Shine Apple

あるちゃいる

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六十五話

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 ソフィーリアに綿飴を食べさせながら商業ギルドへと向かう。

 一応お貴族様……というか王族繋がりなので、魔力車へと乗せて中を案内したらいたく気に入ったようで

 「ここに住む~~!」

 と、言い出し始め、権力使ってでも絶対に住むからっ!と駄々をこね始めた。

 が……

 緑ウサ(ペロン)赤ウサ(チェリー)水色ウサ(ソラ)やらがヒョコヒョコ現れてジーッと見つめた跡、トドメのように黒ウサ(ラメル)が出てくると土下座して震えながら謝っていた。【茶ウサのマロンは運転中】

 「俺達が滞在する少しの間なら寝泊まりしても構いませんよ」

 そんな彼女を見て可哀想に思ってしまい、そう伝えた。

 だが恐れ多くて生きた心地がしないからと首がもげる程の勢いで横に振って断られた。

 こんなに可愛いウサギなのになぁと思うけど、これがこの世界の常識なのかも知れない。

 精霊様は神の御使いだとか、魔力の根源だとか書物に書かれているし、幼い頃からそう言われて育てば俺だって恐れ慄いていたかも知れない。

 (その割にはメリヌは普通に接している様な……?)
 少し不思議に思ったが、メリヌはメリヌだからなんだろうと無理やり納得した。



 その後マロンが運転してるところを恐る恐る眺めては目をキラキラさせて窓から見える景色を眺めていたから、嫌では無いんだろうな……。

 道中揺れない様に気を付けながら走ってくれていたので、酔う事も無かった。

 ゆっくり走ってるからか少し時間が掛かるので、お茶にしようと誘いメリヌに二階の草原へ連れて行く様に伝えた。

 そして、お茶と綿菓子と盆に乗せて俺も草原に向かう。

 綿菓子を出した時点でマロン以外のウサ達も二階へと登っていった。

 (ギルドに着いたらマロンだけ別にお茶と綿菓子をだしてやらんとな……)

 草原の真ん中でシートを広げてそこに全員座ってこちらを見ていた時に思った。

 (本当に綿菓子が好きなんだなぁ……ウサギって……)


 畏れ多いと言っていた先程の態度からは考えられない程打ち解けて、綿菓子を貪り食ってる二人とウサ達を見る。

 ウサギって甘いもの食べていーんだっけ……?

 心の中で呟いた筈が、ウサ全員に睨まれながら

 『『『精霊だからいーの!』』』

 と、突っ込まれた。

 俺はあまり好きじゃないので一欠片食べた跡はお茶を呑んでいる。

 和やかなお茶会をしながらギルドへと着くと、魔力車の見張りをペロンに頼み、残りの者達で運転してくれたマロンをもてなす様に言って、ラメルを影に潜ませながら商業ギルド本店へ俺とメリヌにソフィーリアと入っていく。

 俺の顔を知ってる者達は軽く会釈して慌てて足早に通り過ぎていく。

 (なんか……避けられてるような……?)
 『草原を焼いた張本人だからよ』
 (さいですかー)

 どうやら文句を言いたいが助けられた手前、何も言えないとか何とか
 ……溜息しか出なかった。

 桃肉祭りが終わると一気に人も商人も減るようで、地元に住む者達しか居なかったので、宿屋の関係者だろうな。
 そのまま放置する事にして周りを見渡し、ギルド員を見付けて話し掛けると、慌てて二階へと案内してくれた。

 ガラス質の地面が水晶だと分かっているのかとも思ったが、どうやらソフィーリアの顔を知っているようで、どの職員も顔を見た瞬間姿勢を正して挨拶をしていた。

 「なんだ、ソフィーリアって実は良いとこのお嬢様かなんかなのか?」

 「ん?あれ……言ってなかったっけ? 私は山国の王妃の従姉妹って」

 「ああ、それは聞いたよ」

 (あの王都って山国っていうのか……初耳……山裾の街は地方都市だったのか……)
 『なぜ知らんのだ……』っと、ラメルに突っ込まれた。


 「うん、だからだよ」
 「ふーん……どういう事?」

 爵位の事はよく分からなかったので聞いてみたら……

 「山国の王妃は元々この国の王族ガーディアン家の長女なのね? んーと先王の娘だから今の王様の妹さん。で、私は王様の弟の娘なのよ。まぁ、公爵家の末っ子だけどね」

 つまり……
 ソフィーリアの父は王弟で王妃とは姉弟……
 「なぁ、ソフィーリアさんや?」
 「なぁに?」
 「それは王妃の従姉妹じゃなくて王妃の姪って言うんじゃないのか?」
 「ん? そうなの?よく分かんないよ。
 山国の王様にも、小さい頃説明されたけど良く分からないって言ったら従姉妹とでも言っときなさいって言われたし」

