4 / 4
第4話 刺客
しおりを挟む
「ユキは物凄く強そうだけど、まさか冒険者パーティーにやられたの?」
ユキと出会った時に大怪我を負っていた理由を聞いた。
「それを話すには、我の生い立ちから話さねばならぬ」
「じゃあ、ワインでも淹れてあげるよ」
翼はワインと簡単に出来るクラッカーにチーズ、サラミをのせたつまみを出した。
ユキはキマイラの王様の息子で、白い神獣として生まれた。
けれどキマイラは、頭がライオン、鷲の翼と蛇の尾を持つ種族。
白いライオンの姿をした王の息子を誰も認めなかった。
年老いた王が亡くなりユキが引き継ぎ王になった日に反乱が起きた。
ユキを認めない勢力の反逆だった。
ユキは王の座を降りると言ったが、力を示したい若いキマイラが襲い掛かってきた。
他のキマイラよりも圧倒的な力を持つユキは、仲間と戦う事を選ばず無抵抗で大怪我を負った。
キマイラの王国が出来た頃の神託に、白いキマイラは別の姿で生まれてくる。
その者は神獣であり、全ての魔物の王である。
最初からキマイラの住み処は、ユキの居場所ではなかったのだろう。
「そっか、ステータスに神獣って出てたもんな。でもキマイラより圧倒的に強いってさすがだな」
翼はユキの美しい鬣を撫でた。
「ユキちゃんきれい」
そしてリーフはまるで今の話が理解出来たかのように、ユキに寄り添った。
「うむ、もっとワインをくれ」
「いける口だな」
翼はワインを並々と注いでやった。
ユキは2人との生活も悪くないと思っていた。
「こっちの方向に真っ直ぐ行くと、どんな街があるんだ?」
翼は歩きながらユキに話しかけた。
「今歩いている方向には砂漠だな」
「砂漠?街は?」
「砂漠を越えればサンドラ王国があるが、歩いていくのは厳しいぞ」
「じゃあ、どうしてこっちに歩いて行くんだよ」
「我は知らん。そちの行くところに付いて行ってるだけだ」
はあっ、そうだ。
ユキが悪い訳じゃない。
でも、砂漠に行くわけないだろ。
この無駄飯食いめ。
「今、我の悪口を言ったな」
「何も言ってないだろ」
「ないない」
リーフが2人の様子を心配そうに見上げていた。
「何でもないぞ。それで一番近い街は、どっちなの?」
「一番近いのは山の麓の村だが、その山がキマイラの砦だ」
「それって近付いたらヤバいやつじゃない」
「うむ」
「じゃあ、次に近いのは?」
「このまま歩いて砂漠に出たら我の背中に乗ってひとっ飛びするか」
ゴクリ、ひとっ飛びって単語が恐い。
「するか?」
「反対方向に歩いてエリュシオン王国に向かうか、東、左側に向かってマケドニヴァだな」
「つまり、どこも近くないんだな。キマイラの山の麓以外」
リーフがピョンピョン跳んで歩き回る。
ザッ
頭上からデカイ魔物が、リーフ目掛けて飛んできた。
「いたいの」
リーフの頭の葉っぱが魔物の足に踏みにじられていた。
「おっと、踏みつけるつもりが逃げやがったな」
「リーフおいで」
翼はリーフに駆け寄り両手を広げた。
リーフはすぐさま翼の胸に飛び込んできた。
「翼、我の後ろの木に隠れていろ」
「分かった」
「やっと見付けたぞ。死体がなかったから、逃げ隠れしてると思ったぞ」
「我がお前のような小物に本当にやられたと思ったのか」
ユキが全身の毛を逆立てていた。
「お前の死骸を皆の前に運んで、俺が王になってやる」
ガハハハっ
茶色いキマイラがユキに襲い掛かった。
ユキは襲い来るキマイラの翼を片腕で引き裂くと、首根っこに噛み付いた。
「ぎゃあああっ離せ」
「グシュッ」
ユキは片足でキマイラの頭を地面に押さえ付けて踏み潰した。
見比べてみれば瞭然で、キマイラはユキよりも小さかった。
「終わったぞ」
「ユキちゃん葉っぱいる」
「リーフよ、大丈夫であったか?」
「いたいしたの」
「リーフ、よく頑張ったもんな」
翼は腕の中のリーフを撫でた。
「ステータスオープン」
【名前 ユキ
【HP 6020/6500
【MP 4350/5000
【スキル 神獣
【種族 キマイラ
「ユキさんや、HPもMPも減ってないのですが」
「我があんな小物にやられる訳がない」
「そいつは、反乱の首謀者じゃないの?」
「おおっ、そう言えばこいつが我に噛み付いて来た奴だ」
「だったらこいつを持って、キマイラの砦に向かおう」
「何じゃ?」
「反乱って言う位だから、これからも刺客が突然襲い掛かってくるんじゃないのか」
「我が返り討ちにしてくれる」
「こいつらが、お前の相手にならないのは分かったよ」
