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4日目 原田視点
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「今日も暑くなりそうだねー」
「だなー」
のほのほとした雰囲気には、でっかい湯呑の緑茶が似合う。
嫌々上がり込んだ部屋の座卓には、色とりどりの和菓子が置いてあった。
見覚えのあるプラスティックケースに一つ一つ収められた、綺麗な菓子。
「和菓子好きなのか?」
勧められた場所……南の庭を見渡せるように原田が座ると、その隣にアオは腰を下ろした。でかい急須にポットからお湯を注いで、これまた寿司屋にでもありそうなくらいでっかい湯呑にそれを注ぐ。ふわりと上がった湯気に、思わず目じりが下がりそうになって気づかれないように力を入れた。
そんな俺に気付くわけもなく、アオは湯呑を両手で持って一口すするとほわりと笑って頷く。
「近くに朝早くからやってる和菓子屋さんがあってねー、おいしいからついつい。そういえば、最初にあげたのこれだっけ?」
まだ数日しかたっていないけれど、なんとなく懐かしさを感じるのは初対面の日からずっとあっているからか?
原田はその和菓子を視界におさめながら、感心するようにため息をついた。
「あまり詳しくないけど、えらい色が綺麗なんだな。洋菓子もカラフルなの多いけど、素朴な色味が綺麗だ」
手を伸ばしてその一つを手に取れば、自分の掌に納まってしまうほどちいさな透明ケースの中を見つめる。アオは嬉しそうに微笑むと、一番手前にあったケースを取ってふたを開けた。
「やっぱり身近にあるものが多いから、身贔屓かもしれないけど日本人の心に訴えるものがあるんだろうね」
そんなアオが口に運んだ菓子は、黄色い。噛り付いた口端から、ぽろっと崩れたものが口端に貼りつきそしてテーブルに落ちた。
「あんた、子供みたいだな」
その姿が幼い子供のようで、苦笑しつつ指先で口についたものを拭い去る。それを口に運ぼうとして、はたと気づいた。
……俺、何した? そして、今、何しようとしてる?
自分の口元に近づけようとした手を止めた俺を、アオが物珍しそうに見ていた。
「小さな兄弟でもいるの? 本当に、世話焼きだよね」
「……うん」
一つ年上の姉が一人!
指先で拭ったものは不自然なぎこちなさであけた蓋に落として、なんとかその場をしのいだ。
やばいやばい、マジで俺って可笑しな奴になってるよ。アオに関わってから。
昨日の夜の惨状を思い出して、肩を落とす。すると湯呑を口に運んでいたアオが、タイムリーにそれを口にした。
「そういえばさ、昨日大丈夫だった? 友達でしょ、土手からこっち見てたの」
そう! それ!
昨日ここでアオを支えた時に土手からこっちを見ていた奴ら、部活の奴らだったんだよ!
まさかあいつらが土手を通って駅に行くと思っていなかった俺は、部員達にここにいることがばれるとは思わなかったのだ。
用事があると言って帰った俺がここにいれば、くだらない誤解を招くに違いないと思って逃げるあいつらに追いついてみれば。
案の定、すげぇ言われた。
勝手に彼女にされたし!
こんな不思議女は願い下げだっての!
といいつつ、アオに触れていた掌をつい見てしまっていた自分にもっと落ち込んだ。
アオにちらりと目を向ければ、何も答えないからか不思議そうな表情で原田を見ている。
もごもごと口を動かしながら。
小動物かよ、人じゃなくて。
こいつは、なんとも思ってないんだろうな。昨日の事。思ってたら、無警戒に部屋に上げないだろう。それはそれでなんかイラつくと、複雑な心情を隠しながらふたを開けたケースから葛饅頭を手に取った。
それを口の中に入れてその甘さを堪能しながら、気持ちも落ち着いてきたところで大きく息を吐き出す。
「……部活の仲間。散々からかわれた」
一瞬黙っていようとも思ったが、言う事で少しでも俺に気を遣ってアオが体調に気を付ければという打算でそれを口にしてみたけど。
「あらー、それはごめん」
アオはへらりと笑って片手を立てるだけで、終わった。
こっの……
「あんたもう少し反省とかしねーの? 俺にすげぇ迷惑掛かってんだけど」
少し冷たい声音で言えば、珍しく驚いたように目を見開いて顔を伏せた。
「だなー」
のほのほとした雰囲気には、でっかい湯呑の緑茶が似合う。
嫌々上がり込んだ部屋の座卓には、色とりどりの和菓子が置いてあった。
見覚えのあるプラスティックケースに一つ一つ収められた、綺麗な菓子。
「和菓子好きなのか?」
勧められた場所……南の庭を見渡せるように原田が座ると、その隣にアオは腰を下ろした。でかい急須にポットからお湯を注いで、これまた寿司屋にでもありそうなくらいでっかい湯呑にそれを注ぐ。ふわりと上がった湯気に、思わず目じりが下がりそうになって気づかれないように力を入れた。
そんな俺に気付くわけもなく、アオは湯呑を両手で持って一口すするとほわりと笑って頷く。
「近くに朝早くからやってる和菓子屋さんがあってねー、おいしいからついつい。そういえば、最初にあげたのこれだっけ?」
まだ数日しかたっていないけれど、なんとなく懐かしさを感じるのは初対面の日からずっとあっているからか?
