上 下
5 / 15
1.1 お互いの目標

5話 魔法が使えない理由

しおりを挟む
 明日以降の授業について考えていた。シャルロット様が魔法をうまく使えない理由にいくつか心当たりがある。まず1つ目は魔素をうまく吸収できていないこと。魔法を使う際、魔素を体内に取り込むことが必要だがシャルロット様はそれができていないのかもしれない。2つ目は体質の問題。これも先程とは似て非なるもの。魔素を取り込むことはできるが、体内で魔法に変換することを苦手としていること。これも1つ目と同様に日々の努力で解決できる。



 最後の可能性は考えたくないが、シャルロット様自身にリミッターがかけられているということ。これは運が必要だ。どれだけ努力しようと、プロセスを習得しない限り魔法をスムーズに使いこなすことができない。そしてプロセスと言うのは個人個人で違うため、シャルロット様がどのような条件になっているかはわからない。



 どのようにしてリミッターがかけられるか。それは自分自身の魔力を制御しきれないから無意識に制御をかけてしまっている。だから何かしらのきっかけが必要となる。



(まあ明日すべての可能性を考えて試してみるか...)



 するとフィクルさん経由で食事に招待されたので、ダイニングルームへ移動する。中に入るとすでにハイーラ様とシャルロット様が待っていた。



(あれ? 奥様は?)



 そう思いながら椅子に座らせてもらう。



「本日は食事の招待ありがとうございます」



「いいよ。それに今日からヘンリーくんも一緒に食事をとってもらう予定だしね」



「え? あ、失礼しました」



「まあ驚くのも仕方がない。なんたって普通は一緒に食事をとるなんてことがないからね」



「はい...」



 公爵家で働いていた時は一緒に食事をとったことがなかったから、一緒に食事をとろうと言われた時は何かミスでもしたのかと思ったけど、今の内容的にそうじゃなさそうだしよかった。俺が疑問そうな顔をしているとハイーラ様が答えてくれる。



「どうしてもシャルが一緒に食事をしたいと言ってきてね」



「お父様! 言わない約束じゃないですか!」



「まあまあ。言って損はないじゃないか」



「...」



 シャルロット様の顔がみるみる赤くなるのが分かる。そこから少し会話をしながら食事をしていると、ハイーラ様が真剣な顔をしながら尋ねてきた。



「それでだけど、本当によかったのか? はっきり言って私たちの家は落ちこぼれている。それなのに3年と言う長い期間契約をして」



「はい。大丈夫です。それに私が決めたことなので後悔はありません」



 こう言っているが、はっきり言ってもっと他の場所で働いてもよかったという気持ちも少しはある。だけどシャルロット様を助けたいと思っているし後悔は無い。



「そうか。なら明日から宜しく頼むよ」



「はい」



 食事が終わり風呂場を借りた後、部屋に戻ってすぐさま就寝してしまった。



 次の日、部屋の扉が叩かれる音がした。



(何だ?)



 そう思いながら扉を開けるとそこにはシャルロット様が待っていた。



「あ、ごめんなさい。早く来すぎてしまいましたね。また少し時間をおいてから来ますね...」



「いえ、すぐ支度をしますので、すこしだけお時間をいただけますか?」



 昨日俺が時間を指定しなかったミスだ。それにここまで意欲が高いのに断るなんて教師としてやってはいけない。



「はい。では待っていますね」



 部屋を閉じで数分で支度をして、部屋を出て外に行く。



「また外なのですか?」



「まず最初にシャルロット様がなぜ魔法をうまく使えないのか知るためですよ」



 すると驚いた顔でこちらを見ながら



「え! そんなことができるのですか?」



「はい。今からやり方を説明しますね」



「お願いします」



 楽な態勢をとって魔眼を開眼させる。



(本当は見せたくなかったが、致し方ない)



 一般的に魔眼とは魔族が持っているものだから、人間が持っていると嫌われる存在になってしまう。一応は魔法書によれば魔眼はある一定の素質を持っている人物が所持していることになっているから、魔族とは全く無関係ということになっている。



「え? 先生は魔眼を持っていらっしゃるのですか?」



「はい。いや、ですよね...」



「いえ、私のために使っていただいているのは分かります。それなのに拒絶するなんて失礼ですし、私は先生を信じていますので大丈夫です」



 信じている...。まだ会って日が浅いのにここまで言ってくれている。それに俺は少し嬉しさを感じる。



「ではなんでもいいので魔法を使ってみてください」



「はい...」



 1分ほど待つと片手に小さな火が出てきたのが分かる。



 魔法を使ってもらう際、魔素はうまく体内に取り込むことはできていたし、循環もしていた。魔素を吸う際、何も問題はなかったし循環もできていた。



(...)



「わかりましたよ」



「え? そんなに早く分かるものなのですか?」



「はい。体質などの問題はありません。シャルロット様自身に制限をかけてしまっていることが、魔法をうまく使えない理由です」



 一番最悪なパターンだ。他の場合なら2週間で確実に使いこなせると思っていたが、やはりリミッターをかけていたか...。



 こうなったらやれるだけやってみるしかない...。逆に言えば魔法の才能があるから、ここさえ乗り切ればシャルロット様は俺が知る中で最強の魔法使いになれるかもしれない。



 そう思うだけで嬉しくも感じてきた。



(この子は最強になれるかもしれない)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

処理中です...