翼の声が怒りで低くなっていた。
「でも一歩間違えていたら、リーフは踏み潰されていたんだぞ」
「すまぬ」
デカイユキが背中をすぼめて小さくなっていた。
「ユキが悪いわけじゃないのは分かっている。でも一緒に旅をするなら片をつけよう」
「うむ」
「先程落とされたリーフの葉っぱを拾って、持っていこう」
翼はキマイラに踏みつけられたリーフの葉っぱを拾った。
「そう言えば麓の村の人が自衛団を組んでキマイラを退治したり、その逆とかはないのか?」
「村とキマイラの王国は持ちつ持たれつで、長いこと共存してきた」
「へぇ、魔物と人が共存か」
「おかしいか?」
「いや、ユキのお父さんは良い王様だったんだなと思ってさ」
つまり、バッグにキマイラの王国が付いていれば村は他国に襲われないのだろう。
そしてキマイラの王国も村を襲わない事で、見逃されているのかもしれない。
共存共栄か。
「ごはん」
リーフはお腹が空いたらしい。
「ユキ、村はまだ遠いのかな?だったら、ここで飯にしよう」
「いや、あの先に見えて来たぞ」
100M先に森の出口が見えて、さらにその先に山と村が見えてきた。
「もうすぐ着くから、村で食べるか食料を調達しようか」
「何かおかしいぞ」
ユキが目と耳をそばだてている。
「キマイラ達に村が襲われている」
「そんな┅┅ユキ、同族と戦えるか?」
「無論だ」
「助けに行こう」
「では、我の背に乗れ。リーフを落とすなよ」
「おちないもん」
リーフが自分でユキの背中に飛び乗ろうとして、背中を越えて反対側に落ちそうになる。
ユキが頭でリーフを拾い上げて翼に渡す。
翼はリーフを抱えて、ユキに股がった。
「リーフ、2本の腕をビューンって出して、ユキの背中の毛をギュッて掴んでね」
「ビューン、ギュッする」
リーフはユキの背中で腕を2本出して、毛をギュッと掴んだ。
「待たせたな。行くぞ」
果たして村人は生き残っているのか。
ユキと出会った時に大怪我を負っていた理由を聞いた。
「それを話すには、我の生い立ちから話さねばならぬ」
「じゃあ、ワインでも淹れてあげるよ」
翼はワインと簡単に出来るクラッカーにチーズ、サラミをのせたつまみを出した。
ユキはキマイラの王様の息子で、白い神獣として生まれた。
けれどキマイラは、頭がライオン、鷲の翼と蛇の尾を持つ種族。
白いライオンの姿をした王の息子を誰も認めなかった。
年老いた王が亡くなりユキが引き継ぎ王になった日に反乱が起きた。
ユキを認めない勢力の反逆だった。
ユキは王の座を降りると言ったが、力を示したい若いキマイラが襲い掛かってきた。
他のキマイラよりも圧倒的な力を持つユキは、仲間と戦う事を選ばず無抵抗で大怪我を負った。
キマイラの王国が出来た頃の神託に、白いキマイラは別の姿で生まれてくる。
その者は神獣であり、全ての魔物の王である。
最初からキマイラの住み処は、ユキの居場所ではなかったのだろう。
「そっか、ステータスに神獣って出てたもんな。でもキマイラより圧倒的に強いってさすがだな」
翼はユキの美しい鬣を撫でた。
「ユキちゃんきれい」
そしてリーフはまるで今の話が理解出来たかのように、ユキに寄り添った。
「うむ、もっとワインをくれ」
「いける口だな」
翼はワインを並々と注いでやった。
ユキは2人との生活も悪くないと思っていた。
「こっちの方向に真っ直ぐ行くと、どんな街があるんだ?」
翼は歩きながらユキに話しかけた。
「今歩いている方向には砂漠だな」
「砂漠?街は?」
「砂漠を越えればサンドラ王国があるが、歩いていくのは厳しいぞ」
「じゃあ、どうしてこっちに歩いて行くんだよ」
「我は知らん。そちの行くところに付いて行ってるだけだ」
はあっ、そうだ。
ユキが悪い訳じゃない。
でも、砂漠に行くわけないだろ。
この無駄飯食いめ。
「今、我の悪口を言ったな」
「何も言ってないだろ」
「ないない」
リーフが2人の様子を心配そうに見上げていた。
「何でもないぞ。それで一番近い街は、どっちなの?」
「一番近いのは山の麓の村だが、その山がキマイラの砦だ」
「それって近付いたらヤバいやつじゃない」
「うむ」
「じゃあ、次に近いのは?」
「このまま歩いて砂漠に出たら我の背中に乗ってひとっ飛びするか」
ゴクリ、ひとっ飛びって単語が恐い。
「するか?」
「反対方向に歩いてエリュシオン王国に向かうか、東、左側に向かってマケドニヴァだな」
「つまり、どこも近くないんだな。キマイラの山の麓以外」
