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第1章 フォラスの町編
No.53 旅の準備 続,said リリィ&フィリス
しおりを挟む私はフィリスと手を繋いで、冒険者ギルドの扉を開けた。
受け付けカウンターで、冒険者と受け付嬢が言い争っているらしい。
「そんな値段で納得出来るか❗❗
グランドスパイダーの糸だぞ、ふざけてんのかー
王都の貴族達が高値で買い付けてるって聞いてるぞ」
「そう言われましても、体液で汚れいる物も有るようですし。
これ以上は……」
グランドスパイダーの糸ですって❗❗
その糸で織られた布地は、温度自動調節が付くあのグランドスパイダーの糸なの❗❓
染色されて無い下着の1枚で金貨1枚はするわ。
染色が難しいから、染色された物だと3倍の値段になるし。
なにしろ個体数が少なくて、貴族達でさえ予約待ちしているのよ。
ちゃんと鑑定でもグランドスパイダーの糸になってるわ。
鑑定レベルが低いから値段までは分からないけど…
「チョット良いかしら、そちらの受け付け嬢さんは、いくらで買い取るって言ってるのかしら?」
「銀貨2枚だ ((怒))」
「それは安すぎるわね~
見たところ、汚れが無い糸だけで上着10着分は有りそうだし。
グランドスパイダーの糸は染色が難しくて、ホントに価値が出るのは染色された物なんだけど…
それでも、貴族達が順番待ちしてる糸だからね~
私の連れが商人なんだけど、明日まで待ってくれたら、金貨3枚出すけど、いかがかしら?」
ララント;
「待って下さい。
その糸は、冒険者ギルドが金貨4枚ですべて買いとらさせていただきます」
冒険者;
「おお❗
そうしてくれると助かるぜ、最初からそう言ってくれりゃいいのによ。
これでダメなら、他の連中みたく〔読み,書き,計算〕を勉強して、商業ギルド員になって、商業ギルドに売りに行くしか無いなって思ってたんだ。
今更、勉強なんてしたくも無いが、こう酷いんじゃ仕方ねえ。
2度と冒険者ギルドには来ないつもりだったぜ」
ララント;
「今までご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」
ララントは冒険者に深々と頭を下げた。
ララント;
「そして、受け付けの3人はあちらに衛兵の方々がお待ちですから、行って下さい」
受け付けの3人;
「「「どういう事ですか(の)?」」」
ララント;
「あなた方3人は長年にわたり、冒険者から不当に安く素材を買い付け、それを普通の値段で買い付けたように擬装して、差額を着服していた横領の容疑が固まりました。
それに、年若い冒険者には文句を言うと〔自分の実家が黙っていないぞ〕などと言って、黙らせていましたね。
あなた方はすでに実家を継(つ)げず、領地ももらえず、家から独立した平民です、それなのに自分があたかも貴族であるかの様に振る舞っていました。
これは身分の詐称になります。
実はこちらの罪の方が重くてですね、横領だけなら5年程の鉱山労働だったでしょうが、身分詐称が加わりましたので15年は覚悟して下さい」
ガックリとうなだれ、真っ青な顔をした3人は衛兵に捕縛され、連れ出されて行った。
ララント;
「さて、これからしばらく買い取り業務は私が行います。
その他の受け付け業務は、事務をしていた方々に交代で行ってもらいます。
あの3人のおかげで、まともな冒険者は寄り付かない冒険者ギルドになっていましたから、しばらくは慣れない事務方でも回るでしょう」
冒険者;
「あ~俺は、あの受け付け3バカが捕縛された事を、勉強でヒー,ヒー言ってる連中に宣伝して来るよ。
俺たちは学がなくて、勉強なんてしたくないから冒険者やってるんだよ。
そりゃ、冒険者だって〔読み,書き,計算〕も多少は出来るよ、最低限出来ないと依頼書を読む事も出来ないからな~。
でも商業ギルドの試験はややこしくてな~。
〔50個の木の実を7人に平等に別けたら、1人いくつもらえますか?また余りはいくつ出ますか?〕
なんて事を口頭で聞かれ、その場で頭ん中で計算して答え無きゃならないんだぜ。
そんなの1人づつ順番に配って行けば済む話しじゃねえか。
なんで頭の中で計算しなきゃなんねえってんだ?
