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私、後釜狙ってます!
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私の好きな人には同棲中の彼女がいます。
悔しいので、邪魔してやろうと思います。
あわよくば、別れればいいと思います。
後釜狙ってます。 ←タイトルここまで(笑)
略して「私、後釜狙ってます」
「原田主任! 言われていた書類、机に置いておきましたので」
お昼ご飯を食べに行こうと同僚たちとエレベーターホールで待っていた私は、開いた扉から降りてきた男性社員に気付いて乗り込もうとした足を止めた。
一緒にいた仲のいい同僚は心得たとばかりに、さっさとエレベーターに乗り込んでそのドアを閉める。私に声をかけられた男性社員……原田主任は、ありがとうと言った後エレベーターに目を向けた。
「乗らなくていいのか?」
「はい、大丈夫です!」
「……」
困ったように眉間に皺を寄せる姿も、カッコイイです原田主任!
「あー、と。八坂、さん。書類ありがとう」
「はい! いつでも私に言ってくださいね!」
「……えーと、確か中野さんに頼んだと思ったんだけど」
「忙しそうだったので、私が代わりにさせて頂きました!」
ちなみに、中野さんは別に忙しくない。さっき先に行った仲のいい同僚の中に、その中野さんがいるのである。要するに、私の応援団員なのである。うむ。
「……あぁ、そうか。うん、ありがとう」
「はい!」
原田主任は困ったように首元に手を当てながらそういうと、腕時計に目を落とした。
「あぁ、ごめん。昼休憩が終わっちゃうな。早く追いかけた方がいい」
そうエレベーターに視線を向ける原田主任に、私はにっこりと笑いかけた。
「今からじゃ、どうせ間に合いません」
「え?」
「原田主任は、今から御飯ですか?」
「え、あ、あぁ」
「ご一緒してもいいですか?」
「いや、俺、弁当だから」
その言葉に、思わず口端が引くついた。
そんなの知ってる、いつもお弁当。
私はなんとかひくついた表情を隠して、口端を引き上げる。
「わかってます。私、社員食堂で何か買ってきますからデスクでご一緒してもいいですか? 一人じゃ寂しいですし」
私の申し出にぎょっとした顔をした原田主任は、視線をうろつかせた後、ため息をついた。
「……いや、それなら社食にいこう」
よっしゃ、思い通り!
そりゃそうだよね、デスクで二人仲良くよりは、社食で食べてた方が普通に見えるよね。
なんか悔しいけど、それでもいい。
一緒にご飯食べられるんだから!
私は原田主任を見上げると、満面の笑みを浮かべて頷いた。
「はい! ありがとうございます!」
ため息をついてるのは気づいてるけど、全力でスルーします!
原田主任はどこか諦めたようにもう一度ため息をついて、営業部の方に行こうとしていた足をエレベーターへと向ける。
社食のある最上階に行くためにエレベーターの昇降ボタンを押して、原田主任は階数ランプを見上げた。
私は、斜め後ろでその姿を見つめる。
原田直哉、二十六歳。
営業部法人営業課主任。
私の大好きな原田主任には、同棲中の彼女がいます。
悔しいので、邪魔してやろうと思います。
あわよくば、別れればいいと思います。
後釜狙ってます。 ←タイトルここまで(笑)
略して「私、後釜狙ってます」
「原田主任! 言われていた書類、机に置いておきましたので」
お昼ご飯を食べに行こうと同僚たちとエレベーターホールで待っていた私は、開いた扉から降りてきた男性社員に気付いて乗り込もうとした足を止めた。
一緒にいた仲のいい同僚は心得たとばかりに、さっさとエレベーターに乗り込んでそのドアを閉める。私に声をかけられた男性社員……原田主任は、ありがとうと言った後エレベーターに目を向けた。
「乗らなくていいのか?」
「はい、大丈夫です!」
「……」
困ったように眉間に皺を寄せる姿も、カッコイイです原田主任!
「あー、と。八坂、さん。書類ありがとう」
「はい! いつでも私に言ってくださいね!」
「……えーと、確か中野さんに頼んだと思ったんだけど」
「忙しそうだったので、私が代わりにさせて頂きました!」
ちなみに、中野さんは別に忙しくない。さっき先に行った仲のいい同僚の中に、その中野さんがいるのである。要するに、私の応援団員なのである。うむ。
「……あぁ、そうか。うん、ありがとう」
「はい!」
原田主任は困ったように首元に手を当てながらそういうと、腕時計に目を落とした。
「あぁ、ごめん。昼休憩が終わっちゃうな。早く追いかけた方がいい」
そうエレベーターに視線を向ける原田主任に、私はにっこりと笑いかけた。
「今からじゃ、どうせ間に合いません」
「え?」
「原田主任は、今から御飯ですか?」
「え、あ、あぁ」
「ご一緒してもいいですか?」
「いや、俺、弁当だから」
その言葉に、思わず口端が引くついた。
そんなの知ってる、いつもお弁当。
私はなんとかひくついた表情を隠して、口端を引き上げる。
「わかってます。私、社員食堂で何か買ってきますからデスクでご一緒してもいいですか? 一人じゃ寂しいですし」
私の申し出にぎょっとした顔をした原田主任は、視線をうろつかせた後、ため息をついた。
「……いや、それなら社食にいこう」
よっしゃ、思い通り!
そりゃそうだよね、デスクで二人仲良くよりは、社食で食べてた方が普通に見えるよね。
なんか悔しいけど、それでもいい。
一緒にご飯食べられるんだから!
私は原田主任を見上げると、満面の笑みを浮かべて頷いた。
「はい! ありがとうございます!」
ため息をついてるのは気づいてるけど、全力でスルーします!
原田主任はどこか諦めたようにもう一度ため息をついて、営業部の方に行こうとしていた足をエレベーターへと向ける。
社食のある最上階に行くためにエレベーターの昇降ボタンを押して、原田主任は階数ランプを見上げた。
私は、斜め後ろでその姿を見つめる。
原田直哉、二十六歳。
営業部法人営業課主任。
私の大好きな原田主任には、同棲中の彼女がいます。
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