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四章 騎双学園決戦

第131話 臨戦

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 意外にも騎双学園の中央区近くに、天使の出現の兆候である罅があった。
 中央区ビルの地下、転移でミステリアス不法侵入をした俺達は、罅を前にしている。

「これが、天使のいる場所の目印なの?」
「そうよ。奴らはダンジョン主のように世界に浸食してくる。これはその兆候」

 って、原作で言ってました。

「今から倒すんだね……私達が」
「ふふっ緊張しちゃって、可愛い子ね」

 震える手をそっと両手で包む。
 クラムちゃんは、驚いたようにこちらを見た。

「大丈夫よ、私も一緒だから」
 
 決まった……!
 ミステリアス美少女ポイント獲得!

『結局ソルシエラに頼ってしまう自分に嫌気がさすクラムちゃん概念、ありです』

 ソルシエラの助けになりたいのに、彼女が強すぎるあまり助けるどころか助けられるクラムちゃんは可愛いねぇ。
 でもね、俺ってばミステリアス美少女だからさ。
 助けられるわけにはいかねえのよ。助けられたらさ、その時点でヒロインになっちゃうから。

「それじゃあ、行きましょうか」

 俺は罅へと手をかざす。

 星詠みの杖君!

『任せたまえよ』

 罅が広がり、やがて俺達の前でボロボロと目の前の景色が崩れ始める。
 トリックアートのような光景を興味深そうに見ているクラムちゃんの前で、俺はクールに手を横薙ぎに振るった。

『はいよっ! 爆風ッ!』

 まるで無理矢理空間をこじ開けたが故に辺りに吹き荒れたかのような風。
 意味はないが、やはり要所要所で風が吹いたほうがミステリアス美少女っぽいからね。

 クラムちゃんは、風に思わず目を閉じそうになるも警戒してマーちゃんズを召喚していた。

「……っ!」

 凄いね。
 マジで戦う気満々じゃん。相手天使なのに。
 いや、相性の上では、クラムちゃんは今回の天使には最適か。

「期待しているわよ、
「っ、もうその名前で呼ばないでよ。あれ、結構恥ずかしかったんだから」
「そう? 私は好きよ、あの姿の貴女も」
「……そ、そうなんだ」

 ははは、見たまえ星詠みの杖君。
 美少女の照れる姿はいいねぇ。
 ご飯がすすむねぇ!

『おかわりっ!』

 俺はクラムちゃんの手を引いて、こじ開けた空間へと足を踏みいれる。
 天使をぶっ殺すぞー^^

『わぁい^^』


 








 天使を相手にする時に気をつける事は単純である。

 見敵必殺、これだ。

 奴らはどいつもこいつも強い、というかズルい。
 なので、相手が何かする前に殺すのがベストであるし、当然一度戦ったら逃してはならない。

 だから、目をよーく凝らして探しましょうね。

「……気味が悪い場所だね」

 クラムちゃんが、辺りを見渡しながらそう言った。

 赤い空に、ひび割れた大地。
 草木一本生えてないどころか、生き物の気配すらないここが天使の住処である。
 まあ、大元がダンジョンコアと同じとかいろいろとあるのだが別に覚える価値もないだろう。

 大切なのは、強い奴って事だ。
 まあ、熾天使セラフィムとか智天使ケルビムレベルじゃなかったら俺一人で余裕なんですけどね!

『は? 熾天使でも余裕だが? デモンズギアなめんな』

 頼もしい限りである。
 が、それだと物語が変わっちゃうからね。

 鏡界のルトラじゃなくて、星詠のソルシエラになっちゃうから。
 あくまでそういった強い天使を倒すのはトウラク君たちの役目だよ。

 頑張れトウラク君。
 ラスボスまでは、六回クソつよ天使と戦う必要があるぞ!

 このミステリアス美少女がサポートしてあげるからねぇ^^

 さあ、星詠みの杖君、天使を探すんだ。
 今回は、トウラク君に「天使ってこういうのなんだよ」って死体を見せる必要がある。

 そうして天使の存在を提示しつつも、それを狩ることが可能なミステリアス美少女ソルシエラを演出するんだ!

『それソルシエラが負けた時に相手の強さに絶望するシーンがあるだろ。私は詳しいんだ』

 そうです、わかってるね。
 いつか、俺は負けなければならないだろう。

 そこらの中ボスに負けるのはムカつくので、ラスボスとか、その一歩手前くらいでボロボロになりたいね。

『自分から負けに行くのか……』

 星詠みの杖君、この世界に古くから伝わる良き教えを君に授けよう。

――負けるのは、気持ち良い♥

『ヒェッ』

 怯えるな、若人よ。
 人はいつか必ず負けるもの。
 盛者必衰の理は、ソルシエラにも必ず訪れる。

 ならば、その時が来たらよりミステリアスに、美しく、そして気持ちよく散るのが美少女ってもんじゃないのか。

『成程、散り際も美しく。少しだけ分かった気がするよ』

 まあ当分負けるつもりはないんですけどねワハハ。
 ソルシエラってば強くてミステリアスだからさ。

 今回の天使も余裕だよ。
 というか、クラムちゃんでいけるわよ!