しかし、サブマスのあんたがチョコチョコ受け付けに居たのはそう言う事だったのか。
な~んか胡散臭くて近より難かったがな」
冒険者は金を受け取り、意気揚々とギルドを出て行った。
「え~と、サブギルドマスターさん。
このグランドスパイダーの糸の汚れの酷い所を、ほんの少し売ってもらえないかしら?」
「残念ながら、それは出来ないんですよお嬢さん。
貴女が言った通り、貴族達の注文で埋まってます。
中には汚れなど有っても気にしないから、早く寄越せと言う方もいらっしゃるのですよ。
今回の仕入で貯まっていた依頼が、少しはさばけます」
「そうですか、それは残念ですわ~」
そう言って、別の受け付けに行き、冒険者登録を済ませた。
冒険者ギルドを出て、古着屋を探した。
少し小腹が空(す)いたので、屋台で串焼きでも食べる事にした。
昨日、リョウジから大角鹿の肉を買った屋台を見つけたので、買おうと思ったが…
「この人昨日お兄ちゃんから大角鹿の肉を買ってるはずなのよ。
その肉の串焼きが有るか、聞いてみてもらえる」
フィリスに耳打ちした。
私はこの人に姿を見せて無いから、私が知ってたらおかしいからね。
「おじちゃん、昨日お兄ちゃんからお肉買った人だよね?
そのお肉無いの~?」
「あ~、昨日あんちゃんと居たお嬢ちゃんか。
昨日買ったお肉はな、もう2~3日熟成させないとホントの旨さが出ないんだ。
今日はビックボアの肉だよ」
う~ん、残念だけどしょうがないわね
串焼きを1本づつ食べて、屋台を後にした。
そして古着屋にやって来たわけだが…
フィリスちゃんの興奮っぷりが尋常じゃあ無い。
フィリスちゃんが走り回って探し出した、執念の1着とでも言えば良いのか…
今、目の前に着る宝石と呼ばれる服があったりするのよね~。
正に貴族のお嬢様が着るような、ドレスと言えば良いのか?
襟つき,長袖で上下一体形のワンピースで、襟は濃い青、首の所に逆三角形のやはり濃い青の染め抜きが有り、胴の部分は淡い青。
スカート部分は腰から下へ行くほど濃くなって行くグラデーションのピンク。
しかも腰ベルト付きなんだけど…
その素材がすごい。
服は私がさっき買いそびれたグランドスパイダーの生地で、
ベルトは地竜(*,トリケラトプスみないな感じ)と呼ばれる、蜥蜴(とかげ)の魔獣の皮にバックルはミスリルだわよ。
グランドスパイダーの生地を、青く染めるには高価な鉱石を原料にしなければならず、
青く染められたグランドスパイダー生地の着物は、着る宝石と呼ばれるにふさわしいお値段になるのよねぇ…
「なんでこんな高価な服が、古着屋にあるのよ?
え~と、フィリスちゃんその服はとても高くて買えそうも無いわね」
「え~❗ フィリスどうしてもこの服欲しい。
他の服いらないから、この服だけ買えない~」
「値段が金貨を越えるようなら、絶対に無理ね。
それでなくても、旅用の動きやすい服や下着や冬服まで買わなきゃならないのよ。
もし万が1、それが買える範囲の値段だとして、それを買ったら大きな街で可愛い服を買う話しは無しになるわよ。
それでも良いかしら?」
フィリスちゃんは物凄く考え込んでる。
この子の服に対する執着は尋常じゃあ無いわね
過去に何か有ったのかしら?
「う~、とりあえずお店の人にお値段聞いて来るね」
フィリスちゃんは店の店主の所に走って行った。
あの服が金貨以下なんて、まずあり得ないわ。
仕立てたら、白金貨数枚はする代物だわ
「お姉ちゃ~ん。
小金貨5枚だって~❗❗」
なんですって~❗❗❗
どういう事よ❓❓❓
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