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40 ローズマリ・サトクリフ作品
しおりを挟むこんにちは。
今回はひとつの作品ではなく、ローズマリ・サトクリフの一連の作品をご紹介する形にしました。ただし、私が勤めているのが中学校の学校図書館であるため、そこに置くのによいと思われるもの限定です。
ローズマリ・サトクリフは、1920年にイギリスに生まれた歴史小説とファンタジー小説の小説家。2歳のころ、関節炎がもとで足に障害が起こって歩行困難となり、以降はずっと車いすで生涯を送った小説家として知られています。
この身体的な問題のため、学校教育は9歳から14歳までしか受けておらず、のちの素晴らしい小説を生み出した素養の多くはそれ以降独学で身につけたものと言われています。生前は、影響をとくに受けた作家のひとりとして、キプリングを挙げていたそうです。
1950年、30歳のときに小説家としてデビューし、児童向け歴史小説「第九軍団のワシ」「銀の枝」「ともしびをかかげて」からなるローマン・ブリテン三部作で小説家としての名声を不動のものとしました。のちにここに「辺境のオオカミ」が加わって、全体で四部作になっています。
こちらはすべて岩波少年文庫に収録されていて、中学生にとって手に取りやすい形になっているかと思います。
しかしながら、岩波少年文庫としての出版は比較的最近ではあるものの、翻訳者によるあとがきの文章が1960年代であったりすることから、翻訳されたのはずっと前のようです。
文章は美しいながらもやや硬く古めかしく、活字も少し見づらい形であり、挿し絵や装丁も派手なものではないため、今を生きる中学生にとってはどうしても手にとりづらいものに見えるようです。
私自身、うちの図書館に入れてはみたものの、現在でもなかなかうまく紹介できていないという現状があります。
「第九軍団のワシ」は、あの宮崎駿監督もお勧めの本として紹介している作品であり、歴史的な背景をよく調べたうえで書かれた傑作中の傑作。なんとか現代の中学生にも手に取って欲しい作品なのですが、POPなどで目立たせてもなかなか借りてもらえないのが現状です。
ローマン・ブリテンシリーズ以外にも、「太陽の戦士」「王のしるし」「運命の騎士」など、岩波少年文庫には数多くのサトクリフ作品が収録されています。
いずれも、当時の人々の生活や習俗や置かれていた環境などが目の前に立ち上がってくるかのような秀逸な描写に満ちており、傑作と呼ばれるにふさわしいものです。心理描写も巧みで、思わず引き込まれてしまいます。
まるで自分がその時代に生き、主人公たちと共に息づいているかのような感覚を引き起こされる作品なのです。歴史小説として最も大切なその部分を、十二分に含んでいるのがサトクリフ作品だと言えるのではないでしょうか。
たとえば「太陽の戦士」では、青銅器時代(紀元前900年ごろ)を生きたとある氏族の少年、ドレムが主人公となっています。
ドレムは生まれつき右腕に障害があり、片腕しか使えません。槍と盾を両方つかうこともできない中、それでも必死に努力を続け、氏族の男として戦士になるための厳しい儀式であるオオカミ殺しに挑戦します。
その後、ひどい挫折と成長を経て、力強く自分の人生を切りひらいていく姿が胸に迫る傑作。
○「太陽の戦士」
ローズマリ・サトクリフ・著 / 猪熊葉子・訳 / 岩波書店(2005年)
そのほか、大人向けの小説として書かれた「アーサー王シリーズ」や「ベーオウルフ」などもあり、別の書店から出版されたこちらの「サトクリフ・オリジナル」シリーズもうちの図書館には入っています。
やっぱりなかなか生徒には手に取ってもらえませんが、瑞々しい感性を持っている若い時代にこそ、ぜひとも触れて欲しい作品の数々だと思います。
これも今後の私にとっての課題かなと思っております。
○「アーサー王と円卓の騎士 サトクリフ・オリジナル」
ローズマリ・サトクリフ・著 / 山本史郎・訳 / 原書房(2001年)
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