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最終話 誓い
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凄まじい爆炎だった。その中でヴィルヘルム王は、涼しい顔で、そのオレンジの瞳の中だけが燃えるようにグラグラと揺れている。
王の炎をこれまで何度も見た事がある者も、実際に大広間を覆うほどの炎に包まれると、やはり衝撃で叫ぶ者も出た。
「ゔわぁあ~~っ!!!!! 何ゴレッ••••??? 僕、まだアネラに言いたいこと、たくさんあるのに~~っ!!!」炎の隙間からチラチラと水色の髪だけが見え隠れする中で、案の定、ナイールは奇声を発し、手足をバタバタさせている。
だが、しばらくすると、リボンで可愛らしく飾ったツインテールの髪を横に傾け、薄黄色の目でキョトンとして、首を捻った。
「あれっ•••••?? あれ~?? ぜっんぜん熱くないんだけど•••••。」
『炎の温度を支配し、従える』
それが父上の魔力だ。炎は数秒間だけ現れ、その後一瞬で消えた。今のように、熱を持たない炎を作り出す事で、”邪悪な魔力” を祓うこともできる。ジェラリアの涙を作り出した水魔法を『祓った』のだ。
ーーー炎による『祓い』で安全だと分かっていても、心臓に悪い••••。
王は広間中に響き渡る威厳のある声で、宣言した。
「皆の者、今回、真犯人を見つけたこと、そして、聖女とも呼べるわが国にとって貴重な人材を見つけた事を持って、これまでユオンに課していた罰を取り下げ、第一王子ユーリとして、改めて皆に紹介しよう。魔力の暴走により、わが国の第一王子ユーリは幼い頃に亡くなったとされていたが、ユオンとして罪を償っていたのだ。」
広間が人々の声でどよめくなか、アネラをエスコートしていたエドゥが、目を丸くし、口をポカンと開けオレを見た。
「へっ••••!? だ、団長がユーリ王子•••••???? いや、見かけは王子っぽいとは思うけど、、、あんなに敵をぶちのめして、半殺しにしちまう団長が王子••••????」
ーーーうん、なんかわりぃっ•••••。
ナイールは王子などにはまるで興味がないとでも言うように、きわめて冷静な顔で、
「 ふぅん、ユオンって、王子さまだったんだね~~。何でもいいけどーー、アネラを心配させたら僕が許さないからねっ!!!」と、薄黄色の瞳でギロッとオレを睨むが、どう考えてもこいつの方が明らかにいろんな意味で、アネラを心配させそうなんだが••••。
レオは•••••? 広間を見渡すと、大柄なレオは、騎士たちに囲まれていても目立っていた。白い騎士服が周りを取り囲む中、シルバー色の髪がちょこんと飛び出ていて、優しい黒い瞳がオレ見つめ、穏やかな笑顔を向けてくれていた。
隣に立つアネラは、先ほどから栗色の大きな瞳を見開き、「まさかユオンが、ユーリ王子だったなんて•••••。」と、両手で口を覆い、透き通った目から、とめどもなく涙をこぼれ落とす。華奢な肩が震え、時々嗚咽が聞こえてくる。
ーーーもしかしてアネラは、幼い時に出会ったユーリ王子の安否をずっと心配してくれていたのだろうか•••••?
