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Legend 44. ハル、魔界へ
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「ん...おはよう...ハル...」
「おはようございます...ツィアさん...」
ツィアが起きると、すでにハルも目を覚ましていた。
お互い、挨拶をする。
「...なんか...恥ずかしいね!」
昨夜のことを思い出したツィアの顔が、ほんのり染まった。
「とっても...素敵な思い出です...」
ハルも目を潤ませながら言う。
「もう!帰ってきたらいくらでもしてあげる!...ってハルが良かったらだけど...」
ハルの言葉に笑って答えたツィアだったが、その意味を考えると赤面してしまった。
「はい...楽しみに...してますね!」
そんなツィアに、微笑み返すハル。
(あっ!また...)
ツィアは既視感を感じていた。
ハルの笑顔にときめかない。
するとハルがベッドから出る。
「お着替え、手伝いますね!...その...裸だと...目のやりどころが...」
そう口にしたハルの顔は真っ赤だ。
「!!」
ツィアも同じく、顔を赤くすると言った。
「そ、そうね!ハルも早く服を着て!」
「はい...」
名残惜しそうにワンピースを着ると、ハルはツィアの下着を拾い上げる。そして、
「じゃあ、これから...」
少し頬を染めながら、下着を広げるのだった。
(恥ずかしい!...下着をつけてもらうのが、こんなに恥ずかしいなんて...)
ツィアはハルの広げている布切れに、足を通しながら思っていた。
しゃがみ込んだ好きな人の前で、何もつけていない体で足を上げる。
顔は真っ赤に染まり、まともにハルの顔が見られなかった。
(下着、汚れてないよね!)
そんなことも気になるのだった。
次は、胸を隠す白い布。しかし、
「あれ?」
ハルが困っている。
ブラジャーのホックのつけ方を知らないらしい。
「ふふふ!こうするのよ!」
ツィアが手をとって教えてあげると、
「あ、ありがとうございます...」
ハルが頬を染めた。
「ふふふ!覚えておいてね!」
「はい...」
その会話にまた違和感。
(あれ?いつもなら、『はい!もう覚えました!次からはちゃんとつけてあげます!』とか真剣な顔をして言うのに...)
そうしているうちに、ハルがローブを持ってきた。
「ここからは大丈夫です!」
そう言いながら、慣れた様子で、ツィアに服を着せてあげる。
「もう紐の結び方も完璧ね!」
「へへへ!」
ツィアの褒め言葉にハルはうれしそうだ。
(これはいつも通りね...)
ツィアは不思議に思う。
(ハルの笑顔を見ると、今回みたいにうれしくなるはずなんだけど...昨日から、時々そうじゃない時がある...)
そんなことを考えていると、
「髪、梳かしますね!」
櫛を持ってきたハルが、ツィアの髪を梳かし始める。
「上手ね!ハル!」
「へへへ!」
その感触に身を任せていると、いつしかそんな疑問も忘れてしまっていた。
その後、ハルは朝食を作り始める。
朝食はいつも簡単なものだ。
日持ちのするパンとスープ。それにチーズやハムがついたりする。
今日はツィアの好きなチーズだった。
「うん!美味しい!」
うれしそうに食べるツィアを、じっと見つめているハル。
(なんかいつもより視線が熱いような...まあ、昨日あんなことがあったしね!)
また、違和感を感じたツィアだったが、これはさほど気にならなかった。
「じゃあ、出発しましょうか!」
そうハルに声をかけたツィアだったが、
「ご、ごめんなさい!...ちょっとやっておきたいことがあるので、先に外へ...」
ハルが突然、そんなことを言い出す。
「えっ?!...それなら私も...」
わざわざ寒い外で待つ必要もない。ツィアが椅子に座ろうとすると、
「ご、ごめんなさい!...人に見られたくないので...」
ハルがツィアを玄関へと押し出す。
「そ、そう?...それなら...」
そう言いながら、ツィアは考えていた。
(どうしたのかしら...私に見られたくないって...今までそんなこと...まさか!)
ツィアの頭に浮かんだのは、昨日、ハルの初めてを奪ったこと。
(もしかして、今も痛いんじゃ...悪いことしたな...)
そう思ったツィアは、大人しく外で待つことにした。
(し、仕方ないよね!)
☆彡彡彡
焚き火で体を暖めながら待つこと1時間。
「ご、ごめんなさい!!...思ったより手間取ってしまいまして...」
ハルが心底、申し訳なさそうな顔で、慌てて出てくる。
「いいの!...それより大丈夫?今日はアラブルとの戦いでしょ?」
ツィアが心配して聞くと、
「大丈夫です!そのための準備ですから...」
少し顔を伏せながら答えるハル。
「そうよね!体調管理は大事よね!」
そう言うツィアに、
「体調管理?」
ハルは首を傾げていたのだった。
☆彡彡彡
「・・・」
「・・・」
無言でダンジョン内を進んでいく二人。
(話したいことはたくさんあるのに...)