『流石にクラムじゃ無理だろう。仮にも天使だぞ。しかもこの世界に介入できるなら最低でも主天使クラスだ』

 今回の天使は鳥の化物を召喚するだけの雑魚だよ(ネタバレ)

 いっぱい出して、数で押すだけの無能天使。
 原作では、六波羅さんに召喚した奴含め全員纏めて殺された。

 それ以外の特殊能力がないので、マジでチュートリアルみたいな奴である。
 なんなら読者の間では、理事長がチュートリアルで呼んだ説すらある程だ。

 ちなみに本体は目と人の腕で出来た鳥の巣だから、見つけ次第破壊しようね。
 安易なグロはご法度だからね♥

『破壊するー^^』

 雑魚はマーちゃんズに任せて、本体は俺が破壊。
 これが美少女のコンビネーションだよ。

『そして戦いで火照った体をクラムは――』

 君、最近本当に良くないよ。
 すぐそっちに持っていくのは駄目だって。

 節度を保つことで、その時が来たらより映えるんだから。

「……ソルシエラ、アレを見て」

 クラムちゃんが何かを見つけたようで、俺を呼ぶ。
 彼女の指さす方を見れば、白っぽい化物がいた。

 ブヨブヨとした皮膚で覆われた巨大な鹿のような怪物。
 ……ん!?!?!?!

 何コイツ!?!?!?!

『あ、智天使級だ』

 クソつよ天使じゃねえか!

 老婆の指をいくつも束ねたような角が、随分と目を引く。
 その天使は、俺達とほぼ同時にこちらに気が付いたようでゆっくりと首を動かした。

 え、鳥は?
 雑魚の鳥をいっぱい殺して、羽の舞う中で狂気的に笑うソルシエラのスチルは!?

『未実装です』

 無能運営。

 ……いや待てよ、なんかこの天使を俺は知っている気がするぞ?

「あれを殺せばいいんだね、マーちゃんズ、スタンバイ」

 火力で押し切る気満々のクラムちゃんを見ながら、俺は考える。
 そして思い出した。

 ……アレ、六体のクソヤバ天使の一体やん。

「っ、待ちなさ――」
「いけ、マーちゃんズ!」

 止めたがもう遅い。
 蛙は天使へと向かっていくと、その四肢に張り付いて次々と爆発していく。

『やったか!?』

 やってないです。
 
 とか言ってる場合じゃねえぞ、来るぞ!

「クラム、こっちに!」
「え?」

 俺はクラムちゃんの手を引っ張り抱き寄せる。
 そして、カッコよく魔法陣を展開した。

 星詠みの杖君、周囲の音をシャットアウトしてくれ。

『楽勝だねぇ^^』

 半球状に展開された音を遮断するシールド。
 その中でクラムちゃんを抱きしめながら、俺は天使を睨む。
 
 厄災と呼ばれる六つの滅びと、やがて来る終焉。

 その始まり、第二の滅び。
 それは、悪意を持った生物に対して有効な死の音である。
 攻撃をすれば、カウンターで即死効果の音が角より発せられるのだ。

 ちなみに、これで初見のミハヤちゃんが一回死ぬ。
 でもシヤクによって蘇るので安心してね^^

 その後で相手に確定で致命傷を与える能力に覚醒するので、実質ミハヤちゃん回のボスでもあるのだ。
 一番最初のボスで影も薄いから忘れていた。
 しかし、これが世界を終わらせることが可能な天使の一体であることに変わりはない。

 それが今目の前にいる。
 ギャー!
 原作が壊れるー!

『あの、死の音の心配とかは……?』

 あ? んなの大した攻撃じゃないだろ。
 大丈夫大丈夫。仮に俺の心臓が止まっても、君が動かすでしょ。

『それはそうだけど……え、死が怖くないのか?』

 こちとら一度死んでるしなぁ。

 というか、俺よりも大事なのはクラムちゃんだよ。
 クラムちゃんと抱きしめ合っているこの状況。
 音もない空間で、俺に何ができるか。

 そう、ミステリアス美少女だね!

「――」

 俺は不安そうなクラムちゃんの頭を撫でて、そのままさらに抱き寄せる。
 そして、お互いの額を合わせた。

 星詠みの杖君、テレパシーを繋ぐんだ!
 脳内で会話をするぞ!

『これ実質セ〇クス! 実質セッ〇ス!』

 そこまでじゃないだろ。
 でも確かに美少女とのおでこ合わせは昂るものがあるな。
 やべぇ、興奮で震えてきたぜ。

『美少女同士が頭をくっつける絵は万病に効く!』

 わかったから早くやってくれ。

『勿論だとも^^』

 そうして俺は、クラムちゃんとの濃密なテレパシーを始めた。
 
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