オレは、壊れ物に触れるかのように、恐る恐るアネラの頬にそっと手を添え、涙を親指で拭うが、泣き止む様子はない。彼女は顔をクシャッとさせると、その大きな瞳からますます涙が溢れて零れ落ちてきた。「生きてて••••••良かった••••••。」声を震わせアネラは泣き続ける。ポトリッポトリッと床へ落ちる水滴に、オレはアネラの肩を抱き寄せると、彼女は顔をオレの胸に寄せてきた。もう片方の手で、彼女の後頭部をそっと支え、その温もりを感じる。
ーーーー9歳で施設を出てから、彼女を探し出して以降、自分があの時出会ったユーリだと、自分は無事だと、何度も打ち明けたかった。もちろん当時のオレにはそんな事は叶わない夢だったのだが••••。だから、アネラが城に来た当初、夜中に部屋を抜け出しているのを知った時、ユーリとして接触が出来ないなら、危険な目に遭わないよう、せめて陰からでも見守りたかったんだ••••。
ーーーオレの命はただあなたのために•••••。あなたを守るためならば、悪魔にだって魂を売っていた••••••。
「ユーリ、今回の功績に際し、望みを一つだけ叶えよう。お前の望みは何だ?」
王の言葉が聞こえ、アネラを胸に抱いたまま顔だけを声のする方へと向ける。頭の中では、レオの家で、皆に宣言していた言葉が蘇っていた。
ーーーー「レオ、とびきり豪華な花嫁衣装を用意できるか?明日、結婚式を挙げる。」ーーーー
オレの”賭け”がどうなるかはその時は正直全く分からないままでの宣言だった。けれど、アネラには決して捕まる事はないんだと、安心してもらいたかった。覚悟を示したかったんだ。そして、自分自身を信じたかった。••••自分を信じる事を教えてくれた彼女に相応しくありたかった••••。
アネラが顔を起こし、涙ぐんだ顔でジッとオレを見つめるのに気づき、彼女の潤んだ瞳を見つめ返した。クシャリッと微笑む彼女に、頷きを返し、王の方へと向き直る。
そのまま王の前に進み出て、騎士のマントを翻し、片足をつき跪いた。ゆっくりと顔を上げて見た父上の顔は、今までにないほど、とても優しい表情をしていた。オレの望みは、もう決まってる•••••。
「私の望みは、アネラと結婚する事、彼女と一生を共にすることです。それが叶うなら、王子にでも何にでも戻りましょう。」
普段は厳しい表情をしている父上が、その整った顔を崩し、豪快に笑う。
「ワハハハハッ••••!! 普通は王子になる事が望みだと言うのに、まるでそれはお前にとって付け足しのように言うのだな。」
ひとしきり笑った父上の瞳に、一筋の涙が見えた気がしたが、勘違いかもしれない••••。父上は金茶色の髪の上に戴いているシンプルだが希少な鉱物で作られた銀に光る王冠を手に持ち、再び尋ねる。
「ユオン、••••いや、ユーリ、王の責務を担う覚悟はあるか•••?」
オレはその赤く揺らめく瞳を見つめる。以前は怖いとしか思えなかったが、今は不思議と安心できた。
「全てを負う覚悟など、当の昔にできています。」
応え終わった途端、頭にズシリと王冠が載せられる。王族の一員として、認められた証だった。
「よかろう、では、褒美として、今この場でお前たち二人の結婚を認め、誓いの儀式を執り行う。」
止まっていた音楽が、楽師たちによって再開される。チェンバロの低音に合わせ、弦が弓でこすられ美しい堅琴の音色が響き渡る。
「団長ッぉおお!おめでとうございますッ!」
「アネラ~~っ!!! 嫌になったらいつでも僕のとこにおいでよ~!」
ーーーったく、こいつらほんっと自由だな•••••。
エドゥとナイールの叫び声にも近い彼らなりの祝福の言葉が、跪いていたオレの上から降ってくる。見上げるとアネラと目が合い、思わずクスリッとお互いに笑ってしまう。
カツンッと靴音がし、エドゥの隣にシルバー色の髪を小綺麗に整え正装をしたレオが立った。
「ユオン、いや、ユーリ王子、おめでとう!」
黒い瞳を細め、ニコニコと笑っている。
「レオ、照れるから今さらよしてくれ••••••! 今まで通りユオンでいい••••。」
「ふふっ、じゃあ、これからも遠慮なくいかせてもらうよ?」
レオには今でもたまに稽古をつけてもらっている。レオの闘い方は独特で、相手の力を利用しダメージを負わせるもので、相手が強いほど効果的な戦闘法だ。騎士団の中では敵なしのオレだが、闘い方の癖を知り尽くし、人の心理を読む事に長けたレオには、まだまだ敵わない。
「ああ、望むところだ!!」
「私もまだまだ健在だ。たまには私もお前たちの稽古に混ぜてもらおう。」
•••••••!?•••••••
父上が突然話に割って入った。
「ヴィルヘルムッ!悪い冗談だ••••。僕の自信が打ち砕かれそうだから止めてくれっ!」
レオの穏やかな声が楽しそうに弾む。
「そうか•••? ワハハッッ!!! 」
ーーーーんっ?レオっていつも父上の前ですっげぇかしこまってなかったか•••??? しかも、父上まで••••!