原田はその和菓子を視界におさめながら、感心するようにため息をついた。
「あまり詳しくないけど、えらい色が綺麗なんだな。洋菓子もカラフルなの多いけど、素朴な色味が綺麗だ」
手を伸ばしてその一つを手に取れば、自分の掌に納まってしまうほどちいさな透明ケースの中を見つめる。アオは嬉しそうに微笑むと、一番手前にあったケースを取ってふたを開けた。
「やっぱり身近にあるものが多いから、身贔屓かもしれないけど日本人の心に訴えるものがあるんだろうね」
そんなアオが口に運んだ菓子は、黄色い。噛り付いた口端から、ぽろっと崩れたものが口端に貼りつきそしてテーブルに落ちた。
「あんた、子供みたいだな」
その姿が幼い子供のようで、苦笑しつつ指先で口についたものを拭い去る。それを口に運ぼうとして、はたと気づいた。
……俺、何した? そして、今、何しようとしてる?
自分の口元に近づけようとした手を止めた俺を、アオが物珍しそうに見ていた。
「小さな兄弟でもいるの? 本当に、世話焼きだよね」
「……うん」
一つ年上の姉が一人!
指先で拭ったものは不自然なぎこちなさであけた蓋に落として、なんとかその場をしのいだ。
やばいやばい、マジで俺って可笑しな奴になってるよ。アオに関わってから。
昨日の夜の惨状を思い出して、肩を落とす。すると湯呑を口に運んでいたアオが、タイムリーにそれを口にした。
「そういえばさ、昨日大丈夫だった? 友達でしょ、土手からこっち見てたの」
そう! それ!
昨日ここでアオを支えた時に土手からこっちを見ていた奴ら、部活の奴らだったんだよ!
まさかあいつらが土手を通って駅に行くと思っていなかった俺は、部員達にここにいることがばれるとは思わなかったのだ。
用事があると言って帰った俺がここにいれば、くだらない誤解を招くに違いないと思って逃げるあいつらに追いついてみれば。
案の定、すげぇ言われた。
勝手に彼女にされたし!
こんな不思議女は願い下げだっての!
といいつつ、アオに触れていた掌をつい見てしまっていた自分にもっと落ち込んだ。
アオにちらりと目を向ければ、何も答えないからか不思議そうな表情で原田を見ている。
もごもごと口を動かしながら。
小動物かよ、人じゃなくて。
こいつは、なんとも思ってないんだろうな。昨日の事。思ってたら、無警戒に部屋に上げないだろう。それはそれでなんかイラつくと、複雑な心情を隠しながらふたを開けたケースから葛饅頭を手に取った。
それを口の中に入れてその甘さを堪能しながら、気持ちも落ち着いてきたところで大きく息を吐き出す。
「……部活の仲間。散々からかわれた」
一瞬黙っていようとも思ったが、言う事で少しでも俺に気を遣ってアオが体調に気を付ければという打算でそれを口にしてみたけど。
「あらー、それはごめん」
アオはへらりと笑って片手を立てるだけで、終わった。
こっの……
「あんたもう少し反省とかしねーの? 俺にすげぇ迷惑掛かってんだけど」
少し冷たい声音で言えば、珍しく驚いたように目を見開いて顔を伏せた。
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