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1.1 お互いの目標
4話 周りを見返すために
しおりを挟む第一印象は完璧だな。
「これが基礎魔法です」
「なんで同時に魔法が使えるのですか? 私にもできるようになりますか?」
「はい。これは誰にでもできる技術ですので」
すると嬉しそうな顔をした。そこでボソッとシャルロット様が言う。
「これでみんなを見返せる」
「では教えてください!」
「それは明日からです。まずは方向性を見せるのが今日の目的でしたので。でもこれでシャルロット様も少しは希望を持てましたか?」
「でも...」
納得してくれないか...。今のシャルロット様は急いでいる気がする。まあそれはしょうがない。学校が始まるまで残り2週間ほど。それまでに魔法を使えるようになることと、実戦でも使えるようになることが俺にとっての目標だ。
「では今日はシャルロット様と私で目標を決めましょう」
「目標?」
「はい。最初にあった時にも聞きましたがなぜ魔法を使えるようになりたいのですか?」
「それは家を継ぐためです」
「でしたらすぐ魔法は覚えなくていいのでは? ゆっくり時間をかけて魔法を覚えればいいと思います。ですが今のシャルロット様は何か急いでいる気がします。それはなぜですか?」
突っ込んでいる質問だとわかっている。でもここが分からない以上目標は立てられない。
「そ、それは...。みんなを見返したいからです...」
やっぱりか。誰だってバカにされたり、見放されたら見返したいと思うのは当然だ。だったらその気持ちを原動力にすればいい。
「そう。それです!」
「え?」
「不躾ではございますが、この前の一件を見てシャルロット様はクラスメイトから見下されているように見られました」
「...」
「だったらその人たちを見返したい。そう思うのは当然です。まずはそこを目標にしたらどうですか? 魔法を使えるのは通過点として、その先にあるのを目標としましょう」
明確な目標がある方が上達もしやすい。だからこそ俺はさっき魔法を見せて希望を持たせたんだ。「私でもやれる」、そう思わせるために。なんたって俺は基礎魔法しか使えない。そんな奴ですら使えるのだからシャルロット様ができないわけがない。
「でもまだ私は魔法もうまく使えませんし」
「でも魔法を使えるって言えば使えますよね?」
「うん」
「でしたら問題ありません」
「なんで?」
疑問そうな顔で尋ねてきた。
「まず魔法とは使える人と使えない人で別れます。ここが一番重要で、もし使えなかったら使えるようにするのははっきり言って無理に等しいです。ですがシャルロット様は魔法を使えると言いましたよね。でしたらそこからは魔法云々ではなく、技術の問題だと思っています」
「...。私に技術がないってこと?」
「簡潔に言ってしまえばそうなりますが、人それぞれには吸収する速度と言うのもあります。ですので今まで学んできたことがすべて無意味だったというわけではありません。シャルロット様は人より少しばかし覚えるのが遅いというだけで、きちんと才能はありますよ」
「そっか...」
「はい。では今日のおさらいです。誰であろうと魔法は同時に使うことが可能である。そして目標はクラスメイト達を見返すということでよろしいですか?」
「うん!」
「そしたら明日からよろしくお願いいたします」
今日の簡単な授業を終わせて部屋に戻った。
この時の俺はシャルロット様の才能に気付くことすらできなかった。
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