でも、父上のこんな楽しそうな顔を見るのは久しぶりだ•••••!!
オレは立ち上がり、白のドレスを纏ったアネラの隣に立つ。泣き腫らし、真っ赤になり潤んだ栗色の瞳が、オレを見つめている。
ーーー綺麗だ•••••。
同じ女性に、何度も何度も恋をする。
オレは服の上から、自分の心臓を掴むように強く手で押さえた•••••。胸の奥が苦しくなるぐらいに切なくて、、、、愛しかった、、、、。彼女とこの世界で出会えたことが嬉しくて、、、言葉がすべて陳腐に思えてしまうほどの、深いところからとめどもなく湧いてくる愛としか呼べない感情が、自分の身体を埋め尽くしていく••••••。
オレは、彼女の肩を抱き寄せ、その赤い唇に口付けをした。
広間にいる客たちの鳴り止まない拍手と、風魔法の騎士たちが気を利かせて、降らせる色とりどりの花々の祝福のなか、アネラは太陽のような笑顔を見せた。
オレは世界で一番愛しい人を腕に抱き、皆の祝福に応えるように片腕を上げ、風により運ばれてくる花々を受け取る。
隣に立つアネラが涙ぐんだ声で、「ユオン••••! ユーリ王子は、私の初恋の少年だったのよ••••!」と、はにかみながら耳元で打ち明けてくれる。
ーーー何度、オレを虜にすれば気が済むんだろう••••?
「アネラ、オレの初恋も、実はあなただったんですよ!」
ーーーずっと••••••ずっと、あなただけを一途に思い続けてきた。ーーーそう明かすと、ポッと頬を染めて、長い睫毛を揺らし、照れる彼女に、オレは心の中で、この先も変わらぬ愛を捧げる。
第一部 完
王の炎をこれまで何度も見た事がある者も、実際に大広間を覆うほどの炎に包まれると、やはり衝撃で叫ぶ者も出た。
「ゔわぁあ~~っ!!!!! 何ゴレッ••••??? 僕、まだアネラに言いたいこと、たくさんあるのに~~っ!!!」炎の隙間からチラチラと水色の髪だけが見え隠れする中で、案の定、ナイールは奇声を発し、手足をバタバタさせている。
だが、しばらくすると、リボンで可愛らしく飾ったツインテールの髪を横に傾け、薄黄色の目でキョトンとして、首を捻った。
「あれっ•••••?? あれ~?? ぜっんぜん熱くないんだけど•••••。」
『炎の温度を支配し、従える』
それが父上の魔力だ。炎は数秒間だけ現れ、その後一瞬で消えた。今のように、熱を持たない炎を作り出す事で、”邪悪な魔力” を祓うこともできる。ジェラリアの涙を作り出した水魔法を『祓った』のだ。
ーーー炎による『祓い』で安全だと分かっていても、心臓に悪い••••。
王は広間中に響き渡る威厳のある声で、宣言した。
「皆の者、今回、真犯人を見つけたこと、そして、聖女とも呼べるわが国にとって貴重な人材を見つけた事を持って、これまでユオンに課していた罰を取り下げ、第一王子ユーリとして、改めて皆に紹介しよう。魔力の暴走により、わが国の第一王子ユーリは幼い頃に亡くなったとされていたが、ユオンとして罪を償っていたのだ。」
広間が人々の声でどよめくなか、アネラをエスコートしていたエドゥが、目を丸くし、口をポカンと開けオレを見た。
「へっ••••!? だ、団長がユーリ王子•••••???? いや、見かけは王子っぽいとは思うけど、、、あんなに敵をぶちのめして、半殺しにしちまう団長が王子••••????」
ーーーうん、なんかわりぃっ•••••。
ナイールは王子などにはまるで興味がないとでも言うように、きわめて冷静な顔で、
「 ふぅん、ユオンって、王子さまだったんだね~~。何でもいいけどーー、アネラを心配させたら僕が許さないからねっ!!!」と、薄黄色の瞳でギロッとオレを睨むが、どう考えてもこいつの方が明らかにいろんな意味で、アネラを心配させそうなんだが••••。
レオは•••••? 広間を見渡すと、大柄なレオは、騎士たちに囲まれていても目立っていた。白い騎士服が周りを取り囲む中、シルバー色の髪がちょこんと飛び出ていて、優しい黒い瞳がオレ見つめ、穏やかな笑顔を向けてくれていた。
隣に立つアネラは、先ほどから栗色の大きな瞳を見開き、「まさかユオンが、ユーリ王子だったなんて•••••。」と、両手で口を覆い、透き通った目から、とめどもなく涙をこぼれ落とす。華奢な肩が震え、時々嗚咽が聞こえてくる。
ーーーもしかしてアネラは、幼い時に出会ったユーリ王子の安否をずっと心配してくれていたのだろうか•••••?
