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京都支店

傍観者兼…

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「吉野さん、吉野さん」


出社すると着替える間もなく、北条さんに呼ばれた。

「ちょーっと教えてほしいんだけど、浴衣のレンタルってどこでできる?」

「…今西さんと宵山浴衣デートですか?」

「正解、イイ店知らない?」 

直球での質問に直球での回答。

というか、北条さんってば今西さんと付き合っている事、隠す気なくなったわね~、こないだのキスから。

まぁ、他人の恋路に口出すつもりは全くないけれど。
なんたって美男美女のカップルだもん。
目の保養も兼ねて、京都にいらっしゃる間だけでも見守らせていただく所存。 


なーんて、近所のおばちゃん的な内心は綺麗に押し隠して、にーっこり営業スマイルを浮かべつつ

「…それなりには。
で、今西さんにはナイショですか?」

と訊ねると、北条さんは顎の下に手を当てて考え込むように仕草を見せた。

「そうだな、ビックリさせるというのもいいかもな」

「了解、じゃあ後ほどリサーチ結果をお渡ししますね」 


それほど彼らの事情も、彼ら自身の事も知っている訳ではないけれど。
何といったって、まだ2週間かそこらのお付き合いなのだから…。

とはいえ傍観者兼協力者という美味しい位置にいるみたいだし、私。 


女子ロッカーにて手早く制服に着替え、始業前に支店内の掃除を済ませると。ギリギリの時間で今西さんが出社してきた。

「遅くなりました、お掃除も手伝えなくてごめんなさい」

「まだ始業前だから大丈夫ですよ」

顔色が悪いとまでは行かないけれど、どことなく疲れたような顔をしている今西さんは、ややぎこちない動作で自席に座り込んだ。

「…大丈夫ですか?」

「えぇ…ちょっと疲れが」



 ——あれ?

今日も朝から暑かったのに。

この週末、今西さんだってしっかり休みだったのに「疲れ」? 


よくよく見れば、今西さんは今日に限って薄手とはいえ、タートルネックのサマーセーターを着ていて。



——なんだか首元を隠しているみた……! 


勢いよく振り向くと、なんともバツの悪い顔をしたまま北条さんがスッと目を逸らした。


 
——あ…あぁ。

そういう事ですか、浴衣も、デートも。 


朝っぱらからなんだか疲れた気分になりながら、とりあえずコーヒーを飲み干し、約束を果たすべく今からでも浴衣をレンタルできる店を調べ始めた。 


…傍観者兼協力者もラクじゃない…かも(汗)                              


  ~吉野視点~  
       
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