔵庫があり、その横には巨大な燻製室や捌いた肉が吊るせる様になっていた。
捕まえた獣や魔森猪は奥の出入り口から入れられるとのことだったが、後で見せるというのでそのまま放置して、再び階段を登ってキッチンへと出た。
窓を背にして更に進むと通路があって、左右に各部屋へと続くドアが5個づつ並んでいる。
俺とメリヌは二人部屋だ。
そうすると空き部屋が2つ出来ると言うので、客間だと教えた。
「この先貴族やらと関わる事になるだろ? 一時的に預かるソフィーリアも居る事だしな」
『ふーん……一時的に……よね?』
何となく不満顔のラメル。
「ああ、長居はさせるつもりはないよ」
そう言うと安心したのか、次の階段へと歩いていった。
階段下りた先には広い畑があった。
今は何もないがそのうち耕そうと思う。
そのまま通り過ぎるとようやく操縦室へと続く廊下になった。
突き当りになり、扉を開くと座席が運転席を囲む様に半円を描いている。
その先にマロンが座っていた。
「マロン外に一緒に行こう!皆がどんな形にしたのか気になるからさ」
『畏まりました! ちょっとまって下さいね!』
そう言うと目の前の景色が下降し始めた。
地面が近づいて来て止まる。
横の壁が開いて階段が出て来た。
そこを皆で降りていくと、俺達を囲う様にベアード達後が待っていた。
「…………えっ……と?」
確か俺達は飛行船を作っていたはずだ。
ベアード達に捕まって飛行船から離れて歩く、何故か振り返るなとキツく言われたので指示通り付いていく、全体がよく見える場所に辿り着いたから振り向いて良いぞと言われて振り向いたが、俺の目の前には人参を地面に置いて伏せた巨大なウサギが居た。
鼻をひくひくしているから生きているのかも知れない……。
『どうよ!凄いでしょ!』
自慢気にラメルが手を広げて決めポーズする中、俺は唖然と眺めていた。
微風に揺れるパンダ模様の毛。
クリっとした瞳はちゃんと黒目だ。
何故かショルダーバックまである。
背中には……綿飴の袋を背負っていた。
もしかしてアレで浮くのか……?
『見ていてくださいね!』
と、マロンが飛んでいって操縦室に戻ると、巨大なウサギが立ち上がり歩き出した……。
『二足歩行も出来るんですよ!』
と、嬉しそうに脳内通信で叫ぶ
歩く姿を目撃した兵士やギルドの方々はどよめいた。
野次馬にきた民達が跪いてお祈りを始める奴まで居る。
精霊信仰の方々だろう。
聖獣もウサギだしなこの世界……
「飛行船て凄いんだな!」
メリヌまで大はしゃぎだ。
何か色々おかしな事になっているが、さっきまで中に居たので一応アレは乗り物なのだろう。
視線を感じて振り向くと困惑しているベアードが説明を求める。
「あ……えーと……アレは……んーと乗り物です!」
「「「信じられるか‼」」」
その場にいた方々の総突っ込みを受けた。
「あれに乗って将軍達と戦うつもりか⁉」
「戦略兵器ではないのか?」
「聖獣だろう?」
などと、質問攻めにあった。
(むしろ俺が聞きたいところだ……何を想像したら生きた飛行船なんか作るのよ~?)
そう思っていると
『『『可愛いでしょ♪』』』
っと、ラメル達が自慢げに言う。
『そんな事より早く行くわよ!』
そうラメルが叫び俺の背中を押す。
まだ話は終わってない!と叫ぶギルドマスター達を振り切ると飛行兎へと乗り込む。
ふわりと操縦室の人参が浮き上がると、背中の綿飴袋がパンッと瞬時に膨らんだ。
そしてふわりと浮き上がるとぐんぐんと地面が遠ざかっていった。
作ってしまったのはもうしょうが無いので、俺達はブラウンの淹れてくれたお茶を呑みながら目玉の部分から外の風景を眺めていた。
眼下に黒魔森猪の群れが小さく見える。
その先に……一台の馬車が走っていた。「襲われてるのか?」
そう呟くと
『任せなさい!』
と、ラメルが飛び出していった。
その後を俺も追いかけた
屋上から飛び出すのかと思ったら、キッチンの中へと行くではないか
何処に……と、思ってたら、キッチンの階段を下っていくので、着いていった。
奥のボタンを押すとウサギの口がパカリと開いた。
『タクミは、そこに居て!』
といわれ、足を止めると、飛んでいくラメルを見た。
そのまま飛行兎も下降していき地面スレスレで飛ぶ。
その前をラメルが飛び、口が開いたままのウサギの中へ次々と黒魔森猪を倒しては放り込んでいった。
それを受け取ると
『捌きますよー』というソラとチェリーに渡す。
次々に放り込むラメルと首と内臓と骨を一定の場所に放り込むソラとチェリーを呆然と眺める。
『捨てる部分は廃棄室へと運ばれて後で纏めて焼却するんですよ』
俺の後ろからブラウンが降りてきて言う。
傍から見ると巨大なウサギが魔獣の群れを呑み込んでるようにしか見えないんだろうなー……と思いながら肉となっていく様子を眺めた。
その肉の塊を一匹掴むとブラウンはキッチンへと持ってった。
ペロンとメリヌは燻製室へと肉を持って行ってたので、俺も手伝うことにした。
やがて全ての黒魔森猪を捕まえると、追われていた馬車に近付きヒョイと持ち上げると、ウサギの口から放り込み、ラメルが帰ってきた。
『これで狩りも楽になるね!』
そう言うと俺の影へと潜り、疲れたからといって少し休むとの事……
俺は運び込まれた馬車へとメリヌと一緒に近付き声を掛けた
「大丈夫ですかー?」
「その声はタクミ様⁉」
なんか聞いたことのある声だった
ガチャリと扉が開くと、そこに居たのはソフィーリアと、その侍女だった。
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