オレは、壊れ物に触れるかのように、恐る恐るアネラの頬にそっと手を添え、涙を親指で拭うが、泣き止む様子はない。彼女は顔をクシャッとさせると、その大きな瞳からますます涙が溢れて零れ落ちてきた。「生きてて••••••良かった••••••。」声を震わせアネラは泣き続ける。ポトリッポトリッと床へ落ちる水滴に、オレはアネラの肩を抱き寄せると、彼女は顔をオレの胸に寄せてきた。もう片方の手で、彼女の後頭部をそっと支え、その温もりを感じる。
ーーーー9歳で施設を出てから、彼女を探し出して以降、自分があの時出会ったユーリだと、自分は無事だと、何度も打ち明けたかった。もちろん当時のオレにはそんな事は叶わない夢だったのだが••••。だから、アネラが城に来た当初、夜中に部屋を抜け出しているのを知った時、ユーリとして接触が出来ないなら、危険な目に遭わないよう、せめて陰からでも見守りたかったんだ••••。
ーーーオレの命はただあなたのために•••••。あなたを守るためならば、悪魔にだって魂を売っていた••••••。
「ユーリ、今回の功績に際し、望みを一つだけ叶えよう。お前の望みは何だ?」
王の言葉が聞こえ、アネラを胸に抱いたまま顔だけを声のする方へと向ける。頭の中では、レオの家で、皆に宣言していた言葉が蘇っていた。
ーーーー「レオ、とびきり豪華な花嫁衣装を用意できるか?明日、結婚式を挙げる。」ーーーー
オレの”賭け”がどうなるかはその時は正直全く分からないままでの宣言だった。けれど、アネラには決して捕まる事はないんだと、安心してもらいたかった。覚悟を示したかったんだ。そして、自分自身を信じたかった。••••自分を信じる事を教えてくれた彼女に相応しくありたかった••••。
アネラが顔を起こし、涙ぐんだ顔でジッとオレを見つめるのに気づき、彼女の潤んだ瞳を見つめ返した。クシャリッと微笑む彼女に、頷きを返し、王の方へと向き直る。
そのまま王の前に進み出て、騎士のマントを翻し、片足をつき跪いた。ゆっくりと顔を上げて見た父上の顔は、今までにないほど、とても優しい表情をしていた。オレの望みは、もう決まってる•••••。
「私の望みは、アネラと結婚する事、彼女と一生を共にすることです。それが叶うなら、王子にでも何にでも戻りましょう。」
普段は厳しい表情をしている父上が、その整った顔を崩し、豪快に笑う。
「ワハハハハッ••••!! 普通は王子になる事が望みだと言うのに、まるでそれはお前にとって付け足しのように言うのだな。」
ひとしきり笑った父上の瞳に、一筋の涙が見えた気がしたが、勘違いかもしれない••••。父上は金茶色の髪の上に戴いているシンプルだが希少な鉱物で作られた銀に光る王冠を手に持ち、再び尋ねる。
「ユオン、••••いや、ユーリ、王の責務を担う覚悟はあるか•••?」
オレはその赤く揺らめく瞳を見つめる。以前は怖いとしか思えなかったが、今は不思議と安心できた。
「全てを負う覚悟など、当の昔にできています。」
応え終わった途端、頭にズシリと王冠が載せられる。王族の一員として、認められた証だった。
「よかろう、では、褒美として、今この場でお前たち二人の結婚を認め、誓いの儀式を執り行う。」
止まっていた音楽が、楽師たちによって再開される。チェンバロの低音に合わせ、弦が弓でこすられ美しい堅琴の音色が響き渡る。
