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2 早くもn回目
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という夢を見た。
やれやれ。あのアホがループしてもしょうがないだろ。
何千、何万回繰り返しても第一ステージで詰まってそうだ。
そこまで考え、
はたと思い至る。
…ループした他の周のことをサブキャラが夢として覚えている、
てパターンもあるんだよなー。
まさか。はは。
「それでねー、佐藤さんが投げつけた自販機を空中で足場にしてー、
佐々木さんがホストの死角だった上空から、
…」
あ、その「まさか」かもしれない。
ここまでの会話内容も夢に見た通りだし。
てか婚約破棄のあとに何があったんだ、佐々木さんとホスト。
そして、ループしてきたであろう環は。
がばっと抱きついてきた。
なんだ?発情期か?
いやん、俺にも心の準備ってものがあるのよ。
などと言いかけたが、深刻そうだ。
環の体は小刻みに震えている。
押し殺すような鳴き声。
違う、泣き声。
さすがに心配になったので
抱きしめ返し、頭をなでる。
小さいころからよくあったけど、
お互いが成長した今は
これをやると緊張するな。
「ぐすっ。ゆうくん、ごめんね。
何回やっても。何千、何万回やってもダメなの。
誰のせいかもわからないの。
ひっく。もう、あきらめてもいいかなぁ…?」
本当に何千、何万回繰り返しても第一ステージで詰まってたんかい。
多分、第一ステージだよな?夢の内容的に。
えーっと。
「何があったかわからないけど。
環は、たくさん頑張ったんだよな。えらい、えらい」
言って、また頭を撫でる。
沈黙。居心地は悪くない。
「環はすごいと思う。昔からさ。
普段は俺の後ろに隠れてるくせに
俺が本気でやばい時は前にでて戦って。
ほんと、ありがとな。
…あのさ」
これ言って大丈夫か?
下手したら詰みだが。
いや、環ならきっと問題ないか。
「環がどうしてもつらいなら、
無理することはないと思うけど」
ふるふる。環が俺の腕の中で首を振る。
「そうもいかない…んだよな?
なら、がんばれ。
できることがあれば手伝うから。
何でも言って」
環はうん、と小さく言って
俺から離れた。
「…えへへ。ありがと!
わたし、がんばるから!」
元気になったらしい。
ついでに自分の行動に羞恥心が追い付いてきたらしく、
数秒後には顔を真っ赤にしていた。
こっちまで恥ずかしくなってきた。
冷静に考えると
今のもループ物のお約束だよなー。
何回繰り返しても失敗する主人公をヒロインが慰めるやつ。
慰め役をもらった人物がメインヒロインより人気でたりもする人気シーンだ。
主人公側をやる妄想はたまにしていたが、
まさか慰める側をやることになるとは。
俺の語彙ではさっきのが限界だ。
向いていない。
学校が見えてきた。
それにしても環は随分と難解な謎と戦っているらしい。
万単位で繰り返して敵の目星もついていないなんて。
陰鬱な表情をした水商売風の女性とすれ違う。
「許さないっ…!ローラン様の仇ぃぃぃっ!
佐々木ぃ…佐藤ぅぅぅぅっ!!!
この学校ごと破壊してやるぅぅぅ!ふぅぅっ!」
…うん。
敵、こいつでは?
明らかにホストの仇討ちにきてるじゃん。
と思いつつ環の方を見る。
「きれいな人だったね~。
佐々木さんたちの知り合いかな?」
と屈託のない笑顔。
嘘やろ。
なんだろう。
ループするのやめてもらっていいですか?
万単位のループの間なにをしてたんだ、こいつ。
とりあえず保留して教室へ。
2人ともC組だが、昇降口で別れる。
俺たちは校内ではあまり一緒に行動しない。
ただの幼馴染だ、と言っても聞かないやつが多くて鬱陶しいからだ。
それにしても。
さっきの非力そうな女が
事件を引き起こせるんだろうか。
それも、何万回のループでも全て成功するような高確率で。
少なくとも、単独犯ではなさそうだが…
教室に着いた。
「うひひひひっ。
佐々木、死んでもらうぜ…。
恨みはないがあのお方のためだぁ。」
いたわ、共犯者。
ラグビー部の太田君をはじめ、
体格のいい男子が軒並みこんな調子である。
「あのお方」とかぼやかさなくていいよ。
もう黒幕知ってるし。
しかし、なぜ太田君たちが…?
「佐々木を討ちとれば
ご褒美にあんなことやこんなことを…
ぐひひひひひっ」
あ、うん。
超能力やら魔法やらで操られているわけではないらしい。
「ねえねえ」
先に教室に着いていた環だ。
制服の袖をくいっと引っ張り、
俺に耳打ちする。
お、さすがに気が付いたか?