リーフがピョンピョン跳んで歩き回る。
ザッ
頭上からデカイ魔物が、リーフ目掛けて飛んできた。
「いたいの」
リーフの頭の葉っぱが魔物の足に踏みにじられていた。
「おっと、踏みつけるつもりが逃げやがったな」
「リーフおいで」
翼はリーフに駆け寄り両手を広げた。
リーフはすぐさま翼の胸に飛び込んできた。
「翼、我の後ろの木に隠れていろ」
「分かった」
「やっと見付けたぞ。死体がなかったから、逃げ隠れしてると思ったぞ」
「我がお前のような小物に本当にやられたと思ったのか」
ユキが全身の毛を逆立てていた。
「お前の死骸を皆の前に運んで、俺が王になってやる」
ガハハハっ
茶色いキマイラがユキに襲い掛かった。
ユキは襲い来るキマイラの翼を片腕で引き裂くと、首根っこに噛み付いた。
「ぎゃあああっ離せ」
「グシュッ」
ユキは片足でキマイラの頭を地面に押さえ付けて踏み潰した。
見比べてみれば瞭然で、キマイラはユキよりも小さかった。
「終わったぞ」
「ユキちゃん葉っぱいる」
「リーフよ、大丈夫であったか?」
「いたいしたの」
「リーフ、よく頑張ったもんな」
翼は腕の中のリーフを撫でた。
「ステータスオープン」
【名前 ユキ
【HP 6020/6500
【MP 4350/5000
【スキル 神獣
【種族 キマイラ
「ユキさんや、HPもMPも減ってないのですが」
「我があんな小物にやられる訳がない」
「そいつは、反乱の首謀者じゃないの?」
「おおっ、そう言えばこいつが我に噛み付いて来た奴だ」
「だったらこいつを持って、キマイラの砦に向かおう」
「何じゃ?」
「反乱って言う位だから、これからも刺客が突然襲い掛かってくるんじゃないのか」
「我が返り討ちにしてくれる」
「こいつらが、お前の相手にならないのは分かったよ」
翼の声が怒りで低くなっていた。
「でも一歩間違えていたら、リーフは踏み潰されていたんだぞ」
「すまぬ」
デカイユキが背中をすぼめて小さくなっていた。
「ユキが悪いわけじゃないのは分かっている。でも一緒に旅をするなら片をつけよう」
「うむ」
「先程落とされたリーフの葉っぱを拾って、持っていこう」
翼はキマイラに踏みつけられたリーフの葉っぱを拾った。
「そう言えば麓の村の人が自衛団を組んでキマイラを退治したり、その逆とかはないのか?」
「村とキマイラの王国は持ちつ持たれつで、長いこと共存してきた」
「へぇ、魔物と人が共存か」
「おかしいか?」
「いや、ユキのお父さんは良い王様だったんだなと思ってさ」
つまり、バッグにキマイラの王国が付いていれば村は他国に襲われないのだろう。
そしてキマイラの王国も村を襲わない事で、見逃されているのかもしれない。
共存共栄か。
「ごはん」
リーフはお腹が空いたらしい。
「ユキ、村はまだ遠いのかな?だったら、ここで飯にしよう」
「いや、あの先に見えて来たぞ」
100M先に森の出口が見えて、さらにその先に山と村が見えてきた。
「もうすぐ着くから、村で食べるか食料を調達しようか」
「何かおかしいぞ」
ユキが目と耳をそばだてている。
「キマイラ達に村が襲われている」
「そんな┅┅ユキ、同族と戦えるか?」
「無論だ」
「助けに行こう」
「では、我の背に乗れ。リーフを落とすなよ」
「おちないもん」
リーフが自分でユキの背中に飛び乗ろうとして、背中を越えて反対側に落ちそうになる。
ユキが頭でリーフを拾い上げて翼に渡す。
翼はリーフを抱えて、ユキに股がった。
「リーフ、2本の腕をビューンって出して、ユキの背中の毛をギュッて掴んでね」
「ビューン、ギュッする」
リーフはユキの背中で腕を2本出して、毛をギュッと掴んだ。
「待たせたな。行くぞ」
果たして村人は生き残っているのか。
0
お気に入りに追加
5
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
来訪神に転生させてもらえました。石長姫には不老長寿、宇迦之御魂神には豊穣を授かりました。
克全
ファンタジー
ほのぼのスローライフを目指します。賽銭泥棒を取り押さえようとした氏子の田中一郎は、事もあろうに神域である境内の、それも神殿前で殺されてしまった。情けなく申し訳なく思った氏神様は、田中一郎を異世界に転生させて第二の人生を生きられるようにした。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる