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1日目

ご飯

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体を洗われていくらか楽になった翔は、また不服なお姫様抱っこをされて風呂場からベッドの方へと連れてかれる。お兄さんはいつも軽々と翔を持ち上げてしまう。これもまた翔にとって少し不満だった。いくら小学五年生だからと言っても男のプライドがあるらしい。しかし、結局は上手く抵抗もできずに、いつの間にかお兄さんにひょいと持ち上げられてしまう翔であった。



もう部屋は暗くなってきていた。


お兄さんが電気をつけると、キッチンで何かをしだした。

廊下にお兄さんがいては逃げられない。大人しくベッドに座っていると、お兄さんのいるキッチンの方からは何かを包丁で切る音が聞こえてきた。

キッチンの方に寄って覗くと、玉ねぎを切っているところだった。

お兄さんは、翔が見ていることに気づいて声をかけてきた。

「お腹空いた?今から作るからちょっと待ってて」

翔は本当にこの人が分からなくなった。

さっきまで翔の体にたくさんの拘束具をつけて酷く荒々しい行為をしていたのに、今度は料理を作って、俺に食べさせようとしている。
テンションの差についていけなくなる。

しかし、翔のお腹は正直で、ぐ~と音を立ててお腹が空いたことを知らせてくれた。


お兄さんは親子丼を作ってくれた。
机の上に置くと、卵の黄色が照り輝いて、暖かくて美味しそうに見えた。
お腹が空いた翔は、食べたくて仕方がなかったが、お兄さんを少し警戒して目の前の食事を我慢する。

「食べていいよ?」

お兄さんは向かい側で自分の分を食べ始めた。
ばくばくと食べるその姿は翔の食欲を駆り立てた。
おそるおそるスプーンを取って食べ始めると、ふわふわの卵が甘い味付けになっていて、とても美味しかった。

はふはふ、と熱いのを口の中で冷ましながらガツガツと食べているとお兄さんが嬉しそうにこっちを見ていた。

「美味しい?」

「……うまい」




外がもう暗い。
もうこの様子だと7時ぐらいだろう。

翔はまた、ふと家族のことを思い出した。
今頃、いつも通りだったら家族と夕飯を一緒にとっている時間だ。
自分がいないことを心配されていそうだ。

早く逃げて帰りたいけど、夜になると外は怖いし、まず、お兄さんの隙をつくチャンスが来ないときっと逃げられない。お兄さんが寝てから逃げるのが一番いい気がする。

特に逃げるための具体的な計画もない翔はただチャンスが来るのを待つだけだ。

しかし、翔は知らないうちにお兄さんに世話をされるこの状況に少し馴染み出していた。
ご飯をたべたことによって、少しだけ警戒心が薄れて腑抜けているのにも翔は気づいていなかった。


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