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第ニ章 シエルとの結婚撤回に全力を尽くします!!
15 文字を使う魔道騎士
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広い邸内には、寛げる空間があちこちにある。中でもアフタヌーンティーをいただくラウンジには、私もしょっちゅうお邪魔していた。
案内されたラウンジには、すでにティーカップ一式が用意され、美しい音色の歓迎の音楽が流れていた。
シエルが引いてくれた椅子に腰掛けると、遅れておじ様たちも入室し、皆が揃う。
(何としても結婚撤回の言葉を引き出すわ。)
全員が揃ったのを見届け、使用人が熱々の紅茶とミルクポットをカートに乗せて運んで来た。
そして、私の席に用意してあった空の陶器のティーカップに紅茶を注いでくれる。湯気とともに、ローズの甘く爽やかな香りがふんわりと匂いたった。
(いい匂い! この香りは、庭にあった空色のバラの匂いだわ!)
「皆さま、今日はひまわりのゼリーを作ってきました。よければそれも食べてくださると嬉しいわ。!」
シエルに持ってきてもらったバスケットを受け取り立ち上がる。使用人の女性が、1人1人に熱い紅茶を注ぐそばで、花形の容器に入れたゼリーをカゴから取り出した。
(ここが肝心よ。不自然にならないように、セカセカ落ち着きがない様子を演出しないと!)
当然ながら、ゼリーの容器を置くだけよりも、カップに紅茶を注ぐ方が時間がかかる。私は待ってる間、コツコツとハイヒールの音を鳴らしながら、部屋をウロウロと一周してみる。
「お手洗いかな?」
おじ様が気を利かせて小声で聞いてくれるが、違います!
「体力が有り余ってるだけでは?」
じとぉぉぉっとした目で、こちらを見ながらテオドールが呟く。
(んー、近いっ!ーーーではこれはどう?)
使用人の女性が部屋から退出したのを見送ると、私は、わざとガシャガシャと大きな音を立ててゼリーをテーブルに置いてみる。
「ふふっ、リーチェちゃん、緊張してるのね。」
「ただの不器用でしょ。」
おば様の言葉に、テオドールがハァ~と大きなため息をつく。
(これもイマイチ?? ならばこれは?)
シエルのところにゼリーを置くフリをして、わざとグラスを倒し、水をぶっかけた。
(あ、ちょっとやりすぎちゃった! )
さすがに紅茶はやけどしちゃうから遠慮したのに、思ったより勢いよくグラスから水が飛び出てしまった。
「は?」
シエルの着ていたシャツの襟元がずぶ濡れになる。それまで呆れる様子で私を見ていたシエルの口がさらにポカンと開く。
「ごめんなさいっ、シエル! ハンカチ、ハンカチッ、あっ、ハンカチを忘れたっ!」
わざとらしく大声をあげた後、「失礼ッ!」と近くのナプキンを手に取った。シエルの首元の濡れた部分をゴシゴシと拭くが、ナプキンだけでは全然足りない。とりあえずシャツの襟元に向かって、乾くようにと、フーッフーッと全身全霊で息を吹きかけた。
「な、なっ、リーチェ、止めろ! くすぐってぇっ!」
腕で首元を隠されてしまった。腕輪からプシュンッと何とも力の抜けた水泡が現れ割れた。隙間から覗く耳元が真っ赤になっている。
(え? そんなにくすぐったかった? もっと嫌がって欲しいんだけど。)
「あら、随分大胆ね!」
「若くて羨ましいな。私たちもそんな時代があったね。」
おじ様がおば様を優しげな目で見つめ、2人の世界に入ってしまう。
「あなた!」
シエルの両親はこれくらいでは動じないみたいだ。
(これは根本的に作戦を考え直す必要があるかしら?)
「少しは恥じらいってもんがないわけ?」
テオドールは苛立ちを隠さず、不審者を見るような目つきで私を見る。
「んー、50点!」
「は?」
(期待していた反応と違う。もっと罵ってくれても良くてよ!)
