【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙

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緊急事態

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　漏れる漏れるぅ、と私が公園のトイレに駆け込んだのは夜のことでした。

　小腹が空いたのでコンビニまで買い物に出かけたところまでは問題なかったのですが、タイミング悪くその時トイレに行きたくなったのです。しかもさらにタイミングが悪かったのは、コンビニのトイレが改修工事中とかで使えなかったことです。

　私は買い物を済ませると、道中にある公園に急いで向かいました。焦りに焦ったのですが、なんとか間一髪、間に合わせることができました。

　漏れずに済んだと安堵しました。ですが、不運とは重なるものですね。

　なんと、トイレットペーパーがなかったのです。これには困りました。あいにく財布だけ握りしめて家を出たものですから、ティッシュの類はありません。コンビニで買ったのは酒のつまみの総菜。困りました。レシートも受け取らなかったので、唯一の紙と言えば、それは紙幣だけでした。

　これで拭けば外に出られるが……かなりもったいない。どうしよう……。

　そう悩んでいた時です。神が現れました。

　いえ、神ではなく紙でした。となりの個室の人が「よろしければどうぞ」と壁の下の隙間から差し伸べてくれたのです。

　ありがとうございますと思ったのも束の間、私はぞくりとしました。

　あれ？　となりに個室ってあったかな？

　私はその時、よくある怪談話を思い出しました。
　一番端の個室に入ったのに壁側から声がするという類のものです。私は恐る恐るお尻を拭いた後に、外に出てみました。すると……。

　大丈夫でした。ちゃんと個室はありました。扉が閉まっているのでまだ中に誰かいるのでしょう。

　その時、私はお礼が言いたかったのですが、あいにく私は生まれつき声が出せない障害を持っていたので、言えませんでした。仕方なく、見えてはいないと思いますが、扉に向かって一礼して家へと帰りました。

【解説＆ヒントは↓をスクロール】
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　〈ヒント「主人公はしゃべることができない、ということは……」〉

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【解説】

　どうして隣の個室にいた人は、紙がないことを知っていたのでしょう。主人公は言葉が話せないそうです。であれば独り言をつぶやくなんてこともなく、紙がなく困っていることが外からわかるとは思えません。

　もしかしたらずっと主人公を尾けていたのでしょうか。あるいはどこか壁に穴が開いていて、そこから中の様子を見られていたのかも……。

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