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二十三話
しおりを挟む「タクミー今何匹だっけ?」
山裾の街に着いてから直ぐに依頼を受けて狩りに出た俺達は山の手前の河原に居た桃魔森猪を狩っている。
メリヌが叩き俺が回収。
桃魔森猪はすべて使えるので内臓を掻き出す事もせずにそのままアイテムバッグに放り込めるから楽だ。
普通の肉は血抜きや内臓を捨てる為時間が掛かるが、桃魔森猪は違う。
血液はソースとして使えるし
内臓はソーセージに使ったり料理に使う。
陰部などの汚れた部分もペットの餌に加工できるし、骨は砕いて家畜の餌にする。
皮も柔らかいので食えるし捨てるところが一つもないのである。
「あと二匹で20匹だよー」
「りょーかーい」
「あーでも食べたいから10匹くらい余計に獲ってくれ!」
「丸焼き食べたーい!」
「あいよー」
「「よっしゃーっ!」」
羊のくせに肉食で大ぐらいなメリヌに丸焼きを約束すると、先程より余計に気合が入ったようで、狩るスピードが増した。
現金なやつである。
俺も回収を少しやめて薬草の採取に精を出す。
メリヌは狩りは上手いが薬草は種類が多く覚えるのを諦めた。
手伝ってもらっても半分以上雑草だったり毒草だったりする。
たまに目当ての薬草を取ってきてもぐちゃぐちゃで売り物にはならないため、最近では採ろうとすらしなくなった。
なので薬草を採る仕事があった場合は護衛に徹してる。
ある程度薬草が集まったのでメリルの方へ戻ると狩られた桃魔森猪が小山の様になっていた。
明らかに10匹以上は狩ってる。
まさに売る程ある。
「取り過ぎちった」
テヘッとどっかのアニメの様に舌を出して頭をコツンとする仕草で誤魔化したメリヌ。
この姿はどこの世界でも使うようだ。
日本との不思議な共通点を確認しながら頭を撫でてて
「お疲れさん」
と褒めてやる。
取り過ぎだと怒ることはない。
備蓄は出来るし多ければ燻製等にも加工できるからだ。
それに桃魔森猪は沢山いるから他の冒険者の迷惑になるという事もない。
狩った数を数えながら回収したら36匹いた。
全部で54匹狩った事になるが、問題ない。
時間もまだ昼過ぎだし加工後でも泊まる宿屋は余裕で探せるだろう。
生肉なのでアイテムバッグとはいえ腐らせるのは勿体無いので、一部はハムかベーコンにしようとギルドに向かいながら考える。
◇
「お疲れ様でーす! 依頼品の確認お願いしまーす!」
ギルドに戻るとドアを開けながらメリヌが伝える。
この街のギルド員は一人しか居ないので依頼終了の報告もここでする。
「お疲れ様です、確認しますので少々お待ちください」受付から出てプリムローザさんがやってくる。
倉庫には移動せず、入口付近で桃魔森猪20匹と薬草の束10束を確認し始めた。
「はい、確認しました有難うございます」
確認されると依頼書に判子を貰い、依頼の品物を持って商業ギルドへと向かう。
そこで依頼書と品を渡し報酬を貰う。
「他にもあるなら買い取りますけどどーしますか?」
殆どの冒険者は依頼量よりも多く狩る人は多い。売る人もいれば食べる為に狩る人も居るので、狩りすぎた人用に買い取りもしている所は多い。
「いえ、加工するので大丈夫です」
「あ、加工できるんですか? 優秀な荷物持ちさんなんですね。……もし良ければ他のパーティも紹介出来ますよ?」
そう言ってチラッとメリヌを見て小声で言われる。
仲間に対して失礼な言い方だが、実入りの良い仕事を回すのも商業ギルド員の仕事なので怒らない。
それで助かる人もいるのだ。
「いえ、大丈夫です!この子はじゅうぶん優秀なんで」
そう言って断る。
「そうなんですか? それは大変失礼致しました」
報酬金を渡しながら謝罪を受ける。
「またのお越しをお待ちしています」
会釈しながら商業ギルド員と別れると入り口で待ってるメリヌを連れて町外れの空き地へとやって来た。
加工するにも燻さないとイケないので煙も出るし人のいない場所に移動する。
「丸焼き! 丸焼き!」
と、変な動きで俺の周りを踊りながら回るメリヌ。
さながらアフリカの民族の様だ。
一匹出して腹を掻っ捌いて内臓を取り、口から棒を突き刺して火にかける。
血抜きはしないでそのまま焼くと天然ソースの様になるのだ。
普通の肉だと不味くなるのだが……本当に不思議な生き物である。
火にかけて焦げない様にくるくる回すのをメリヌに任せて、俺は燻製肉を作る為の箱を作る。
材木のストックもあと少しになったので日を決めて丸太を取りに行きたいが、この山は木を勝手に切っても良いのだろうか……あとで、プリムローザさんに聞きに行こう。
五匹は違う料理に使う予定なので外して残りの肉は全て燻製にしてしまう。
数もあるので時間がかかってしまったが、テント代わりの小屋を空き地に出して今日は野営にした。
モクモクと出る煙を眺めながら丸焼きにした肉をメリルと食べていたら近所の人も匂いに釣られてやって来た。
「やぁ今晩は、旅の人かね? 良ければ少し食べさせてくれないか? 代わりにコチラは酒を提供するがどうかね?」
そう言いながら酒瓶を掲げる。
「こちらは採れたての野菜を出すよ! 肉ばっかりじゃ栄養偏るよ!」
っと、おばさんが言う。
なんだかんだで人が集まり十数人で車座になって宴会が始まってしまった。
丸焼きも一匹じゃ足りず、もう二匹焼いた。
この街の話や旅の話に花が咲いて最初の夜が過ぎていった。
寝る前に少しメリヌと話をした。
「楽しい人達だったね!」
「そうだな、来てよかったな」
「うん!」
そんな会話をしならがら寝袋にはいり、明日も良い日である様に祈りながら寝るのであった。
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