「何か調子狂うんだけど。ーーー兄様!兄様は本当にコレでいいのですか?」
テオドールがダンッと拳でテーブルをたたき、耳元で真っ赤な欠片がピョコンッととび跳ねた。
「テオにもそのうち分かンだろ。オレ、ちょっと着替えてくる。」
シエルがびしょ濡れになったシャツを掴んで、パタパタと乾かすような仕草で立ち上がり、扉へと向かう。
白いシャツがペシャッと張り付き肌が透けている。色艶の良い唇と頬が赤く染まり、すごい色気だ。
(幼馴染だからと友達感覚でずっといたけど、シエルも一応異性なのよね。)
「せっかくなんだから、3着ぐらい上着を持ってきて、リーチェちゃんに選んでもらいなさい!」
「シエルにはちょっと刺激が強すぎたな。」
おば様がドアの向こうのシエルに声をかけると、隣でハハッと楽しそうにおじ様が笑う。
「兄様のことは、絶対渡さないっ!」
予想に反し和やかな空気の中、ただ一人、テオドールだけがギロッと焦茶色の瞳で睨み、口をぷぅ~と膨らませた。
「それよ、それ!」
「は?」
(その反応が欲しかったの!)
こうして茶会が無事に?進行する中、それはあまりにも突然起こった!!
おじ様が急に立ち上がり、私とテオドールを手で制する。そして鋭い目でツカツカと窓へと近づき、そっと開けようと腕を伸ばした途端、
ガシャッガシャッシャーン!!!
ガラスの割れる音と共に凄い突風が吹きつけ、窓の真ん前にいたおじ様が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。不気味な鳴き声が辺りに響く。
『キーーーーーーーッ!イギーーーッ! キーーーーーーーーーーーーーッ!!!』
細かいガラスの破片がおじ様の肩や腕に刺さり、血が滲んでいる。脂汗がジワリと滲み、息が苦しそうだ。うずくまり、荒い息を吐いている。肋骨が折れ、肺がやられてるのかもしれなかった。
咄嗟に魔法を使ったのだろう。肘から手の甲にかけて、何やら不思議な文字が浮かび上がっている。”藍” の色はパッと現れそして消えていく。まるでページがめくられるように、おじ様の腕に1章節ずつ次々と文字が出現した。
(そう言えば、おじ様は文字とともに魔法を使う魔道騎士だったのだわ。)
シエルが文字を使わず、吟唱で魔法を使うのとは対照的だ。
「あなたッ!」
「おじさま!」
「・・・ッ!? 屋敷に防御魔法をかけたがいつまで保つか・・・。テオ、皆を守るんだ。」
「とーさまっ!」
窓の外から耳をつんざくような鳴き声が聞こえてくる。部屋の中にいても、ミシミシと壁が軋む音が迫ってくる。
(魔獣だ。なぜ今ここに・・・? シエルは?)
案内されたラウンジには、すでにティーカップ一式が用意され、美しい音色の歓迎の音楽が流れていた。
シエルが引いてくれた椅子に腰掛けると、遅れておじ様たちも入室し、皆が揃う。
(何としても結婚撤回の言葉を引き出すわ。)
全員が揃ったのを見届け、使用人が熱々の紅茶とミルクポットをカートに乗せて運んで来た。
そして、私の席に用意してあった空の陶器のティーカップに紅茶を注いでくれる。湯気とともに、ローズの甘く爽やかな香りがふんわりと匂いたった。
(いい匂い! この香りは、庭にあった空色のバラの匂いだわ!)
「皆さま、今日はひまわりのゼリーを作ってきました。よければそれも食べてくださると嬉しいわ。!」
シエルに持ってきてもらったバスケットを受け取り立ち上がる。使用人の女性が、1人1人に熱い紅茶を注ぐそばで、花形の容器に入れたゼリーをカゴから取り出した。
(ここが肝心よ。不自然にならないように、セカセカ落ち着きがない様子を演出しないと!)
当然ながら、ゼリーの容器を置くだけよりも、カップに紅茶を注ぐ方が時間がかかる。私は待ってる間、コツコツとハイヒールの音を鳴らしながら、部屋をウロウロと一周してみる。
「お手洗いかな?」
おじ様が気を利かせて小声で聞いてくれるが、違います!
「体力が有り余ってるだけでは?」
じとぉぉぉっとした目で、こちらを見ながらテオドールが呟く。
(んー、近いっ!ーーーではこれはどう?)
使用人の女性が部屋から退出したのを見送ると、私は、わざとガシャガシャと大きな音を立ててゼリーをテーブルに置いてみる。
「ふふっ、リーチェちゃん、緊張してるのね。」
「ただの不器用でしょ。」
おば様の言葉に、テオドールがハァ~と大きなため息をつく。
(これもイマイチ?? ならばこれは?)
