彩り

ガタヤマ

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本流

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授業が終わり、キャンパスの広場に

腰掛け、休んでいると


青彩の姿が見えた。

食事ができるような丸テーブル

を囲んで

誰かと一緒に会話をしている。

なぜか気になってしまった僕は

誰と話しているのか

目を凝らして見ると…



隣にいるのはヒッキーだった。


その瞬間、

僕の時(とき)が止まったような

感覚に襲われた。

自分でもよくわからなかった。

そして、いつの間にか

2人は立ち去っていた。


午後からあと1つ授業が残っていたが

行く気がしない。

周りの時(とき)は流れるが

1枚の葉が川の流れに迷い込み

留まるように僕も動けなかった。


辺りが暗くなりかけたとき

僕は我に返った。

もう既に大学にいるのは

職員と警備員の人たちだけであった。


僕は電車に乗って帰るしかなかった。

最寄りの駅に着いたら

自然と脚は行きつけの居酒屋に

流れていた。


「いらっしゃい!」


「ども」


「今日も2人かい?」


「いや、今日はひとり」


「珍しいね。じゃあ、カウンターにでも座るかい?」


「はい。」


マスターからいつもの生ビールと

この店絶品の串焼きが何本か出された。


「串焼きはサービスだ!」


「ありがとうございます。」


他の客も終電の時間が近づき、

お店には気づいたら

僕とマスターしか居なかった。


マスターはコップを洗いながら

声をかけてくれた。


「今日はどうしたんだい?」


「いろいろあって」


「恋でもしたのかい?」


「うーん、よくわかんないだよね~」


一連の話をマスターに伝えた。


「いいね~、青春だな~」


マスターの冗談交じりの言葉にも

僕は真面目に返す。


「自分で勝手に悩んで、何もできていないだけです。」


「そうかい、でも悩むってことは幸せなことじゃないかい。」


「なんで悩むことが幸せなの?」


「悩むってことは、それだけ大事な人ができた証拠だろ。」


そのとき、

僕の見える世界が変わった。

いろんな想いが混ざり合って、

濁った世界も悪くないと思えた。



次の日

ヒッキーと一緒の授業で

思い切って聞いてみた。

すると、


「次の授業がたまたま同じで、青彩に教えて欲しいところがある!って頼まれただけだよ。」


「あっ、そうなの?」


「この前電車で帰ったときに、その話になったんだよ。」


「なるほどね…」


僕はたったそれだけのことに

悩んでいたのが、本当におかしく

笑うしかなかった…


ただひとつだけ、

自分の中で動き出した感情があることに

気づいた時(とき)でもあった。
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