上 下
2 / 55

Panic 2. マコリン

しおりを挟む
「ポワンはね!召喚した仲間に名前をつけてるの!...どの子にもポワンと一緒で、必ず『ン』をつけてるんだけど...マコちゃんには『ン』がない!!」
ポワンが悲しそうな顔で叫ぶ。
「ちょっと待って!『召喚』って...どういうこと?」
真子まこが混乱しながら問いつめるが、
「マコちゃん!マコちゃんの名前に『ン』をつけていい?」
そんな真子などお構いなしに、ポワンが尋ねてくる。
「そんなのどうでもいいわ!それより...」
真子がそう答えると、
「やった!いいんだ!...そしたら...」
ポワンはそれを聞くと、大喜びであだ名を考え始める。
「人の話を聞かない子ね!...まあ、いっか!」
うれしそうなポワンの顔を見て、真子がほっこりしていると、
「そうだ!マコちゃんの『マ』と『コ』の間に『ン』を入れて...マン...」
「ダメ~~~~~~!!」
ポワンの言おうとしたあだ名を、真子は大声を出して遮った。
「どうしたの?」
真っ赤になって慌てている真子に、ポワンは不思議そうに問いかける。
「そ、それはNGワードなの!それをみんなの前で口にしたり、みんなの目に触れる場所に書いたりしちゃいけないの!」
そう説明する真子だったが、
「でも、ここにはポワンとマン...」
「わ~~~~!!」
また大声でポワンの発言を邪魔した真子は、更なる説得を試みる。
「だ、誰が見てるか分からないでしょ!例えばそこにいる君とか!」
真子は画面の外を指差す。
「...どこ、指してるの?」
ポワンは真子の言動の意味が分からないようだったが、
「とにかく、お願いだからそれだけはやめて!!」
真子の必死な顔を見ると、
「...分かった...じゃあ...」
また新たなあだ名を考え始めたようだった。
(良かった...)
一安心の真子。
(まさか、私の名前にそんなトラップが仕掛けられていたとは...恨みますわ!お父様!)
真子は初めて、自分の名前に負の感情を持ったのだった。
そうしていると、
「じゃあ、マコリンは?マコリンがいい!!」
ポワンは笑顔で提案してくる。
「マコリン~~~~~?」
(子供っぽくて、超絶美少女の私には似合わないわね...でも...)
あまり乗り気ではない真子だったが、頭の中にさっきのとんでもないあだ名が思い浮かぶ。
(また、変なあだ名をつけられるよりは...ま、まあ、可愛いといえば可愛いあだ名よね!)
そう思い直した、真子ことマコリンは、ポワンに微妙な笑みを返した。
「そ、それでいいわよ!」
「わ~~~~~い!マコリン、よろしくね!」
大喜びのポワン。そんなポワンにマコリンは問いかける。

「ところでポワン!さっき、『召喚』って言ってたけど...」
それはマコリンにとって、聞き逃せない言葉だった。
「うん!言ったよ!マコリンはポワンが召喚したんだ!」
ポワンは何事もないかのように口にする。そんなポワンに、
「ま、まさか『ここは異世界で、私は召喚されてこの地に呼ばれてきました~~~』なんて言わないわよね!」
マコリンはにっこりと笑って話しかけた。
「言う!ポワンにとってはマコリンのいた世界が異世界だけどね!」
そう微笑み返すポワンに、
「また~~~~!ポワンちゃんったら、冗談が上手なんだから~~~!窓の外を見れば、いつもの景色が...」
歩きだすと、木製の開き窓から身を乗り出し、外を見渡すマコリン。
「・・・」
そこからは家庭菜園と、その向こうに、どこまでも広がる森林しか見えなかった。

菜園では、小人の姿をした妖精たちが、作物の手入れに余念がなかった。
「あっ!あれは『コビトン』!『童話の世界』から召喚したんだ~~!人のお手伝いが大好きなんだよ~~~!」
いつの間にか隣に来ていたポワンが、得意げに話す。

<キ~~~~~~!!>
甲高い声が、空から聞こえた。
「なに?」
マコリンが上を見上げると、そこには小型のドラゴンが。
「あれは『コドラン』!『ドラゴンの国』から召喚したの!一緒にお空を飛べるんだよ~~!...後、動物や魚を捕まえてきてくれるの!」
またポワンが説明する。そして、

<ズシ~~~~ン!...ズシ~~~~ン!...>
大きなロボットのようなものが、遠くから木を担いで歩いてきた。
「キャ~~~~~!!」
マコリンが悲鳴を上げていると、
「大丈夫だよ!あれは『ゴレムン』!『機械の国』から召喚したの!なんか『えーあい』搭載で高性能なんだって!」
ポワンは安心させるように一声かけると、言葉の意味を分かっているのか怪しい解説をした。

「他にも『ファンタジーの世界』から召喚した、料理の得意な『オークックン』でしょ!『おとぎ話の国』からは裁縫の得意な『オリヅルン』!」
ポワンが次々と召喚した仲間たちを紹介していく。

「そ、そう...使用人がたくさんいていいわね!...うちにも負けないわ!」
マコリンはまだ、信じたくないようだった。
そうつぶやきながら、フラフラと室内に戻っていくと、ポワンが追いかけてきて言った。
「でも、話し相手がいなくて寂しかったの!...だからマコリンの召喚に成功した時は、本当にうれしかったんだよ~~~!!」
ポワンの心からの笑顔に、
(か、可愛い!)
心をわしづかみにされたマコリンは、つい、余計なことを口にしてしまう。
「私だってポワンに会えてうれしいわよ!可愛いし、お胸も大きいし、あそこも可愛かったな~~~!!」
その言葉に、
「あそこって!!...マコリン、見たんだ~~~~!!」
ポワンが真っ赤になって、スカートの裾を押さえている。
「ゴ、ゴメン...だって下着もつけずに目の前で跳び上がってるんだもん!」
マコリンが失言に気が付いて、言い訳をしていると、
「マコリンだけずるい!...ポワンだってマコリンの見たい!」
ポワンはそう言うと、いきなりマコリンのスカートをめくりあげた。
「キャ~~~~~!!」
マコリンは悲鳴を上げ、スカートを押さえつけるが、ポワンは顔を中に突っ込んでしまっていた。
「あ~~~~~!こんなのはいてる!...脱いで!見えないじゃない!」
ポワンはマコリンの下着に手をかけると、思いっきり、下へと引っ張る。
「ダ、ダメ~~~~~!!」
マコリンは必死に下着を押さえて抵抗するが、少しずつ、ずれていってしまう。
そして、そこが姿を現し始めたその時!
<ゴツン!!>
鈍い音がポワンの頭から聞こえた。
「痛~~~~~!!」
頭を押さえて涙目のポワン。
「もう!そんなことするからよ!少しは反省しなさい!!」
マコリンは腰に手を当てお冠だ。
頭からはツノが、口からはキバが生えていた。

「マコリンは見たくせに...」
口を尖らせているポワンに、
「ポ、ポワンのは可愛いからいいのよ!...私のは...」
マコリンの顔が真っ赤になるが、
「そんなことない!きっと綺麗!!」
ポワンは真面目な顔で断言する。
「・・・」
それを聞いたマコリンは、少し頬を染めていたが、
「そ、そのうちね!」
そう口にするだけだった。
「...うん...」
恥ずかしげにうなずいたポワン。
しばらく二人の間に沈黙の時間が流れたが、ふと、マコリンが言った。

「で、元の世界に帰るにはどうしたらいいの?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...