なぜか言葉が出ないツィア。
ハルはというと、ただ愛おしそうにツィアに抱きついていたのだった。
魔界へのダンジョンなので階層は深い。
しかし、ツィアは2回目なので最短経路を知っているし、魔物との戦闘もない。
あっけなく、最下層に着いた。
「着いちゃった...」
思わずツィアがそう口にすると、
「...そうですね...」
ハルも寂しそうに答える。
目の前には、魔界への扉。
ゆらゆらと黒い渦が揺らめいていた。
空間が歪んで繋がっており、その先は見えないし、音も聞こえてこない。
二人はしばらくその場に立ち尽くしていた。
「そ、それでは行ってまいります!」
「うん...気をつけてね!」
そう言葉を交わすと、振り返り、魔界への扉に向かって歩き出したハルだったが、
「あの!」
突然、振り向く。
「なに?」
ツィアが聞くと、
「よ、夜は寒いので布団は多めにかけて...」
ハルはそんなことを言い出した。
「ふふふ!ありがと!...じゃあ...頑張ってね!」
「はい...」
そして、また歩き出したハルだったが、
「えっと!」
また振り向いた。
「なに?」
ツィアの言葉に、
「りょ、料理はレシピを残してありますから、その通りに作れば...」
そう答えるハル。
「分かってるわよ!...ハルが来る前は自分でも作ってたんだから心配しないで!」
ツィアが安心させるように笑うと、
「それでは...」
「うん...」
またハルが歩き出す。しかし、
「その...下着が汚れている時はつけ置きを...」
また振り返り、ツィアの心配を始めた。するとそれを聞いたツィアは、
「そうね!それは大事かも...って下着の汚れ、見てたの?!」
真っ赤になってハルに問いただす。そんなツィアに、
「もちろん!...ツィアさんの服は下着も含め、隅から隅までチェックして、問題がないか確かめてます!!」
ハルが真剣な顔で答える。
「ま、ま、ま、まさか、においまで...」
ツィアが耳まで染めながら尋ねると、
「もちろん!...汗のにおいから、下着に染みついたにおいまで、良く嗅いで、きちんと処理してますから、いつも服は清潔ですよ!」
ハルは得意げに言った。
「わ、わ、わ、私、そんなにおいをハルに...」
ツィアは両手で顔を覆ってしまうが、
「大丈夫ですよ!ツィアさんのだと思ったら素敵なにおいに早変わりです!...最近はくせになってしまって...あのにおいを嗅がないと...」
ハルがちょっと頬を染めながら口にした言葉に、ツィアは顔を真っ赤にしながら、
「もう!ハルのエッチ!...早く行って!!」
強い感じでハルに言ってしまった。
「...分かりました...じゃあ...行きますね...」
ハルが寂しそうに答える。
(ちょっと言い過ぎたかな...これじゃまるでハルに早く行って欲しいみたい...)
その様子にツィアが後悔していると、ハルが口を開いた。
「...最後に...お願いがあるんですけど...いいですか?」
とても悲しそうな声だ。悪い予感がしたツィアは、
「最後って...」
そう口にしてしまう、
「『魔界に行く前の』最後っていう意味ですよ!」
ハルは努めて明るく振る舞うが、
「大丈夫?やっぱり私も行った方が...」
ツィアは心配でたまらない。しかし、
「それだけはやめてください!!」
「えっ?!」
いつになく強い調子で否定され、ツィアは驚いてしまう。
「あっ...その...ツィアさんが一緒だと...やりづらいですから...」
ハルはそんなツィアを見て、慌ててそう言った。
「...分かった...で、何をしたらいいの?」
ハルの決意が固いことを知ったツィアが、ハルのお願いとやらを聞くと、
「...私を...思いっきり...抱きしめて欲しいんです!!」
ハルが頬を染めつつも、真剣な眼差しで言う。
「...分かった!」
一つうなずくと、ツィアはハルに近づき、
「ハル!!」
「ツィアさん!!」
二人は思いっきり抱きしめ合うのだった。
しばらく離れない二人。
しかしその時はやってくる。
「じゃあ...行きますね!」
「あっ!」
ハルはそう言うと、顔を下に向け、一気に振り返ると、魔界への扉の向こうへと消えていった。
「ハル...」
呆然と立ち尽くすツィア。
(今...泣いてなかった?)
