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炎の黒獅子
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黒獅子とにらみ合いながら思考する。
敵がどんな動きをするかわからない以上、
回避に専念して観察すべきか?
…否。
地を蹴り、間合いを詰める。
こちらに遠距離攻撃の手段はない。
半端に距離をとってしまえば
体格で分のある向こうの間合いで
防戦一方になるのは目に見えている。
ならば、懐に入り込んでしまう方が勝率は高い。
黒獅子は燃え盛る右腕を振り下ろし、
接近する私を迎撃。
間一髪。
一瞬の差で私は腕の内側に入る。
ボッ。という音に続いて
私の背中を熱風が焼く。
無視してもよい程度の被弾だ。
私は接近の勢いを維持して
黒獅子の右脚を水平に切り裂く。
手ごたえは意外にも普通の肉と変わらない。
黒獅子の股を潜り抜け、背中側へ。
素早く黒獅子に体を向ける。
直剣を下段に構え、跳躍。
黒獅子の背中を下から上へと切り裂く。
最高点で宙返りをして体の力を逃し、
着地。
と、視界が暗くなる。私のまわりの地面が暗い。
まずいっ!
暗い範囲から飛び出すように水平に跳んだ。
ズゥゥゥゥン。
直後、空中から黒獅子が背中から落下。
大地が揺れる。
キィィン…
ドゴォォォォォォォンッ!!
一拍置いて、黒獅子を中心に爆発。
直撃は避けられたものの、
衝撃で真後ろ方向に吹き飛ばされる。
しまっ…
吹き飛ばされた私を追うように跳ぶ巨大な火球。
黒獅子が投擲したものだろう。
思考を回す。
長剣で防御するか?
否。物理的に無理だ。
火球はやけに遅い。
そうか。私も同じ方向に移動しているせいだ。
ならば、着地後の回避が間に合うか。
計算。答えは否。
着地の寸前に私は消し炭になる。
…よし。
心を落ち着かせ、待つ。
まだだ。
もう少し。
今!
自由落下により近づいていた地面に。
私は長剣を突き立てる。
突き立てた長剣を支点として、私は半回転して長剣を手放す。
吹き飛ぶ方向を変えることに成功した。
無理な動きをしたため、受け身もとれずに地面を転がる。
ボンッ!
私が着地するはずだった地点で火球が爆散する。
次の火球が飛んでくる。
素早く立ち上がり、走って回避。
熱風が背中を撫でる。
長剣は気が付けば手元に戻っていた。
巫女の力に由来するものだからか。
利用できるかもしれない。
さらに次の火球をサイドステップで回避。
次弾までの時間があるこのタイミングだ。
私は長剣をおおきく振りかぶり、投擲。
黒獅子に向けてまっすぐに飛ぶ長剣。
しかし、それはすぐに空中で姿を消す。
…右手には長剣。
「ああ、もうっ!」
失敗した。
戻ってくるタイミングが早すぎてこの距離での投擲は無理だ。
黒獅子が大きく上空へ跳躍する。
少なくない距離があったはずだが、一瞬で私の頭上へ。
周囲に黒獅子の影が落ちる。
さっきの落下攻撃だ。
私は影の外に飛び出し、
衝撃に備えて近くの枯れ木に身をひそめる。
ズゥゥゥゥン。
黒獅子が落下。
キィィン…
ドゴォォォォォォォンッ!!
爆発。
遮蔽物のおかげで被弾はなし。
息を整えつつ、敵の様子を伺う。
敵が頭を左右に動かし、こちらを探している。
右脚の傷からは黒い粒子が空気中に拡散している。
死角になっているが、恐らくは背中の傷からも。
これまでの攻防が多少のダメージにはなっている…と信じたい。
などと考えたところで。
~~~♪
歌声が聞こえた。
穏やかな曲調。のびやかな高音。
戦場に不釣り合いなその旋律は
しかし戦場を支配していた。
「ウゥッ!ウゥゥゥゥゥゥ!!!」
黒獅子が頭を抱えて唸っている。
苦しんでいるのだろうか?
少なくとも攻撃の予備動作には見えない。
…今しか、ない!
枯れ木の裏から飛び出す。
駆ける。
長剣を体に引き寄せる。
突きの構え。
跳躍。
黒獅子の頭部をつらぬく。
長剣は粒子に隠れていた女性の頭部へ到達。
もう一度、胴体から切り離す。
私は慣性により宙を舞う。
隙だらけの体に攻撃がくることはなかった。
着地。長剣を軽く払う。
長剣に刺さっていた頭部が地面に落ちる。
振り返る。
黒獅子の体が無数の粒子へと還っていく。
「今度こそ終わった、かな」
安堵。
疲労が押し寄せてくる。
立っていられなくなり、その場に座り込む。
座るのすら億劫になり、そのまま寝そべる。
目に映る曇天が鬱陶しくて目を閉じた。
敵がどんな動きをするかわからない以上、
回避に専念して観察すべきか?