シエルのところにゼリーを置くフリをして、わざとグラスを倒し、水をぶっかけた。
(あ、ちょっとやりすぎちゃった! )
さすがに紅茶はやけどしちゃうから遠慮したのに、思ったより勢いよくグラスから水が飛び出てしまった。
「は?」
シエルの着ていたシャツの襟元がずぶ濡れになる。それまで呆れる様子で私を見ていたシエルの口がさらにポカンと開く。
「ごめんなさいっ、シエル! ハンカチ、ハンカチッ、あっ、ハンカチを忘れたっ!」
わざとらしく大声をあげた後、「失礼ッ!」と近くのナプキンを手に取った。シエルの首元の濡れた部分をゴシゴシと拭くが、ナプキンだけでは全然足りない。とりあえずシャツの襟元に向かって、乾くようにと、フーッフーッと全身全霊で息を吹きかけた。
「な、なっ、リーチェ、止めろ! くすぐってぇっ!」
腕で首元を隠されてしまった。腕輪からプシュンッと何とも力の抜けた水泡が現れ割れた。隙間から覗く耳元が真っ赤になっている。
(え? そんなにくすぐったかった? もっと嫌がって欲しいんだけど。)
「あら、随分大胆ね!」
「若くて羨ましいな。私たちもそんな時代があったね。」
おじ様がおば様を優しげな目で見つめ、2人の世界に入ってしまう。
「あなた!」
シエルの両親はこれくらいでは動じないみたいだ。
(これは根本的に作戦を考え直す必要があるかしら?)
「少しは恥じらいってもんがないわけ?」
テオドールは苛立ちを隠さず、不審者を見るような目つきで私を見る。
「んー、50点!」
「は?」
(期待していた反応と違う。もっと罵ってくれても良くてよ!)
「何か調子狂うんだけど。ーーー兄様!兄様は本当にコレでいいのですか?」
テオドールがダンッと拳でテーブルをたたき、耳元で真っ赤な欠片がピョコンッととび跳ねた。
「テオにもそのうち分かンだろ。オレ、ちょっと着替えてくる。」
シエルがびしょ濡れになったシャツを掴んで、パタパタと乾かすような仕草で立ち上がり、扉へと向かう。
白いシャツがペシャッと張り付き肌が透けている。色艶の良い唇と頬が赤く染まり、すごい色気だ。
(幼馴染だからと友達感覚でずっといたけど、シエルも一応異性なのよね。)
「せっかくなんだから、3着ぐらい上着を持ってきて、リーチェちゃんに選んでもらいなさい!」
「シエルにはちょっと刺激が強すぎたな。」
おば様がドアの向こうのシエルに声をかけると、隣でハハッと楽しそうにおじ様が笑う。
「兄様のことは、絶対渡さないっ!」
予想に反し和やかな空気の中、ただ一人、テオドールだけがギロッと焦茶色の瞳で睨み、口をぷぅ~と膨らませた。
「それよ、それ!」
「は?」
(その反応が欲しかったの!)
こうして茶会が無事に?進行する中、それはあまりにも突然起こった!!
おじ様が急に立ち上がり、私とテオドールを手で制する。そして鋭い目でツカツカと窓へと近づき、そっと開けようと腕を伸ばした途端、
ガシャッガシャッシャーン!!!
ガラスの割れる音と共に凄い突風が吹きつけ、窓の真ん前にいたおじ様が吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。不気味な鳴き声が辺りに響く。
『キーーーーーーーッ!イギーーーッ! キーーーーーーーーーーーーーッ!!!』
細かいガラスの破片がおじ様の肩や腕に刺さり、血が滲んでいる。脂汗がジワリと滲み、息が苦しそうだ。うずくまり、荒い息を吐いている。肋骨が折れ、肺がやられてるのかもしれなかった。
咄嗟に魔法を使ったのだろう。肘から手の甲にかけて、何やら不思議な文字が浮かび上がっている。”藍” の色はパッと現れそして消えていく。まるでページがめくられるように、おじ様の腕に1章節ずつ次々と文字が出現した。
(そう言えば、おじ様は文字とともに魔法を使う魔道騎士だったのだわ。)
シエルが文字を使わず、吟唱で魔法を使うのとは対照的だ。
「あなたッ!」
「おじさま!」
「・・・ッ!? 屋敷に防御魔法をかけたがいつまで保つか・・・。テオ、皆を守るんだ。」
「とーさまっ!」
窓の外から耳をつんざくような鳴き声が聞こえてくる。部屋の中にいても、ミシミシと壁が軋む音が迫ってくる。
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