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気付いたら森にいたと訴えてみた結果
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キースさんの後について歩くこと10分程度。
街の外側を進んで、街道側へ出てきた。ここは人通りが多く、馬車も行きかっている。街道の先には建物が見えず、見渡す限り何もない平原が広がっている。
これは隣街とか行くのに、めっちゃ苦労しそう…。なんとかこの街で生計をたてなければ…!
「入って、ちょっとごちゃごちゃしてるけど」
「お邪魔します」
どうやらここが詰め所らしい。
「あれ。どうしたんだ、その子」
「迷子みたいだから連れてきた。"アンリ"さんだよ、調べてあげて。あとお腹空いてるみたいだから、何か出してあげて」
大きな窓があり、外を見やすくなっている。この世界の交番的な場所っぽい。
「はいよ、俺はグレイ。コーヒーでいいか?」
「はい、ありがとうございます。砂糖があれば飲めます…!」
グレイさんは、笑いながら奥の部屋へ行った。台所があるのかな。
私は入ってすぐの部屋でくつろいでおくよう言われた。
小さめの机に椅子が二脚。壁の棚には鞄やぬいぐるみやとにかく色々ごちゃっと押し込まれている。
「ごめんね、僕はもう行くけど、グレイが何とかしてくれるから安心して」
「えっと、グレイさんは何者なんですか?警察?」
「軽率?ではないよ、この場を離れた事を心配しているなら、僕がいるからだから。今日は私服だけど、これでもグレイと同じ兵士だよ」
「キースさん先生じゃないんですか!?」
いやでも確実に子供に先生って呼ばれてた。こんな優男な兵士がいてたまるか。
「あぁあれは…見回りついでについて行ってるだけだよ。学校にもよく顔を出すから、小さい子の中には本当に先生と思っている子もいるかもしれないけど、まぁあだ名みたいなものかな」
「ほぅ」
ここに居るらしい。この見た目で兵士とか逆に心配だけどいいのか?
「キース、ほらこれ持っていけよ。さっきシータ嬢が差し入れに持ってきてくれたんだ。お前じゃなくて残念がられたぜ」
戻ってきたグレイさんに、思わず目がいく。
結構背も高いし、がっしりしてる。見た感じで強そうだ。
まぁそれよりも彼が手に持っている皿に注目してしまう。マドレーヌみたいな焼き菓子がごろごろ山積みになってる。食べさせてくれるってことだよね?どちらかというと肉とか食べたい気分だけど、食べれるなら何でもいい!
「会ったらお礼を言っておくよ。では後は任せた」
「了解」
「ありがとうございましたー!」
完全にお菓子にロックオンしていた視線を一瞬向けて、見送る。
軽く手を振ってにこやかにキースさんは出て行った。
さて、では本腰入れてグレイさんを説得しますかね!当面の面倒をみてくれるなら、誰でもいいのよ。
あ、お菓子は勿論いただきます。食べながら真面目にお話させていただきます。
「キースさんが、グレイさんが何とかしてくれるよって言ってたんですけど、助けてくださいます?」
「おう、迷子だろ?お前の連れからの捜索依頼はまだ来てないんだが…」
「それなんですけど、迷子っていうか、私気がついたらいつの間にか森に居て、名前以外何も覚えてないんです!」
「んん?…ところで見たところ何も持ってなさそうだな?」
「そうなんです。気付いたら手ぶらで森に居たんです。お金もなくて本当に困ってました」
んんー、と唸りながら、グレイさんはおもむろに紙の束に手を伸ばした。
「アンリねぇ…まさか偽名じゃないよな?」
「はぁ?そんな変わった名前ですか?本名ですよ」
って、思わず返してから気付いたけど、もしかしたらこの世界の言葉で変な意味とかあったら疑われてもしかたないかも。
キースとかグレイとかに比べたら、かなり異質だもんね。
「あらら、宿泊者のリストには載ってないのな。んじゃ馬車の利用者リストも貰ってくるか」
「いやいやだから、そうじゃないんですよ。私、もしかしたらちょっと記憶が…あやふや…みたいな。どこから来たのかも覚えてないんです。でも、森に居たので馬車は使ってないかと。そんで、お金もないので宿にも泊まってないかと」
もしかして記憶喪失?って言ってもらう待ちだったけど、迷子で認識を固定されてるみたいだからもう自分で言っちゃったよ。
異世界から来ましたとは絶対に言わないけどね。頭おかしすぎるでしょ。
「正直、家出娘かなーと思ってるわけよ。その服、この地方じゃ馴染みのない素材だけど遠くから来たのか?」
「あの本当、あなた以上に私が私の事を知りたいぐらいなんです。お金の単位も、馬車の乗り方も、この街の名前も、何も分かんないんです。言葉とか挨拶とか、この…コーヒーとかの名前は分かるみたいですけど、兵士がここでどんな仕事をしてるのかも知りません」
「じゃあお前が今食べてるのは何だ?」
「よく分かんないけどマドレーヌですか?」
「ほー。そんな名前なのか」
いや、正解知らないなら聞くなよ!?
