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第1章 フォラスの町編
No.32 リリィの死因
しおりを挟む土間に着いて、俺はスベンソンを呼んだ。
『スベンソン、ここに有る食材を別空間に仕舞っておいてくれ』
『わかった~』
スベンソンが食材を次々に仕舞って行く。
改めて盗賊の料理道具や食器を見る。
フライパンが1個、鍋が大,中,小, 各1個、それに俺が使ってるのと同じ寸胴鍋が 2個有る。
食器はスープ皿と平皿とコップとお盆のような四角い板が、各 5個ずつ、つまりテッドのパーティの人数分有った。
とりあえず、料理道具や食器を石鹸を使い洗う
洗い終わったら、食器を食器棚に戻し、棚ごとマジックバックに収納する。
鍋類も寸胴鍋1つを残して、収納する。
寸胴鍋に野菜の皮と水を入れ、竈にかける。
さっきの炭火が残って居るが、火力が足りないので薪を追加する。
鍋の様子を見ながら、俺はリリィに話し掛けた。
『そう言えば、リリィの未練について聞いて無かったな。
それと、死の原因についても…
話したくなければそれでもいいよ、お貴族様の家庭の事情に首突っ込むと、俺の命が危なそうだからな。
それに、元々の約束がグレンフォードに連れて行くだけだからな』
鍋が沸騰したので、竈の薪を減らし、野菜の皮から出る灰汁❨あく❩を取り除く。
『そうね、約束はグレンフォードに行くまでだったわね。
でも良いわ、話しておくわ。
私が辺境伯のメイド兼荷物持ちだったのは、話したわね。旅先まで荷物持ちとして同行してれば、当然と言うか夜の相手もさせられたわけよ。
貴族がメイドに手を出すなんて、普通と言うかメイド側が貴族を誘惑して妾になりたがるのが普通と言うか…
私は妾に成りたかった訳じゃあ無いけど、結局辺境伯の妾になっちゃった訳ね。
そしてめでたく男の子が生まれたのよ、辺境伯は貴族にしては珍しく屋敷で働くメイド達に手を出して無くてね、外に妾も囲って無かったから、その子が辺境伯家の長男になっちゃったのよね~。
正妻との間に子供が居なかった事と、私が領内限定とは言え、騎士爵の長女って事と、長男を生んだって事で第2婦人に格上げされた訳ね。
私の未練は、その子がどうしているか? って事。
あの正妻が、自分の子として育てる訳無いから、心配なのよ。
リーゼンバルト家が引き取ってくれてると良いんだけど、最悪は……』
『殺されてる可能性が高いと』
『そう言う事よ』
しばらく、無言で鍋の灰汁取りを行い、出汁がよい感じにできたので、マジックバックから寸胴鍋とザルを出して、皮を濾しながら移した。
『その子は何て名前だったの~』
スベンソンが会話に加わった。
チョット珍しくて、びっくりした。
一緒に薬草探して馴染んだのかな?
『クリストフよ、愛称はクリスね』
『クリスちゃん、無事だといいね~』
『それで、胡椒がリリィの死の原因ってのは、どう言う事だ』
『え~とね、まず私はクソ野郎に殺された訳だけど、そこからレイスになってクソ野郎を殺す事しか考えられなかったのよ。
リリアンナとしての人格は有ったけど、クソ野郎に対する恨みと憎しみと怨念に固まってたから、他の事が考えられなかったのね。
リュウジと会話したり、スベちゃんと会話して冷静になって自分が死ぬ事になった原因について考えて見たのね』
リリィの話しを纏めると
*現在、胡椒は王家が独占して販売しているが、恐らく木が限界を迎えつつ有るのではないか?
胡椒はその実を埋めても発芽しないため、木の本数を増やす事が出来ない。
これは何代にも渡って、ロックフォード家も試した事なので、確実にそうだと言える。
恐らく王家は、胡椒の木の収穫が落ちる度❨たび❩に、もしくは枯れそうになる度に、上級もしくは特上級の回復薬を胡椒の木に使用してきたと思われる。
現在、上級・特上級の回復薬は市場に出回っておらず、胡椒の木を回復させる事が出来ないのではないか?
そうなるとますます貴重な胡椒の実を、失敗の可能性が高い発芽実験に使う訳には行かない。
*ロックフォード辺境伯の正妻は、公爵家がかなりゴリ押しでロックフォード家に降家してきた。
おそらく公爵家は、ロックフォード家に一本とは言え、胡椒の木が有る事を嗅ぎ付けた。
そして公爵家は、ロックフォード家に有る胡椒の木と胡椒の在庫を公爵家の物にしようとして、娘を嫁がせた。
つまり公爵の娘に男子が生まれれば、その子がロックフォード家を継ぐ、そして辺境伯が死ねばロックフォード家を継いだ孫の後見人として、どうにでも出来る。
実際ロックフォード家は、胡椒の使用量は少なく、外部に売ってもいないため、かなりの量の在庫が有る。
『今の公爵はね、現国王の兄なのよね。
本当はその上にも、もう一人兄がいて、その人が長男として国を継ぐはずだったんだけど、現公爵つまり次男の弟に暗殺されたと言われてるわ。
先王は崩御にさいし、冒険者をしていた3男を国王に指名。
次男は地方の領地を納める領地貴族にしたわ、名前だけは公爵だけどね。
何しろ公爵は自己中心的で、貴族でなければ人に有らず、貴族以外は等しく奴隷だと公言してはばからない、いわゆるコッテコテの貴族主義なのよ。
そんな人を先王が次の王に指名するはず無いわ。
一説には、現国王は次男に暗殺されないように、冒険者になったと言われてるわ、暗殺者が来ても返り討ちに出来る実力を付けるためともね。
おそらく公爵は、胡椒で出た利益で反乱を起こすつもりね。
ロックフォード家の在庫の胡椒を売れば、かなりの金額になるわ。
それに、大賢者が残した上級回復薬が、専用の保管箱にまだ結構な数有るからね。
だけど、私がクリスを生んで第2とは言え、婦人になったからロックフォード家を乗っ取る計画に支障をきたした』
『そこまで聞くと、リリィの息子が生きてる可能性は、かなり低いな。』
『リリィが死んでからどれくらいの時間が経ってるの~』
『それがね~スベちゃん、良く分からないのよね~
つい先日のような気もするし、何年も前の事のような気もするしね~』
『まあ、そのあたりはグレンフォードに行けばわかるだろう
今日はこれくらいにして、もう寝よう』
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更新が遅くてスミマセンm(_ _)m
作者は夏ばてが少し回復したあと、夏風邪を拗らせまして……
40度近い高熱に、止まらない咳と鼻水、さらに頭痛、めまい、吐き気に襲われて、たまらず救急車のお世話になりました。
病院の先生曰❨いわ❩く、もう半日救急車呼ぶのが遅かったら、命が危なかったそうです。
もちろん強制入院でした…
現在は退院しましたが、何故か頭痛だけは治り切りません。
そんなわけで、更新はかなりの不定期になると思われます。
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