 (……諦めたな王様)

 うんまぁ俺もよく分からんから従姉妹にしとこうか……と言うしかなかった。

 『諦めんな人間よ……』
 (うっさい!頭がこんがらがるんだよ昔から)

 そんな話をしながら案内人の後ろを付いていくと、ギルドマスターの部屋の前で止まりノックした。

 「どうぞー」
 と、ここでもどうぞ娘が居るようだ……。

 ガチャリと扉を開けると、目の前の席には厳格な顔に少し厳しそうな淑女が窓の外を眺めていた。

 どうぞーっとしか言わない娘はその淑女にカーテシーをすると、隣の部屋へと消えてった。

 その淑女はソフィーリアを見ると、ツカツカと歩いてきて……

 突然泣き出しながら飛び付くと

 「ソフィー様!何処へ行ってらしたんですか⁉ 探しましたのよ⁉ さぁ!帰りましょう! 御父様の将軍様もたいそう心配してましてよ!」

 と一気にまくしたて、抱き締めながら横抱きに抱えると部屋から飛び出していった。

 ソフィーリアは一言も言えないまま……寧ろ、ここに何故あなたが⁉的な顔をしながら扉の向こうへ消えてった。

 そこに残された俺達はボー然と立ち竦み、取り敢えず草原に戻ろうかどうしようか迷っていた。

 すると後ろの扉から、クマ耳を携えた大男が現れた。

 「あー……すまんなタクミ殿。私はこのギルドのマスターで、熊人族の長を努めてる、ベアードという。
 まぁ、知ってるか……
 二度ほど会ったもんな。
 ……取り敢えず将軍の娘は屋敷に連れ帰るそうだ。
 んー……と、どうするかなぁ……
 まぁなんだ、取り敢えずお茶でも呑みながら話し合おうか……」

 そう言うとソファーを勧められ
 お茶を頼むと言うとベアードも座る
 程なくしてお茶を持ったどーぞ娘がやって来てお茶を出した跡、ベアードの後ろに立つ。

 「ああ、無愛想ですまんなぁ……この子は」
 「申し遅れましたサブマスターのサラと申します」
 そういってカーテシーをした。

 どーぞ娘では無かったようだ

 「それでですなぁ……草原の事なんですが……」

 少しお茶を飲み合い他愛ない世間話の跡ギルマスが話し始めた事によると

 草原はガラス質を取っぱらい、早々に種を植えたいのだが、あの娘がしゃしゃり出て来て管轄が将軍へと移ってしまい、にっちもさっちも行かないんだそうだ。

 草原も種を撒いたところで二年では元のようには戻らず、どんなに急いでも精々六割戻れば良い方なのだとか。

 「ただし、それは今すぐ種を撒いた場合何ですよ……」
 と、クマ耳を下げながら困った顔をするベアード。

 「それでですね、タクミ様 クエストの依頼なのですが……」
 ベアードの変わりにサブマスターが続ける。

 将軍を説得して娘のソフィーリアを連れて戻り、水晶の地面を剥した後耕して欲しいと言われた。

 「いや、まぁ耕すまでは一日あれば何とかしますけども……将軍を説得とは?」
 (嫌な予感しかしなかったし、こういう予感は大体当たるんだよなぁ……)と、思っていると案の定で

 「実はソフィーリア様を溺愛してまして、こちらの話は全く聞き入れてくれないんですよ……なので、どうにかしてくださいませんか?」

 「どうにかって言われてもなぁ……ってあれ? ガラス質の地面が水晶ってことを……?」

 「もちろん把握しております。優秀な諜報員もおりますから……しかし、水晶よりも草原の方が大事なのですよ、この街にとっては死活問題ですからね」

 と、にこやかに言われた。

 (まぁ、そうだろうな……)
 『天下の商業ギルド抜け目なしね』
 と、ラメルも納得していた。
 
 因みに将軍の預かりになった理由はソフィーリアが一言

 「見てみたい!」

 と、言ったからだそうだ……

 
 

  
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