…否。
地を蹴り、間合いを詰める。
こちらに遠距離攻撃の手段はない。
半端に距離をとってしまえば
体格で分のある向こうの間合いで
防戦一方になるのは目に見えている。
ならば、懐に入り込んでしまう方が勝率は高い。
黒獅子は燃え盛る右腕を振り下ろし、
接近する私を迎撃。
間一髪。
一瞬の差で私は腕の内側に入る。
ボッ。という音に続いて
私の背中を熱風が焼く。
無視してもよい程度の被弾だ。
私は接近の勢いを維持して
黒獅子の右脚を水平に切り裂く。
手ごたえは意外にも普通の肉と変わらない。
黒獅子の股を潜り抜け、背中側へ。
素早く黒獅子に体を向ける。
直剣を下段に構え、跳躍。
黒獅子の背中を下から上へと切り裂く。
最高点で宙返りをして体の力を逃し、
着地。
と、視界が暗くなる。私のまわりの地面が暗い。
まずいっ!
暗い範囲から飛び出すように水平に跳んだ。
ズゥゥゥゥン。
直後、空中から黒獅子が背中から落下。
大地が揺れる。
キィィン…
ドゴォォォォォォォンッ!!
一拍置いて、黒獅子を中心に爆発。
直撃は避けられたものの、
衝撃で真後ろ方向に吹き飛ばされる。
しまっ…
吹き飛ばされた私を追うように跳ぶ巨大な火球。
黒獅子が投擲したものだろう。
思考を回す。
長剣で防御するか?
否。物理的に無理だ。
火球はやけに遅い。
そうか。私も同じ方向に移動しているせいだ。
ならば、着地後の回避が間に合うか。
計算。答えは否。
着地の寸前に私は消し炭になる。
…よし。
心を落ち着かせ、待つ。
まだだ。
もう少し。
今!
自由落下により近づいていた地面に。
私は長剣を突き立てる。
突き立てた長剣を支点として、私は半回転して長剣を手放す。
吹き飛ぶ方向を変えることに成功した。
無理な動きをしたため、受け身もとれずに地面を転がる。
ボンッ!
私が着地するはずだった地点で火球が爆散する。
次の火球が飛んでくる。
素早く立ち上がり、走って回避。
熱風が背中を撫でる。
長剣は気が付けば手元に戻っていた。
巫女の力に由来するものだからか。
利用できるかもしれない。
さらに次の火球をサイドステップで回避。
次弾までの時間があるこのタイミングだ。
私は長剣をおおきく振りかぶり、投擲。
黒獅子に向けてまっすぐに飛ぶ長剣。
しかし、それはすぐに空中で姿を消す。
…右手には長剣。
「ああ、もうっ!」
失敗した。
戻ってくるタイミングが早すぎてこの距離での投擲は無理だ。
黒獅子が大きく上空へ跳躍する。
少なくない距離があったはずだが、一瞬で私の頭上へ。
周囲に黒獅子の影が落ちる。
さっきの落下攻撃だ。
私は影の外に飛び出し、
衝撃に備えて近くの枯れ木に身をひそめる。
ズゥゥゥゥン。
黒獅子が落下。
キィィン…
ドゴォォォォォォォンッ!!
爆発。
遮蔽物のおかげで被弾はなし。
息を整えつつ、敵の様子を伺う。
敵が頭を左右に動かし、こちらを探している。
右脚の傷からは黒い粒子が空気中に拡散している。
死角になっているが、恐らくは背中の傷からも。
これまでの攻防が多少のダメージにはなっている…と信じたい。
などと考えたところで。
~~~♪
歌声が聞こえた。
穏やかな曲調。のびやかな高音。
戦場に不釣り合いなその旋律は
しかし戦場を支配していた。
「ウゥッ!ウゥゥゥゥゥゥ!!!」
黒獅子が頭を抱えて唸っている。
苦しんでいるのだろうか?
少なくとも攻撃の予備動作には見えない。
…今しか、ない!
枯れ木の裏から飛び出す。
駆ける。
長剣を体に引き寄せる。
突きの構え。
跳躍。
黒獅子の頭部をつらぬく。
長剣は粒子に隠れていた女性の頭部へ到達。
もう一度、胴体から切り離す。
私は慣性により宙を舞う。
隙だらけの体に攻撃がくることはなかった。
着地。長剣を軽く払う。
長剣に刺さっていた頭部が地面に落ちる。
振り返る。
黒獅子の体が無数の粒子へと還っていく。
「今度こそ終わった、かな」
安堵。
疲労が押し寄せてくる。
立っていられなくなり、その場に座り込む。
座るのすら億劫になり、そのまま寝そべる。
目に映る曇天が鬱陶しくて目を閉じた。
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