ゆらゆらと揺れる魔界への扉を前に、ツィアは不安を隠せないでいた。
「おはようございます...ツィアさん...」
ツィアが起きると、すでにハルも目を覚ましていた。
お互い、挨拶をする。
「...なんか...恥ずかしいね!」
昨夜のことを思い出したツィアの顔が、ほんのり染まった。
「とっても...素敵な思い出です...」
ハルも目を潤ませながら言う。
「もう!帰ってきたらいくらでもしてあげる!...ってハルが良かったらだけど...」
ハルの言葉に笑って答えたツィアだったが、その意味を考えると赤面してしまった。
「はい...楽しみに...してますね!」
そんなツィアに、微笑み返すハル。
(あっ!また...)
ツィアは既視感を感じていた。
ハルの笑顔にときめかない。
するとハルがベッドから出る。
「お着替え、手伝いますね!...その...裸だと...目のやりどころが...」
そう口にしたハルの顔は真っ赤だ。
「!!」
ツィアも同じく、顔を赤くすると言った。
「そ、そうね!ハルも早く服を着て!」
「はい...」
名残惜しそうにワンピースを着ると、ハルはツィアの下着を拾い上げる。そして、
「じゃあ、これから...」
少し頬を染めながら、下着を広げるのだった。
(恥ずかしい!...下着をつけてもらうのが、こんなに恥ずかしいなんて...)
ツィアはハルの広げている布切れに、足を通しながら思っていた。
しゃがみ込んだ好きな人の前で、何もつけていない体で足を上げる。
顔は真っ赤に染まり、まともにハルの顔が見られなかった。
(下着、汚れてないよね!)
そんなことも気になるのだった。
次は、胸を隠す白い布。しかし、
「あれ?」
ハルが困っている。
ブラジャーのホックのつけ方を知らないらしい。
「ふふふ!こうするのよ!」
ツィアが手をとって教えてあげると、
「あ、ありがとうございます...」
ハルが頬を染めた。
「ふふふ!覚えておいてね!」
「はい...」
その会話にまた違和感。
(あれ?いつもなら、『はい!もう覚えました!次からはちゃんとつけてあげます!』とか真剣な顔をして言うのに...)
そうしているうちに、ハルがローブを持ってきた。
「ここからは大丈夫です!」
そう言いながら、慣れた様子で、ツィアに服を着せてあげる。
「もう紐の結び方も完璧ね!」
「へへへ!」
ツィアの褒め言葉にハルはうれしそうだ。
(これはいつも通りね...)
ツィアは不思議に思う。
(ハルの笑顔を見ると、今回みたいにうれしくなるはずなんだけど...昨日から、時々そうじゃない時がある...)
そんなことを考えていると、
「髪、梳かしますね!」
櫛を持ってきたハルが、ツィアの髪を梳かし始める。
「上手ね!ハル!」
「へへへ!」
その感触に身を任せていると、いつしかそんな疑問も忘れてしまっていた。
その後、ハルは朝食を作り始める。
朝食はいつも簡単なものだ。
日持ちのするパンとスープ。それにチーズやハムがついたりする。
今日はツィアの好きなチーズだった。
「うん!美味しい!」
うれしそうに食べるツィアを、じっと見つめているハル。
(なんかいつもより視線が熱いような...まあ、昨日あんなことがあったしね!)
また、違和感を感じたツィアだったが、これはさほど気にならなかった。
「じゃあ、出発しましょうか!」
そうハルに声をかけたツィアだったが、
「ご、ごめんなさい!...ちょっとやっておきたいことがあるので、先に外へ...」
ハルが突然、そんなことを言い出す。
「えっ?!...それなら私も...」
わざわざ寒い外で待つ必要もない。ツィアが椅子に座ろうとすると、
「ご、ごめんなさい!...人に見られたくないので...」
ハルがツィアを玄関へと押し出す。
「そ、そう?...それなら...」
そう言いながら、ツィアは考えていた。
(どうしたのかしら...私に見られたくないって...今までそんなこと...まさか!)
ツィアの頭に浮かんだのは、昨日、ハルの初めてを奪ったこと。
(もしかして、今も痛いんじゃ...悪いことしたな...)
そう思ったツィアは、大人しく外で待つことにした。
(し、仕方ないよね!)
☆彡彡彡
焚き火で体を暖めながら待つこと1時間。
「ご、ごめんなさい!!...思ったより手間取ってしまいまして...」
ハルが心底、申し訳なさそうな顔で、慌てて出てくる。
「いいの!...それより大丈夫?今日はアラブルとの戦いでしょ?」
ツィアが心配して聞くと、
「大丈夫です!そのための準備ですから...」
少し顔を伏せながら答えるハル。
「そうよね!体調管理は大事よね!」
そう言うツィアに、
「体調管理?」
ハルは首を傾げていたのだった。
☆彡彡彡
「・・・」
「・・・」
無言でダンジョン内を進んでいく二人。
(話したいことはたくさんあるのに...)
