11 / 15
1.2 魔法祭まで
2話 俺とは
しおりを挟む「先生、練習とはなにをするのですか?」
「簡単に言えば複合魔法ですね」
「複合魔法?」
「知りませんか?」
「はい...。申し訳ございません」
まあそうだよな。今の世界では高位魔法を覚える方が手っ取り早く実力を上げられる。だから複合魔法なんて時間がかかるのは覚えたりしない。じゃあなぜ俺がそれを知っているかって? それは俺が転生者だからだ。
「では説明していきますね」
「お願いします」
「複合魔法とは言葉の通り複数の魔法を合わせることです。ですがデメリットもあります。基礎魔法には基礎魔法でしか合わせることができません」
魔法にはバランスが必要なため、どちらか一方の威力が強すぎると弱い方は消えてしまう。
「...。では上級魔法は上級魔法としかできないのですか?」
「はい。ですので現状シャルロット様ができるのは基礎魔法の複合のみとなります」
「わかりました」
「本当は難しいのですが、シャルロット様ならできると思います」
そこから俺がお手本を見せる。右手にに火玉、左手に風切を唱えて両手をくっつける。すると火玉の周りに小さな風がまとい始めた。それを見てシャルロット様が驚き始めた。
「すごい! 先生って本当にすごいのですね」
「すごくなんてないですよ。なんたってこれは誰にでもできる技術ですので」
「嘘ですよね? だって見たことありませんよ?」
「...。まあ一般的には知られていませんからね」
だって俺が前世で生み出した魔法だから知られているわけない。でももう200年近く経っている以上、使っている人が居るかもしれない。
「ではなんで知っているのですか?」
「それは...」
俺が転生者であることを言うべきか迷った。なんせ転生者がいるなんて聞いたことすらなかった。俺はいわばこの世界で異物である。俺が悩んでいるとシャルロット様は察してくれたのか首を横に振った。
「別に言いたくなければ言わなくて大丈夫ですよ。もし私にお話してもいいと思った時聞かせてください」
「はい。本当に申し訳ございません」
「それで私はどうすればいいのですか?」
「シャルロット様に必要なのは威力調整だと思います」
複合魔法にはいくつか工程がある。まず1つ目は同時に魔法が使える事。2つ目に威力のバランス感覚。そして最後に必要なのは精神力だ。
シャルロット様は複数の魔法を同時に使えるためここはクリアしている。そして精神力はライラ様と戦っている時、怒っていながらも安定して複数の魔法を使えていた。だからここもクリアしている。でも魔法の威力調整は話が別だ。できる人なら1時間もあればでできるが、できない人は1週間程かかってしまう。
「威力調整ですか」
「はい。時間をかければ誰にでも習得できる技術ですが、今日身に付けるとしたら才能が必要になります」
「才能...」
俺がそう言うとシャルロット様は不安そうな顔になった。そりゃあそうだ。なんせ今まで魔法の才能がないとずっと言われてきていたのを考えれば不安になるのだって当然のこと。
「ですがシャルロット様はできると思います」
「なんでですか?」
「まあこれは私個人の意見ですが、シャルロット様はリミッター解除できましたよね? 解除ができたってことは今までより魔力量も増えていますが、それ以上にスムーズに魔法が使えるようになっています」
「はい。それはわかっています」
「スムーズに使えているということは魔法が安定していると考えられます。魔法を使うスピードが速くなっているのはシャルロット様にとって魔法が身近になり始めているということです」
「...」
実感がなさそうだな。でも魔法のスピードが徐々に速くなっているのは魔素を魔法に変換するのが慣れてきたということ。何に関しても魔素を魔法に換えるのは基礎中の基礎である。だから威力調整するにしてもこの工程は必要である。だからこそ俺はシャルロット様ならできると思った。
「では先程私がやったようにしてみてください」
「はい」
思った通り筋がいい。平然と複数の魔法を使っているが、普通は同時に使うと魔素の乱れなどが起きる。だけどシャルロット様にはそれが起きていない。
(これならいけるぞ)
そう思いながら30分ほど練習をすると俺がやったように複合魔法が完成していた。
