空をとぶ者

ハルキ

文字の大きさ
上 下
1 / 5

プロローグ

しおりを挟む
 とある日の夜、ひとりの小さな子供がリビングで絵本を読んでいた。暖光色の明かりが天井から降り注ぐ。すると、ひとりの女性が暗闇からその子供の目の前に現れた。その子供の母親だ。それと同時に、その子供は読んでいた絵本の最後のページを読み上げた。

 「ねえ、ママ。ほかにおもしろいほんはないの?」

 「んー、そうだな。本じゃなくて面白い話だったらあるよ」

 「え、どんなの?」

 すると、その子供は読んでいた本を乱雑に置き、母親のもとへつたない足取りで母親のほうへ向かった。

 母親は右手を差し伸べ、その子供はその手を握って両足を安定させた。しかし、その後、母親は何の動作も見せず、子供が「もちあげてくれないの?」と言いたげな顔で見つめていた。

 「その話っていうのはね、人じゃなくて鳥人っていうのが主人公の物語なんだ」

 「ちょうじん?」

 「そう、腕のかわりに翼を生やした人ってこと」

 すると、子供は聞いたことのない言葉に目を輝かせ、

 「はやく、はやく、教えて」

 と母親をせかす。

 その時、母親はひとつ深呼吸をし、子供のことを見ずに窓の外を眺めていた。







しおりを挟む

処理中です...