「っていうか、この靴もマントも私のじゃないんです。その、森で気付いた時には身に付けていたんですけど私の持ち物じゃないんです。でも誰かのをパクったわけではなくて、誰かに着せられてたんです」
これに関してはまったく身に覚えがないから、私をこの世界にどうこうした人が居て、何らかの形で関わってるんじゃないかなーとは思うんだけど。
「んーこりゃ長期戦か?思ったよりやっかいな娘さんだなぁ…にしても、行く場所もない、金がないってなると」
「一人放り出したりしませんよね?」
「1日だけなら教会で面倒みてくれるだろうが…そのマント預かってもいいか?」
マントを脱いだら、パジャマ代わりのスウェットを晒すハメになるんだけど…致し方ない。
マントの持ち主を探してくれるというのなら、それはそれでアリだ。
「どうぞ」
「んじゃキースが見回りから帰ってきたら、教会に行くぞ。とりあえず今晩止めてもらうといい。だが、嫌になったらいつでも本当のことを話に来い」
「本当のことって?」
「お前の家だか奉公先まで送ってってやる」
「だから、家出じゃないって言ってるじゃないですか!っつーか私、もう成人してますからね。自立してるんですよこちとら!家が嫌なら普通に一人暮らしでも始めますから!」
「じゃあ働き口を紹介した方がいいのかな?」
迷子・家出認識を一向に改めてくれないグレイさんにちょっとキレていると、キースさんが帰ってきた。
「それめっちゃいいです、寧ろウェルカム!願ったり叶ったり!住み込み希望!…ですけど…もしかしたら、常識を覚えてなかったり…するかもですが」
勢いづいたまま食いついたけど、住み込みはちょっと問題があるかも。知らない人との共同生活はまだハードルが高いかも。
途中から尻すぼみになる私をどう解釈したのかは知らないけど、キースさんは中々いい笑顔で私の肩をたたいた。
「丁度、家主が引越しした家と畑があるんだよ。しばらくそこで暮らしてみる気はあるかい?」
記憶喪失からの畑仕事で、まさかのリアル牧物ルートに驚きはしたものの、もちろん二つ返事で承諾した。
まぁこの人達、わたしの事記憶喪失って認識してくれてないけどね!
街の外側を進んで、街道側へ出てきた。ここは人通りが多く、馬車も行きかっている。街道の先には建物が見えず、見渡す限り何もない平原が広がっている。
これは隣街とか行くのに、めっちゃ苦労しそう…。なんとかこの街で生計をたてなければ…!
「入って、ちょっとごちゃごちゃしてるけど」
「お邪魔します」
どうやらここが詰め所らしい。
「あれ。どうしたんだ、その子」
「迷子みたいだから連れてきた。"アンリ"さんだよ、調べてあげて。あとお腹空いてるみたいだから、何か出してあげて」
大きな窓があり、外を見やすくなっている。この世界の交番的な場所っぽい。
「はいよ、俺はグレイ。コーヒーでいいか?」
「はい、ありがとうございます。砂糖があれば飲めます…!」
グレイさんは、笑いながら奥の部屋へ行った。台所があるのかな。
私は入ってすぐの部屋でくつろいでおくよう言われた。
小さめの机に椅子が二脚。壁の棚には鞄やぬいぐるみやとにかく色々ごちゃっと押し込まれている。
「ごめんね、僕はもう行くけど、グレイが何とかしてくれるから安心して」
「えっと、グレイさんは何者なんですか?警察?」
「軽率?ではないよ、この場を離れた事を心配しているなら、僕がいるからだから。今日は私服だけど、これでもグレイと同じ兵士だよ」
「キースさん先生じゃないんですか!?」
いやでも確実に子供に先生って呼ばれてた。こんな優男な兵士がいてたまるか。
「あぁあれは…見回りついでについて行ってるだけだよ。学校にもよく顔を出すから、小さい子の中には本当に先生と思っている子もいるかもしれないけど、まぁあだ名みたいなものかな」
「ほぅ」
ここに居るらしい。この見た目で兵士とか逆に心配だけどいいのか?
「キース、ほらこれ持っていけよ。さっきシータ嬢が差し入れに持ってきてくれたんだ。お前じゃなくて残念がられたぜ」
戻ってきたグレイさんに、思わず目がいく。
結構背も高いし、がっしりしてる。見た感じで強そうだ。
まぁそれよりも彼が手に持っている皿に注目してしまう。マドレーヌみたいな焼き菓子がごろごろ山積みになってる。食べさせてくれるってことだよね?どちらかというと肉とか食べたい気分だけど、食べれるなら何でもいい!
「会ったらお礼を言っておくよ。では後は任せた」
「了解」
「ありがとうございましたー!」
完全にお菓子にロックオンしていた視線を一瞬向けて、見送る。
軽く手を振ってにこやかにキースさんは出て行った。
さて、では本腰入れてグレイさんを説得しますかね!当面の面倒をみてくれるなら、誰でもいいのよ。
あ、お菓子は勿論いただきます。食べながら真面目にお話させていただきます。
「キースさんが、グレイさんが何とかしてくれるよって言ってたんですけど、助けてくださいます?」
「おう、迷子だろ?お前の連れからの捜索依頼はまだ来てないんだが…」
「それなんですけど、迷子っていうか、私気がついたらいつの間にか森に居て、名前以外何も覚えてないんです!」
「んん?…ところで見たところ何も持ってなさそうだな?」
「そうなんです。気付いたら手ぶらで森に居たんです。お金もなくて本当に困ってました」
んんー、と唸りながら、グレイさんはおもむろに紙の束に手を伸ばした。
「アンリねぇ…まさか偽名じゃないよな?」
「はぁ?そんな変わった名前ですか?本名ですよ」
って、思わず返してから気付いたけど、もしかしたらこの世界の言葉で変な意味とかあったら疑われてもしかたないかも。
キースとかグレイとかに比べたら、かなり異質だもんね。
「あらら、宿泊者のリストには載ってないのな。んじゃ馬車の利用者リストも貰ってくるか」
「いやいやだから、そうじゃないんですよ。私、もしかしたらちょっと記憶が…あやふや…みたいな。どこから来たのかも覚えてないんです。でも、森に居たので馬車は使ってないかと。そんで、お金もないので宿にも泊まってないかと」
もしかして記憶喪失?って言ってもらう待ちだったけど、迷子で認識を固定されてるみたいだからもう自分で言っちゃったよ。
異世界から来ましたとは絶対に言わないけどね。頭おかしすぎるでしょ。
「正直、家出娘かなーと思ってるわけよ。その服、この地方じゃ馴染みのない素材だけど遠くから来たのか?」
「あの本当、あなた以上に私が私の事を知りたいぐらいなんです。お金の単位も、馬車の乗り方も、この街の名前も、何も分かんないんです。言葉とか挨拶とか、この…コーヒーとかの名前は分かるみたいですけど、兵士がここでどんな仕事をしてるのかも知りません」
「じゃあお前が今食べてるのは何だ?」
「よく分かんないけどマドレーヌですか?」
「ほー。そんな名前なのか」
いや、正解知らないなら聞くなよ!?
「っていうか、この靴もマントも私のじゃないんです。その、森で気付いた時には身に付けていたんですけど私の持ち物じゃないんです。でも誰かのをパクったわけではなくて、誰かに着せられてたんです」
これに関してはまったく身に覚えがないから、私をこの世界にどうこうした人が居て、何らかの形で関わってるんじゃないかなーとは思うんだけど。
「んーこりゃ長期戦か?思ったよりやっかいな娘さんだなぁ…にしても、行く場所もない、金がないってなると」
「一人放り出したりしませんよね?」
「1日だけなら教会で面倒みてくれるだろうが…そのマント預かってもいいか?」
マントを脱いだら、パジャマ代わりのスウェットを晒すハメになるんだけど…致し方ない。
マントの持ち主を探してくれるというのなら、それはそれでアリだ。
「どうぞ」
「んじゃキースが見回りから帰ってきたら、教会に行くぞ。とりあえず今晩止めてもらうといい。だが、嫌になったらいつでも本当のことを話に来い」
「本当のことって?」
「お前の家だか奉公先まで送ってってやる」
「だから、家出じゃないって言ってるじゃないですか!っつーか私、もう成人してますからね。自立してるんですよこちとら!家が嫌なら普通に一人暮らしでも始めますから!」
「じゃあ働き口を紹介した方がいいのかな?」
迷子・家出認識を一向に改めてくれないグレイさんにちょっとキレていると、キースさんが帰ってきた。
「それめっちゃいいです、寧ろウェルカム!願ったり叶ったり!住み込み希望!…ですけど…もしかしたら、常識を覚えてなかったり…するかもですが」
勢いづいたまま食いついたけど、住み込みはちょっと問題があるかも。知らない人との共同生活はまだハードルが高いかも。
途中から尻すぼみになる私をどう解釈したのかは知らないけど、キースさんは中々いい笑顔で私の肩をたたいた。
「丁度、家主が引越しした家と畑があるんだよ。しばらくそこで暮らしてみる気はあるかい?」
記憶喪失からの畑仕事で、まさかのリアル牧物ルートに驚きはしたものの、もちろん二つ返事で承諾した。
まぁこの人達、わたしの事記憶喪失って認識してくれてないけどね!
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