「先生! やりましたよ!」
「はい! おめでとうございます」
「これで私も複合魔法が使えるということですよね?」
「はい。ですが属性ごとに魔法のコントロールは違いますので今後頑張っていきましょう。ですがこれで明日の決闘で最低限火と風の複合魔法は使えますね」
「はい! なんか勝てる気がしてきました」
「私もそう思いますよ。もう少し練習したいところですが、時間も時間ですし休みましょうか」
パーティがあったのがお昼過ぎであったため、もう日が落ちかけていた。
「わかりました」
そして決闘する日になった。
0
お気に入りに追加
47
あなたにおすすめの小説
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
放逐された転生貴族は、自由にやらせてもらいます
長尾 隆生
ファンタジー
旧題:放逐された転生貴族は冒険者として生きることにしました
★第2回次世代ファンタジーカップ『痛快大逆転賞』受賞★
★現在三巻まで絶賛発売中!★
「穀潰しをこのまま養う気は無い。お前には家名も名乗らせるつもりはない。とっとと出て行け!」
苦労の末、突然死の果てに異世界の貴族家に転生した山崎翔亜は、そこでも危険な辺境へ幼くして送られてしまう。それから十年。久しぶりに会った兄に貴族家を放逐されたトーアだったが、十年間の命をかけた修行によって誰にも負けない最強の力を手に入れていた。
トーアは貴族家に自分から三行半を突きつけると憧れの冒険者になるためギルドへ向かう。しかしそこで待ち受けていたのはギルドに潜む暗殺者たちだった。かるく暗殺者を一蹴したトーアは、その裏事情を知り更に貴族社会への失望を覚えることになる。そんな彼の前に冒険者ギルド会員試験の前に出会った少女ニッカが現れ、成り行きで彼女の親友を助けに新しく発見されたというダンジョンに向かうことになったのだが――
俺に暗殺者なんて送っても意味ないよ?
※22/02/21 ファンタジーランキング1位 HOTランキング1位 ありがとうございます!
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
伯爵令嬢に婚約破棄されたので、人間やめました
えながゆうき
ファンタジー
うー、ダイエット、ダイエットー!
子爵家の庭を必死に走っている俺は、丸々太った、豚のような子爵令息のテオドール十五歳。つい先日、婚約者の伯爵令嬢にフラれたばっかりの、胸に大きな傷を負った漆黒の堕天使さ。髪はブロンド、瞳はブルーだけど。
貴族としてあるまじき醜態はすぐに社交界に広がり、お茶会に参加しても、いつも俺についてのヒソヒソ話をされて後ろからバッサリだ。どっちも、どっちも!
そんなわけで、俺は少しでも痩せるために庭を毎日走っている。でも、全然痩せないんだよね、何でだろう?
そんなことを考えながら走っていると、庭の片隅に見慣れない黒い猫が。
うは、可愛らしい黒猫。
俺がそう思って見つめていると、黒い猫は俺の方へと近づいてきた!
「人間をやめないかい?」
「いいですとも! 俺は人間をやめるぞー!!」
と、その場の空気に飲まれて返事をしたのは良いけれど、もしかして、本気なの!? あ、まずい。あの目は本気でヤる目をしている。
俺は一体どうなってしまうんだー!! それ以前に、この黒い猫は一体何者なんだー!!
え? 守護精霊? あのおとぎ話の? ハハハ、こやつめ。
……え、マジなの!? もしかして俺、本当に人間やめちゃいました!?
え? 魔境の森にドラゴンが現れた? やってみるさ!
え? 娘を嫁にもらってくれ? ずいぶんと地味な子だけど、大丈夫?
え? 元婚約者が別のイケメン男爵令息と婚約した? そう、関係ないね。
え? マンドラゴラが仲間になりたそうな目でこちらを見てる? ノーサンキュー!
え? 魔石が堅くて壊せない? 指先一つで壊してやるよ!
え? イケメン男爵令息が魔族だった? 殺せ!
何でわざわざ俺に相談しに来るんですかねー。俺は嫁とイチャイチャしたいだけなのに。あ、ミケ、もちろんミケともイチャイチャしたいよー?
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる