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参話、「俺は錯覚しているのかも知れない。」

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「居場所」とは何だろうか...
誰にでも分かるようで、何処か掴み所がない概念だ。
安全感を感じられる場所...受け止めてもらえる場所...
俺が思うにこの世に居場所と言うものは二つある。
ひとつは「役に立っていると感じられる場所」、もう一つは「ありのままでいられる場所」
きっと俺の力で俺の居場所を作る事はできないだろう、今までも、これからも。
LINEで

「来週の土曜一緒に勉強しない?」
「勉強ですか、待ち遠しい限りですね。」
「勘違いされると困る。貴方が落単して周りに貴方の頭の弱さが露悪すると、一緒にいる私の株が落ちるのよ。」とツンデレのテンプレとも呼べる返事が返ってきた。
「美麗のツンデレなところとか理屈っぽい話し方とか本当に昔から変わらないですよね。一見トゲのある話し方だけど本当は愛があるって感じ」
「やっぱり無しにしてもいいのよ。」
「ん...で、場所はどこにするんですか?」
「全く....突然私が貴方の家に押しかけるのも迷惑になるだろうから私のとこ来なさいよ。」
「....了解です」

次の日。

俺は庭園に向かった、着くと誰か先客がいる。そう、美麗。
「重役出勤は見逃せないわよ」と言って手をつねってくる。
「また、物乞いですか?」
「人聞きの悪いこと言わないでくれる?なにせ、私達には御恩と奉公の関係があるんだしさ」
「ど、どういう事」
「貴方は私にパシられて、その分の御恩としてパンを買ってきているこの関係のことよ。」
「⋯その自分勝手な理論を俺に詭弁しないでくれます?」
「あら?違った?」
「ま、まぁ強ち、間違ってはないですけれど」
「じゃあ、この関係は引き続き維持で。さてと、そんな事はどうでもいいのよ。パンは?」
「メロンパンとチョコパン買って来ました。」と言うと美麗はワーッと顔を明るくし、両方の袋を開け始め2つ一気にかじりついた。
普段はムッとしているが笑うと本当に愛くるしい顔をしている。
「ってなんで両方食べるんですか」
「うるさいわよ。貴方はお·預·け」
「全く....」
「ところでさ、明日忘れないでよ」
「あ、そうか明日は土曜日か」
「じゃあそろそろ授業だから私行く、詳しいことは後で連絡するから、パンご馳走様。おいしかった、それじゃあ」と言い行ってしまった。


土曜日。

俺は珍しく早朝に目が覚めた。まだ、寝起きで頭は半分トロトロとした意識の中に沈んでいた。俺はあくびをしながらカーテンを開けると空が綺麗に黄色に染まっている。
俺はまた「朝靄のなかに明けて行く水みずしい外面ってか」と格好をつけて呟いた。
結局朝の7時に駅前集合で朝食を取ってそれから美麗の家に行くことになった。
15分前駅に着くとまだ美麗はいなかったが暫く待っていると美麗がやって来た。
「いやぁ、今日天気いいから勉強やめてどっか行きたいですね」と冗談半分で言った。
「ダメ。落単させるわけにはいかないから」
「ですよね、知ってました。」
俺たちは近くのカフェに入って朝食を取り終わると美麗の家に向かった。

自宅に到着し、

「ここが私の家よ」と言ってドアを開けると、俺はこの場に来て初めて緊張し出した。なぜか、俺はかつて人生で一度も女性の家に上がるなんてことがなかったからだ。
なんだか神聖な場所に踏み入るような感覚に陥り、尻込んでいると、
「何しているの?早く入って」と言われた。
「お、お邪魔します。」
家の中に入るとほんのり美麗の柔軟剤の香りがした。
「いらっしゃい、お茶でも入れるから先に座っといて」
「あ、そんな気を使わなくていいですよ。」
「いいから勉強の準備しておいて」
「....わかかりました。」
俺は和室に通され、周りを見ると洗濯物が掛かっていて、中には下着らしきものも混じっていた、「なんで取り込んでおかないんだよ目のやり場に困るだろう、」なんて考えていると、美麗がお茶やお菓子をお盆に乗せて戻ってきた。
「お待たせ、始めようか」と言い俺の向かいの席に座った。俺は彼女の方を見るとその姿に俺は見惚れてしまった。「甘やかされた愛らしい少女のような引っ掛かりのない」と言ったらうまく伝わるだろうか....まさにそんな感じがした。
彼女はIN THE  ZONE と胸元に書かれた耳付きのフードパーカーを着ていた。
「なんですか、その格好」と小馬鹿にするように言うと、
「いいじゃない、この服着ると集中できるのよ。」と少し恥ずかしそうに下を向き筆箱を漁りながら言った。
「分からないとこあったらいつでも聞いて」
「あ、はい」

暫くして、

聞いていいよと言われたので早速聞いてみることにした。
「これってどういう事ですか?」と日本史の近現代の範囲を聞くと美麗はよくぞ聞いてくれたとも言いたげな顔をしたので俺は一瞬で悟った。「あ、やってしまった」と
「貴方はこんな常識的なのもわからない訳ね、いいわ、私が一から教えてあげるわよ。」と言い、案の定その後は止まる事はなかった。

3時間後

「はぁ、そろそろ休憩にしましょうか」

「そうですね、そろそろいい時間だし、お腹も空いてきました。」
こちらから聞いておいて悪いがやっと終わった。と正直なところ思った。
「....なら、私が作る、いつもパンもらっているのだし」
「いや、全然俺そんなふうに思ってないし、むしろって感じだし、それに罪悪感あるなら初めから取らなくても...」
「じゃあ私の料理練習に付き合うつもりで」
「それならまぁ...」
「机の上綺麗にして待っていて」
何を作ってくれるのだろう、美麗も自分で料理を作るのかずいぶん成長したもんだなぁと感傷に浸っていると、「はい」と見るからに冷凍のチャーハンを持ってきた。
これは果たして料理と呼べる物なのだろうか、分かってはいたが一応聞いた。
「あ、ありがとう、美味しそうですね、どうやって作ったんですか?」
「フライパンで炒めた。」と勝ち誇ったような顔を俺に向けていた。
まさか俺がレンジでチンしたと思っていると気づいていたのだろうか。
「いただきます」
「美味しい?」
誰が作っても味は一緒だろうと思いながらも俺は「美味しいです」と答えた。
「ところでさ、期末試験終わったら、久しぶりに地元の花火大会に行きませんか?」
「そうね、いいわよ。期末試験をちゃんとクリアしたら、相応のご褒美もあげるわよ。」
「え、ご褒美すごい事期待してもいいですか?」
「貴方の言う凄いことが何かは知らないけど、少しくらい甘やかして上げてもいいんじゃ無いかしら?」
「うん、期待してます。」

それからはゴールが明確に見えたことにより俺は午前中よりも勉強に熱が入り、瞬く間に時間が過ぎて、勉強会は深夜まで続いた。

「はぁ、今日は終わりにして次回に持ち越しましょうか。」
「そうですね、そろそろ睡魔に囚われて来ました」
「まだ電車あるわよね。」
「多分、15分後に終電があると思います。」
美麗が駅まで送って行くと言っていたので俺は帰り支度を足早に済ませ、美麗の家を出た。

改札前にて。

「それじゃあ、また学校で」
「それじゃあ、気をつけて」と美麗に見送られて改札を抜け、階段を降りると既に、電車が到着しドアが開いていた。「プシューバンッ」ドアが閉まってしまった。
「(あ、終わった)....どうするか....」
取り敢えず改札を出て、タクシーで帰宅することにした。
駅のロータリーで街頭に集る無数の虫を眺めながらタクシーを待っていると、
「あ、カイリ」とコンビニから出てきた美麗がいた。
「どうしたの?」
「電車の時間見間違えて、終電逃してしまって.....」
「はぁ、貴方の脳、溝が寄生虫で詰まってるんじゃないかしら?」と言われ俺が少し下を向きニヤニヤしていると
「喜ばない」と言って俺の足をヒールのかかとで踏んできた。
「ちょっ、痛てててっっ、折れるって」
「...まぁ誘った私の責任でもあるわけだし、でも生憎今持ち合わせがないのよね。明日も早い事だから、今日はうちに泊まって行ったらどう?」
「美麗......「ウルッ」是非」
かくして、俺は美麗の家に泊まることになった。

美麗宅到着後。

「先に風呂入ってしまって、私は洗い物あるから」
「いえ、洗い物は俺がやるんで美麗は風呂に浸かってゆっくりしてきてください。」
「そう、ならお願い」とすんなり受け入れた。暫くして、俺が洗い物をしていると、後ろでガサゴソ音がするので後ろをふと向くと俺は戦慄した。
いくらなんでも男がいるのに無防備すぎだろう....そこには下着姿のまま鼻歌を歌い押し入れを漁っている美麗がいた。
俺が見ていると視線に気づいたのか、彼女と目があったので「まずい」と思い俺は咄嗟に顔を背けた。
すると美麗は「変態」と機械的な声で言った。
「いや、その、なんでそんな無防備な格好で歩き回っているんですか...一応俺がいるんですけど、」
「だってカイリにはまだそんなことできる度胸は無いじゃない??」
図星を突かれたで、ぐうの音も出なかった。
そう言うと鼻歌を歌いながら、ワザと俺に体を見せつけるようにして脱衣所に向かって歩いて行った。 
「........///」
俺は反射的に目を下に逸らした。
「.....チェリーさん」と俺を小馬鹿にする様にニヤニヤしながら言った。
これには流石に頭にきたので、
「いい加減起こりますよ?」と言うと
美麗は「キャーッ」と言いながら走って脱衣所に向かった。
「...俺だってその気になれば...」
俺の視線の先には美麗の下着があった。
干し忘れたのだろうか...手に取ると僅かだが温もりを感じた。
俺は確信した「間違いない、これは落とし物だ。」と
「......」反射的におれは匂いを嗅い
だ。
柔軟剤のほんのりいい香り....初夏ということもあり、ほんの少しだけ汗の匂いもした。
すると俺は勝ち誇ったかの様な感覚に陥ると同時に、我に返った。
「俺は何をしているんだ?精察までして、俺はムリエかなんかか?」
下着を落ちてた場所に戻そうとすると、美麗が風呂から上がり、再び下着姿でトコトコと歩いてきた。
俺はは咄嗟にポケットの中に捻じ込み、残りの洗い物をした。
「私の脱いだ下着知らない?確かこの辺に置きっぱなしだと思ったんだけど」
「(まずい....)」
それ今僕のポケットにあります、なんて言ったら一貫の終わりだ、まさに絶体絶命。
どうやって切り抜けるか.....一応其の場凌ぎの言葉を言っておいた。
「いや、ここにはありませんでしたよ。洗濯機の中にあるんじゃないですか?」
「そうかな、もう一回確認してくる」と言ってすんなり歩いていった。
俺は速攻でポケットから下着を取り出しなるべく自然な形でソファーの隅にポイっとし、まだ洗い物をしているフリをした。
「やっぱり洗濯機の中無かった、あ!あった」
ソファーの下着を見つけたみたいだった。
たが、美麗は拾い上げると暫く下着を見ていた。
「(まずいまずいまずいまずい、完全に気づかれてやがる...)」
問い詰められる前に白状するべきかこのままシラを切り続けるか。
「見つけられて良かった」と言って洗濯機に入れた。
如何やら何も気づかれていない様だった。
それから俺は風呂を入り、歯を磨きを終えると恐らく美麗がやってくれたのだろう2つ布団が並んできれいに敷かれていた。
「もう寝る?」
「そうですね、もう布団入ります。」
「じゃあ私も」と言いお互いの布団に潜り込んだ。やはりと言ってはなんだが、女性と肩を並べて寝るなんて緊張する。
暫く俺が寝付けずにしていると、突然美麗が話しかけてきた。
「カイリ...はさ今幸せ?」
どう返せば正解なのか...確かに美麗と再会した事で最近の俺は舞い上がっている。
たが、今の俺は本当に心の底から「楽しい」「幸せだ」と言えるのだろうか...本当に俺の心は満たされているのだろうか、俺には分からなかった。
「どうでしょうね...自分でも分かりません。」
「そっか、私は幸せよ。いつかカイリにも分かると良いわね。」と美麗は返してきた。
暫くして、
「あの.....さ、こっち向いて」
「なんですか?」と言いい美麗の方を向くと下着姿で膝立ちをしていた。
「な!なにやってん...!?!?!?」
「.....別に今日じゃなくても良かったのかもしれないけど、遅かれ早かれ、知られることになると思うんだけどさ、見ての通り私の体、傷の跡がひどいんだよね。」
「確かに....これ、どうしたんですか?」
「体を売った事があるって言ったじゃない?私、お客さんに指名されて行ったんだけどやっぱり初めてで怖くなって、触られた時につい、拒否ってしまったの。そうしたらお客さんが激怒してきて私のこと切りつけてきたのよ。あ、カイリにどうしろとかそう言うんじゃないの。一応言っておいただけ、知らないでこう言うの見ると気持ちが冷めたりするでしょ。」
「そうだったんですか......(でも、なんで行為する前提で俺に話してくるんだ?まさか....)」
「やっぱりもうカイリも引いたわよね、まぁ、黒子くらいでも嫌がる人がいるくらいだからね」
「いや、そんなこと全く思ってないって、勝手に決めつけないでくださいよ。」
「無理しなくていいのよ。」
「思ってないって言ってるじゃないですか!もっと自分を大切にしてくださいその事で自嘲するのはやめて下さい!なんなら俺が今ここで証明して見せてあげますよ!」と言い自分の布団から這い出て美麗に近づくと、美麗は「え!?いや、!!」と戸惑っていた。
俺が戸惑う美麗を押し倒し馬乗りになると、涙目になっていて可愛かった。
この後のことを全く考えていなかったので暫く俺は馬乗りになったまま膠着状態になってしまった。
取り敢えず、俺はゆっくり美麗に顔を近づけてキスをしようとした。
すると美麗は俺のおでこを強めに指で弾いた。
「痛っ、え???」
「まだ、早い。ご褒美は期末試験の後って言ったはずでしょ。上手いこと言えば私が甘受するだなんて甘い考えは捨てなさい。」と月光に照らされ青白くなった顔の美麗が言った。

「なんですか、違ったんですか...いい雰囲気だったのに...」

と不満そうな顔をし、自分の布団に戻ると、

「でも、あんなこと言ってくれて嬉しかったわ。やっぱり貴方で間違っていなかったみたいね」

 「紛らわしいことやめてください。勘違いするんで」

「クスクスクス、そうね、ごめんなさいね、おやすみ」

「はい、おやすみなさい」
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