なぜか言葉が出ないツィア。
ハルはというと、ただ愛おしそうにツィアに抱きついていたのだった。
魔界へのダンジョンなので階層は深い。
しかし、ツィアは2回目なので最短経路を知っているし、魔物との戦闘もない。
あっけなく、最下層に着いた。
「着いちゃった...」
思わずツィアがそう口にすると、
「...そうですね...」
ハルも寂しそうに答える。
目の前には、魔界への扉。
ゆらゆらと黒い渦が揺らめいていた。
空間が歪んで繋がっており、その先は見えないし、音も聞こえてこない。
二人はしばらくその場に立ち尽くしていた。
「そ、それでは行ってまいります!」
「うん...気をつけてね!」
そう言葉を交わすと、振り返り、魔界への扉に向かって歩き出したハルだったが、
「あの!」
突然、振り向く。
「なに?」
ツィアが聞くと、
「よ、夜は寒いので布団は多めにかけて...」
ハルはそんなことを言い出した。
「ふふふ!ありがと!...じゃあ...頑張ってね!」
「はい...」
そして、また歩き出したハルだったが、
「えっと!」
また振り向いた。
「なに?」
ツィアの言葉に、
「りょ、料理はレシピを残してありますから、その通りに作れば...」
そう答えるハル。
「分かってるわよ!...ハルが来る前は自分でも作ってたんだから心配しないで!」
ツィアが安心させるように笑うと、
「それでは...」
「うん...」
またハルが歩き出す。しかし、
「その...下着が汚れている時はつけ置きを...」
また振り返り、ツィアの心配を始めた。するとそれを聞いたツィアは、
「そうね!それは大事かも...って下着の汚れ、見てたの?!」
真っ赤になってハルに問いただす。そんなツィアに、
「もちろん!...ツィアさんの服は下着も含め、隅から隅までチェックして、問題がないか確かめてます!!」
ハルが真剣な顔で答える。
「ま、ま、ま、まさか、においまで...」
ツィアが耳まで染めながら尋ねると、
「もちろん!...汗のにおいから、下着に染みついたにおいまで、良く嗅いで、きちんと処理してますから、いつも服は清潔ですよ!」
ハルは得意げに言った。
「わ、わ、わ、私、そんなにおいをハルに...」
ツィアは両手で顔を覆ってしまうが、
「大丈夫ですよ!ツィアさんのだと思ったら素敵なにおいに早変わりです!...最近はくせになってしまって...あのにおいを嗅がないと...」
ハルがちょっと頬を染めながら口にした言葉に、ツィアは顔を真っ赤にしながら、
「もう!ハルのエッチ!...早く行って!!」
強い感じでハルに言ってしまった。
「...分かりました...じゃあ...行きますね...」
ハルが寂しそうに答える。
(ちょっと言い過ぎたかな...これじゃまるでハルに早く行って欲しいみたい...)
その様子にツィアが後悔していると、ハルが口を開いた。
「...最後に...お願いがあるんですけど...いいですか?」
とても悲しそうな声だ。悪い予感がしたツィアは、
「最後って...」
そう口にしてしまう、
「『魔界に行く前の』最後っていう意味ですよ!」
ハルは努めて明るく振る舞うが、
「大丈夫?やっぱり私も行った方が...」
ツィアは心配でたまらない。しかし、
「それだけはやめてください!!」
「えっ?!」
いつになく強い調子で否定され、ツィアは驚いてしまう。
「あっ...その...ツィアさんが一緒だと...やりづらいですから...」
ハルはそんなツィアを見て、慌ててそう言った。
「...分かった...で、何をしたらいいの?」
ハルの決意が固いことを知ったツィアが、ハルのお願いとやらを聞くと、
「...私を...思いっきり...抱きしめて欲しいんです!!」
ハルが頬を染めつつも、真剣な眼差しで言う。
「...分かった!」
一つうなずくと、ツィアはハルに近づき、
「ハル!!」
「ツィアさん!!」
二人は思いっきり抱きしめ合うのだった。
しばらく離れない二人。
しかしその時はやってくる。
「じゃあ...行きますね!」
「あっ!」
ハルはそう言うと、顔を下に向け、一気に振り返ると、魔界への扉の向こうへと消えていった。
「ハル...」
呆然と立ち尽くすツィア。
(今...泣いてなかった?)
ゆらゆらと揺れる魔界への扉を前に、ツィアは不安を隠せないでいた。
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