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二章 蒼星の少女
第51話 買い物と見識
しおりを挟む騎双学園自治区で行動する時の注意点!
一つ! むやみに動き回らない事!
最悪、路地裏に連れ込まれて人体実験にドナドナされます。
もしも連れ込まれたら全力で風紀委員会を呼びましょう。
二つ! 目立たない事!
騎双学園には目をつけられたらヤバイ組織とヤバイ奴が数えきれないほどにいます。
背景に徹しましょう。
三つ! 問題行動を起こさない事!
騎双学園は他校の生徒が問題を起こせば、それを大事にして戦争をふっかけて来ます。
自分の学校にも迷惑が掛かるので問題行動は控えましょう。
『もう行くなよそんな場所』
行かねば手に入らない衣装がある。
それだけだ。
というわけで、俺は今騎双学園の自治区に来ていた。
それも中央区であり観光客向け商業区と隣接しているため、人の往来が激しい。
生徒たちだけでなく、如何にも外から来たという姿の人々もよく見る。
この辺りは、人攫いもないし比較的安全ではあった。
まあ、俺の場合は六波羅さんに見つかったらどうなっても終わるんだけどね。
それでも騎双学園自治区に来たのは、ここにしか戦闘でも使えるゴスロリ衣装が無いからだ。
この手の衣装は熱戦や弾丸に耐える仕様ではない物が多い。
そんな物を着て、世のゴスロリ衣装持ちは大丈夫なのだろうか。
安全面とか、気にした方がよいと思う。
『ゴスロリに安全とか必要ないんだけどねぇ』
嘘だぁ。
だって、俺ミステリアス美少女になってから結構な数を戦ってるよ?
普通のゴスロリだったら、破けちゃうよ。
そしたらミステリアス美少女のコンセプト変わっちゃうって。
R指定付いちゃうって。
『少し前に牙塔トウラク相手に散々そういう事しただろ、君』
知らねえ。
忘れちまったな、そんな昔の事。
さ、お買い物よ~^^
『わぁい^^』
商業区と中央区を跨ぐ形で存在するクソデカビルに俺は足を運んでいた。
ここの十一階に良い衣装をそろえた店があるのだ。
開放的なデザインのなされた窓の外は、このビルと同等以上のクソデカビルが多く立ち並んでいる。
あれで本校舎じゃないとか、資本どうなってんだ。
ただここからだと、ビルそれぞれがどの役割なのかわからないな……。
原作を見る分には、毎回注釈入れてくれていたから分かったけど、傍から見ると一緒だぞこれ。
『んー、右の尖ったビル。なんかあるねぇ。これは……なんだろう。ここからだとよくわからない。行ってみるかい?』
俺の話を聞いてた?
問題行動起こすなって言ってんの。
君の行くってソルシエラで突っ込むってことでしょ?
絶対やだよ。
『そうかぁ。私の妹の気配がしたんだけどねぇ』
じゃあ、エイナじゃねえか!?
絶対、駄目だからね!
『いや、それとは違う気が……うーん?』
そんな気配は放っておきなさい。
俺達はあくまでミステリアス美少女がしたいだけわよ。
厄ネタを回避するスタイルは変わらないわよ。
さ、お店わよ!
見るわよ!
『わよわよ、うるさいねぇ』
今の俺はスーパーミステリアス美少女タイム中なので性別は女、つまりはこういう店でも堂々と入ることが出来るのだ。
男装している美少女です。こんにちは!
俺は衣装の揃った店へと足を踏みいれた。
その瞬間、圧倒される。
これは……凄い。
そもそも店自体が全体的にゴシックな雰囲気で纏まっている。
衣装の他に、アクセサリーや香水なんかもある。
この香水凄いぞ。
爆風を喰らっても匂いが消し飛ばない仕様になってる!
こっちのアクセサリーは魔力に反応して光る特殊な石を使ったペンダントだって!
すげぇ……ミステリアスが、ミステリアスがいっぱいだ。
『君のミステリアス美少女に合いそうな物が多くて良かったじゃないか。どうだい、ここで一つ意味深なペンダントでも買ってみるのは』
いいねぇ。
えー、じゃあ衣装に合わせるペンダントも後で買おうね。
後に、ダブルミステリアス美少女するときにお揃っちにしよ♥
『色は反転していると関係性に深みが出そうだねぇ。金と銀じゃソルシエラには少し主張が強すぎるから、白と黒が無難な所か』
流石だ相棒わかってるぜ。
『当然だ。この私のラーニング能力を舐めないで貰いたい。それはそれとして、ダブルミステリアス美少女って何? そんな目途があるの……?』
急に不安そうにするなよ。
大丈夫大丈夫!
そういう不思議な事は大抵どうにかなるのが学園都市だから。
ミステリアス美少女が二人に成るくらいは普通にできるよ。
そして、二人で共依存ズブズブの百合をしようね♥
『まだその領域は私には早いねぇ』
二人でキャッキャウフフしながら、衣装を吟味する。
あ、この衣装とか可愛いけど暗さもあって良いかも。
『ふむ、中々に私の好みだ。欲を言えば、もう少しスカートの丈が短いといいねぇ』
えー、ミステリアス美少女が丈を短くするの?
『ああ。そして、風で捲れてしまった時も無表情で「どうかしたの?」って言って、男子の性癖を破壊したいねぇ。パンチラに対して無反応なミステリアス美少女、いいじゃないか。それで、意識しているのは自分だけなんだと恥ずかしくなっている男子をからかいたい』
君、それ何処から拾ってきた知識?
俺以外の脳からラーニングしてない?
『君の行動と思考に基づくアンサーだよ』
そっかぁ。
言われてみれば確かにいいかもなぁ……。
じゃあ、トウラク君の前でパンチラする奴を今度やろうか。
『風は任せたまえ。そうなると、下着もうんと気合を入れなきゃねぇ』
いや、気合を入れすぎると露骨だ。
だからその辺は、普通の少女でありたい。
ミステリアス美少女の中に僅かに残った少女らしさが、素晴らしいアクセントになるんだよ。
『勉強になるねぇ』
こっちこそ。
君と話していると見識が深まってより美少女の高みを目指せそうだよ。
お、あっちの蒼い衣装とかも良さそう~。
「――ソルシエラ?」
俺は動きを停止する。
なんか、呼ばれちゃ駄目な名前で呼ばれた気がするんだけど。
『私の探知に引っ掛かっていないから、妹ではないねぇ』
星詠みの杖の声を聞きながら、俺はそっと振り返る。
と、そこには金髪に紫メッシュの少女がいた。
見覚えのある姿に、俺は名前を呼ぶ。
「浄化ちゃん……?」
どうしよう、今もの凄く嫌な予感がしているんだけど!
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