上 下
66 / 87
  第1章  フォラスの町編

 No.64 旅の準備 二度目のギルド長との商談

しおりを挟む


 俺達はギルド長室を出て、倉庫の空き部屋にやって来た。

 「この部屋なら壁は厚いし、隣の部屋で聞き耳たてても聞こえないだろ。
 変なマジックアイテムもないし……」

 (索敵魔法と魔力感知で人が近づけば分かるしな)

 立ち話もなんなので、マジックバックからテッドのアジトから失敬してきたテーブルと椅子を出した。

 「さて、今朝から俺達をつけ回す人間が2人程居るんだか、ギルド長さんよ、大角鹿の取り引きを誰に話した。
 たぶん、その金を狙う盗賊の類(たぐ)いだと思うんだが、お前サンはどう思うね。
 まったくよ、商業ギルドで取り引きすると、取り引き内容が盗賊に直ぐ知られるんじゃ商業ギルドで高額取り引きするには、毎回 魔法誓約で取り引き内容は一切他人に漏らさない契約をしなきゃ、安心して取り引き出来ないぜ」

 (な❗なんですって❗❓
リュウジ…いえリョウジ君を付け回す2人組が居るですって❗
 ま、不味いですね。
 リョウジ君の事です、簡単に私を信用しないでしょうし
 さて、どうしますか?
ここで下手な誤魔化しをすれば、完全に信用を失いますね……
 正直に話すしか無いでしょう)

 「確かに話しましたが、冒険者ギルドのサブマスターと武器防具屋のベインの二人だけですよ」

 「どうして、あの二人に俺が大角鹿の素材を売ったことを話す必用が有った?」

 「そ…  それは………」

 「言えないか?
まあ、予想はつくがな。 
 取り引き情報を冒険者ギルドに流す代わりに、俺を良く知るベインを紹介してもらい俺の個人情報を得たんだろ……
 どうりてベインの奴、バカッ高い魔道具になってるローブを勧める訳だわ、俺の懐(ふところ)事情を知ってたんだからな……
 そして、俺の取り引き情報と個人情報を合わせて盗賊に流して、俺を襲わせ、取り引きで得た金が入っているだろうマジックバックを奪わせる。 そのあと警備隊に情報を流し盗賊を逮捕させ、マジックバックは商業ギルドが所有権を主張する。
 そんな所か?」
 
 「違います、それは違います❗
私は盗賊には情報を流していません。
 それだけは信じて下さい」

 「自分を信じろね~
お前 バカなのか❓
 取り引き情報をぺらぺら他人に話す奴をどうやって信じろと?
 それにわざわざベインに会って俺の情報を仕入れたのは、個人的な興味じゃあるまい?
 誰かに報告するためだよな。
 自分で言ったよな《盗賊▶には◀流して無い》ってよ
 それは別に流した奴が居るって事だよな~
 あのときの魔法契約が有るから、自分は情報を流す事は出来ない なんて言い出すなよ。
 有るんだろ、抜け道が色々と」

 「お兄ちゃん、付けて来てる2人組は、人拐いじゃなかったの?」

 「フィリスちゃん、まだ人拐いか盗賊か分からないわよ」

 「そうです、そうです!
私は盗賊になど情報を流してませんから、町でたまたまお嬢さん方を見た人拐いの線が濃厚でしょう」

 (ん~、情報漏洩の件はこれくらいにしておくか…
 この世界にはスパイ防止法はもちろん、個人情報保護法など無いのだ。
 情報を流されたからと言って、法律的に罰する事など出来ないのだから。
 まあこれで、これからの商談を優位に進められるかな?
 商売のプロを相手に精神的な優位を作らないと、いいようにヤられるからな) 

 「まあ、今回はそう言う事にしておいてやろう。
 ………商談も有るしな。

 さて、売りたいのは大角鹿の肉 300㎏だ
 さていくらで買うね?」

 「……確か、キーン兄さんに1㎏  80ギロンで売ってましたね。
倍の 160ギロンでどうですか?」

 (あ! そうだった。 こいつ良く覚えてたな……
㌔500ギロンで売りたかったが、この世界は肉の相場が地球より安いのかな?
 まあ畜産してテマヒマかける訳じゃないから そうなるか。
 え~と、確かキーンの奴は 160ギロンは冒険者ギルドの買い付け値段だと言ってたな。 
 しかも冒険者ギルドの買い取り値は、血ねきも解体もされて無い最低の値段のはず……)

 「なめてんのか、その値段は血抜きも解体もされて無い大角鹿を、冒険者ギルドが買い取る最低の値段じゃねえか。
 狩って直ぐ血抜きしたし、解体スキルを持ってる俺がキチンと解体してるんだ。
 商業ギルドが冒険者ギルドから買い取る値は 300ギロンくらいになるはずだ。
 さらに大角鹿の希少性を考えれば 500ギロンになってもおかしく無いだろう。
 安く買って高く売るのは、商人の基本かも知れないが、商業ギルドが自分の所のギルド員の商品を買い叩こうとするのは、不味いんじゃないか?
 そんな事だから商業ギルドは一般の人からはもちろん、商人からも信頼されないんじゃないか?」

 「こ、これは手厳しい」

 「ついでに言うと、商業ギルドの受け付け嬢達は、やたらと商売のキモの話しを聞きたがるが、あんなんで話す奴居るのか?
 商業ギルド員は情報秘匿の魔法誓約を行って居ると、やたらと言って来るが、俺みないな新入りが信じ無いんだ、海千山千の商人達が信じるはずか無いと思うがな。
 これだけ信用が出来ない組織なんだ、商業ギルドの取り引き量はずっと下落し続けてないか」

 「ホント~に、痛い所を突いて来ますね」


 そこから、ローグは商業ギルドの現状を語り始めた…

 
 

 

 


   











しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】

Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。 でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?! 感謝を込めて別世界で転生することに! めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外? しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?! どうなる?私の人生! ※R15は保険です。 ※しれっと改正することがあります。

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

インバーターエアコン
恋愛
 王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。   ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。 「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」 「はい?」  叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。  王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。  (私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)  得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。  相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。

処理中です...