「男子がみんな佐々木さんのこと見てるの~。
すっごいモテモテだねっ」
…。
ノベルゲームで主人公がこんな調子だったら台パン不可避だな。
「ゆうくんも、佐々木さんのこと気になる?」
不安そうに見上げてくる。
そういうのいいから。
そんなことより目の前の事象をもっと考察して、環ちゃん。
やれやれ。あのアホがループしてもしょうがないだろ。
何千、何万回繰り返しても第一ステージで詰まってそうだ。
そこまで考え、
はたと思い至る。
…ループした他の周のことをサブキャラが夢として覚えている、
てパターンもあるんだよなー。
まさか。はは。
「それでねー、佐藤さんが投げつけた自販機を空中で足場にしてー、
佐々木さんがホストの死角だった上空から、
…」
あ、その「まさか」かもしれない。
ここまでの会話内容も夢に見た通りだし。
てか婚約破棄のあとに何があったんだ、佐々木さんとホスト。
そして、ループしてきたであろう環は。
がばっと抱きついてきた。
なんだ?発情期か?
いやん、俺にも心の準備ってものがあるのよ。
などと言いかけたが、深刻そうだ。
環の体は小刻みに震えている。
押し殺すような鳴き声。
違う、泣き声。
さすがに心配になったので
抱きしめ返し、頭をなでる。
小さいころからよくあったけど、
お互いが成長した今は
これをやると緊張するな。
「ぐすっ。ゆうくん、ごめんね。
何回やっても。何千、何万回やってもダメなの。
誰のせいかもわからないの。
ひっく。もう、あきらめてもいいかなぁ…?」
本当に何千、何万回繰り返しても第一ステージで詰まってたんかい。
多分、第一ステージだよな?夢の内容的に。
えーっと。
「何があったかわからないけど。
環は、たくさん頑張ったんだよな。えらい、えらい」
言って、また頭を撫でる。
沈黙。居心地は悪くない。
「環はすごいと思う。昔からさ。
普段は俺の後ろに隠れてるくせに
俺が本気でやばい時は前にでて戦って。
ほんと、ありがとな。
…あのさ」
これ言って大丈夫か?
下手したら詰みだが。
いや、環ならきっと問題ないか。
「環がどうしてもつらいなら、
無理することはないと思うけど」
ふるふる。環が俺の腕の中で首を振る。
「そうもいかない…んだよな?
なら、がんばれ。
できることがあれば手伝うから。
何でも言って」
環はうん、と小さく言って
俺から離れた。
「…えへへ。ありがと!
わたし、がんばるから!」
元気になったらしい。
ついでに自分の行動に羞恥心が追い付いてきたらしく、
数秒後には顔を真っ赤にしていた。
こっちまで恥ずかしくなってきた。
冷静に考えると
今のもループ物のお約束だよなー。
何回繰り返しても失敗する主人公をヒロインが慰めるやつ。
慰め役をもらった人物がメインヒロインより人気でたりもする人気シーンだ。
主人公側をやる妄想はたまにしていたが、
まさか慰める側をやることになるとは。
俺の語彙ではさっきのが限界だ。
向いていない。
学校が見えてきた。
それにしても環は随分と難解な謎と戦っているらしい。
万単位で繰り返して敵の目星もついていないなんて。
陰鬱な表情をした水商売風の女性とすれ違う。
「許さないっ…!ローラン様の仇ぃぃぃっ!
佐々木ぃ…佐藤ぅぅぅぅっ!!!
この学校ごと破壊してやるぅぅぅ!ふぅぅっ!」
…うん。
敵、こいつでは?
明らかにホストの仇討ちにきてるじゃん。
と思いつつ環の方を見る。
「きれいな人だったね~。
佐々木さんたちの知り合いかな?」
と屈託のない笑顔。
嘘やろ。
なんだろう。
ループするのやめてもらっていいですか?
万単位のループの間なにをしてたんだ、こいつ。
とりあえず保留して教室へ。
2人ともC組だが、昇降口で別れる。
俺たちは校内ではあまり一緒に行動しない。
ただの幼馴染だ、と言っても聞かないやつが多くて鬱陶しいからだ。
それにしても。
さっきの非力そうな女が
事件を引き起こせるんだろうか。
それも、何万回のループでも全て成功するような高確率で。
少なくとも、単独犯ではなさそうだが…
教室に着いた。
「うひひひひっ。
佐々木、死んでもらうぜ…。
恨みはないがあのお方のためだぁ。」
いたわ、共犯者。
ラグビー部の太田君をはじめ、
体格のいい男子が軒並みこんな調子である。
「あのお方」とかぼやかさなくていいよ。
もう黒幕知ってるし。
しかし、なぜ太田君たちが…?
「佐々木を討ちとれば
ご褒美にあんなことやこんなことを…
ぐひひひひひっ」
あ、うん。
超能力やら魔法やらで操られているわけではないらしい。
「ねえねえ」
先に教室に着いていた環だ。
制服の袖をくいっと引っ張り、
俺に耳打ちする。
お、さすがに気が付いたか?
「男子がみんな佐々木さんのこと見てるの~。
すっごいモテモテだねっ」
…。
ノベルゲームで主人公がこんな調子だったら台パン不可避だな。
「ゆうくんも、佐々木さんのこと気になる?」
不安そうに見上げてくる。
そういうのいいから。
そんなことより目の前の事象をもっと考察して、環ちゃん。
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