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1.1 お互いの目標
3話 初めての授業
しおりを挟む2日後に契約書が渡された。内容はここからおよそ3年間シャルロット様の家庭教師をすること。結果が出なければクビも考えると...。
(3年か...)
普通なら数ヶ月から1年程の短期間が多いのに対して、リークレット家は約3年と言う長い期間で契約を申し込んでくれた。それがどういう意味かを理解しなくちゃいけない。
「頑張らなくちゃだな」
契約書にサインした後、オーリスさんへ挨拶をして男爵家に向かった。家庭教師をするため、男爵家で住み込みになる。3日ほど馬車に乗って男爵家に到着した。家の大きさからして裕福な商人の家とあまり変わらない。まあ男爵家としてはそれぐらいが普通なのかもしれない。
門の前で警備の人に身分証明書を見せて中に入らさせてもらう。そして執事---フィクルさんに案内してもらい、ハイーラ様の部屋に前に着いた。執事の人とともに中に入らさせてもらい挨拶をする。
「失礼します。ヘンリー・ラビット。ただいまリークレット家に到着いたしました」
「あぁ。ヘンリーくん、今日から宜しくね」
「はい。よろしくお願いいたします」
「それとシャルから話は聞いている。すでに一度会っているんだよね?」
「はい」
シャルロット様が話した予想は着いていた。そうじゃなければ長期間の契約を持ち出されないだろう。
「ではフィクルに部屋の案内をしてもらってからシャルに会ってもらい、明日から魔法について教えてやってほしい」
「わかりました」
ハイーラ様の部屋を出てまず部屋に案内してもらった。
(思ってたより広いな)
予想では宿屋ぐらいの大きさだと思っていたが、それより少しばかし大きかったので驚いた。すぐさま荷物を置いて、シャルロット様のもとへ向かう。案内してもらっている最中話しかけられる。
「ヘンリー様は若いですね」
「え? あ、はい。19歳ですので」
「そうですか。その歳で家庭教師とはすごいですね」
「ありがとうございます」
すごいと言われても、アバも家庭教師をしているのだからすごいのかわからない。でも一般的にすごいのかもしれない。すると真剣な顔で頼まれる。
「どうぞシャルロット様をよろしくお願いいたします」
「はい」
俺も助けたいと思っている。そうじゃなければここに来ようと思わない。そしてシャルロット様の部屋の前に着いた。俺はノックをして
「シャルロット様。ヘンリーです。本日からよろしくお願いいたします」
「あ! 来たのね。中に入って」
「はい」
言われるがまま中に入る。フィクルさんは仕事があるためここでお別れをした。
「良かった。来てくれないと思ってた」
「約束しましたからね」
「うん。本当によかった」
それにしても部屋の中がすごい。流石は貴族のお嬢様と言うべきか。ベットが大きいのはライラ様と同じで、その上にぬいぐるみなどが置いてあった。そして机の上には魔法書が何冊も置いてあった。
(やっぱり勉強はしてるんだな)
「それで私は何をすればいいの?」
「そうですね。一応明日から家庭教師を始める予定になっていますが、本日から始めますか?」
「うん! できるだけ早く覚えたいの」
「わかりました。では外に行きましょうか」
外に誘導する。流石に部屋の中で魔法を使うわけにはいかないしな。それにしてもこの前会った時とは違って、少し楽しそうだった。
「ではまず最初に基礎魔法とは何ですか?」
「えっと。人が使える最初の魔法?」
「まあ間違っていませんね。ですがそれは認識の違いです」
「え? そうなの?」
「はい」
誰もが基礎魔法とは最初に使える魔法と思っているがそれは違う。基礎魔法とはどの魔法を使うに対しても基礎魔法を経由しなくちゃいけないから基礎魔法と言われているんだ。
「基礎魔法とは中級魔法、上級魔法、応用魔法などを使う際の基盤になる魔法のことです」
「うん」
「ですので基礎魔法をおろそかにしてしまうと中級魔法以上の魔法を使うことが困難になります」
「うん」
そう言えばライラ様にも最初はこんなふうに説明したな。あの時はちゃんと聞いてくれていたのに...。シャルロット様もそうなってしまうのかな。
「まず最初に私が魔法をお見せしますね」
「お願いします」
「あ、まず最初に言っておきますが、私は基礎魔法しか使えません」
「え? そうなの?」
「はい」
俺が事実を告げてもシャルロット様の反応があまり変わらなくて驚いた。普通基礎魔法しか使えないと言われたら誰だって変な眼で見てくる。それなのに俺のことより魔法のことしか頭に無い様だった。
(本当にすごいな)
だったらそれに答えるのが教師としての役目だよな。
「まず最初に指先に各属性の魔法を出します」
俺は火、水、風、土、光の全属性を出すと、驚いた顔で俺を見てきた。
「え! すごい! 普通同時に魔法を複数出すことが出来ないのに...」
この子になら俺の魔法を教えてもいいのかもしれないと思った。
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