「団長ッぉおお!おめでとうございますッ!」
「アネラ~~っ!!! 嫌になったらいつでも僕のとこにおいでよ~!」
ーーーったく、こいつらほんっと自由だな•••••。
エドゥとナイールの叫び声にも近い彼らなりの祝福の言葉が、跪いていたオレの上から降ってくる。見上げるとアネラと目が合い、思わずクスリッとお互いに笑ってしまう。
カツンッと靴音がし、エドゥの隣にシルバー色の髪を小綺麗に整え正装をしたレオが立った。
「ユオン、いや、ユーリ王子、おめでとう!」
黒い瞳を細め、ニコニコと笑っている。
「レオ、照れるから今さらよしてくれ••••••! 今まで通りユオンでいい••••。」
「ふふっ、じゃあ、これからも遠慮なくいかせてもらうよ?」
レオには今でもたまに稽古をつけてもらっている。レオの闘い方は独特で、相手の力を利用しダメージを負わせるもので、相手が強いほど効果的な戦闘法だ。騎士団の中では敵なしのオレだが、闘い方の癖を知り尽くし、人の心理を読む事に長けたレオには、まだまだ敵わない。
「ああ、望むところだ!!」
「私もまだまだ健在だ。たまには私もお前たちの稽古に混ぜてもらおう。」
•••••••!?•••••••
父上が突然話に割って入った。
「ヴィルヘルムッ!悪い冗談だ••••。僕の自信が打ち砕かれそうだから止めてくれっ!」
レオの穏やかな声が楽しそうに弾む。
「そうか•••? ワハハッッ!!! 」
ーーーーんっ?レオっていつも父上の前ですっげぇかしこまってなかったか•••??? しかも、父上まで••••!
でも、父上のこんな楽しそうな顔を見るのは久しぶりだ•••••!!
オレは立ち上がり、白のドレスを纏ったアネラの隣に立つ。泣き腫らし、真っ赤になり潤んだ栗色の瞳が、オレを見つめている。
ーーー綺麗だ•••••。
同じ女性に、何度も何度も恋をする。
オレは服の上から、自分の心臓を掴むように強く手で押さえた•••••。胸の奥が苦しくなるぐらいに切なくて、、、、愛しかった、、、、。彼女とこの世界で出会えたことが嬉しくて、、、言葉がすべて陳腐に思えてしまうほどの、深いところからとめどもなく湧いてくる愛としか呼べない感情が、自分の身体を埋め尽くしていく••••••。
オレは、彼女の肩を抱き寄せ、その赤い唇に口付けをした。
広間にいる客たちの鳴り止まない拍手と、風魔法の騎士たちが気を利かせて、降らせる色とりどりの花々の祝福のなか、アネラは太陽のような笑顔を見せた。
オレは世界で一番愛しい人を腕に抱き、皆の祝福に応えるように片腕を上げ、風により運ばれてくる花々を受け取る。
隣に立つアネラが涙ぐんだ声で、「ユオン••••! ユーリ王子は、私の初恋の少年だったのよ••••!」と、はにかみながら耳元で打ち明けてくれる。
ーーー何度、オレを虜にすれば気が済むんだろう••••?
「アネラ、オレの初恋も、実はあなただったんですよ!」
ーーーずっと••••••ずっと、あなただけを一途に思い続けてきた。ーーーそう明かすと、ポッと頬を染めて、長い睫毛を揺らし、照れる彼女に、オレは心の中で、この先も変わらぬ愛を捧げる。
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