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第二部 四季姫進化の巻
第十五章 夏姫鬼化 9
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九
榎と椿は、急いで四季が丘病院に直行した。楸と柊も、髪飾りで連絡をとると、駆け付けてくれた。人探しなら、周辺の地理に明るい人手が多いほうが有り難い。
電話で聞いた奏の話によると、昨晩の間に綴の姿が消えたらしく、朝に看護師が検温に来たときには、病室がもぬけの殻になっていた。
病院の人達や、連絡を受けた奏も慌てて周囲を探したが、既に病院内に姿はなかった。
途方に暮れた奏は、榎なら何か知っているかもしれないと思い立ち、電話をかけてきたのだった。
「奏さん! 綴さんは、まだ……?」
病院の中庭で奏と合流した榎は、現状を尋ねる。だが、奏は青褪めた顔で首を横に振るばかりだ。
「病院の中や周囲は、くまなく探したのですが……。窓から外に出た形跡があるのですが、足が不自由なお兄さまが、誰の力も借りずに外に出るなんて、どう考えても無理ですわ」
綴の病室は、四階だ。健全な人間でも、抜け出すなんて至難の技だろう。
「じゃあ、誰かに連れ去られたの!? まさか、誘拐とか……」
「身代金の要求とか、来てへんのか?」
椿と柊が次々に尋ねるが、奏は否定した。
「いいえ、何もありませんわ」
「誘拐とは限りまへん。決めつけは、視野を狭めます。誰か、一緒に行動しそうな人物に、心当たりはおらんのどすか?」
「想像も、つかないのです。月麿に気配を探ってもらっているのですが……」
奏は今にも泣きそうな顔だ。綴の居所も、いなくなった原因も分からずに、疲労困憊していた。
「警察に連絡は?」
「父から、止められています。まずは事実を確認してからと」
「騒ぎを、大きくしとうないんどすな」
本当に誘拐なのか、それ以外の理由があるのかをはっきりさせなくてはならない。
だが、もし綴の身に危険が迫っていたら。訳も分からないまま戸惑っていては、手遅れになるかも知れない。
榎はじっとしてはいられなかった。
「あたしたちだけでも、探そう。みんなも、協力して欲しい」
みんなは大きく、頷いてくれた。
「ですが、車で連れ去られとったら、お手上げどす。まだ近くにおるとええんどすが」
手掛かりがなさ過ぎて途方に暮れていると、奏の携帯電話の着信が鳴った。
「待って、月麿から連絡ですわ」
忙しなく、通話をはじめる。奏の表情に、勢いが戻った。
「お兄さまの気配を、感知したそうです。まだ、四季が丘のどこかにいると」
月麿からの報告が、大きな進展をもたらした。
「遠くには、行っていないのね」
「気配が分かるなら、まだご無事どす」
「早いうちに、手分けして探したほうがええな」
効率よく捜索するために、地域を分担して作戦を練る。
みんなの話を聞きながら、榎はふと、中庭の隅に目をやった。ちょうど、綴がいた病室の窓の真下に当たる部分だ。綴の部屋は、今は窓も締め切ってあるが、今朝は開けっ放しになっていたらしい。
この場所から、綴は外に出て、どこかに消えた。でも、足跡も何も残っていない。まるで、空でも飛んで行ってしまったみたいに。
こんな芸当、人間にできるわけがない。
そう考えた瞬間。榎の中で嫌な予想が一本の線になって、繋がった。
「まさか……あの山に行ったのか?」
先日の、響と綴の手紙のやり取り。
あの中身が、綴に病院を抜け出す指示が書かれたものだったとしたら。
二人で示し合わせて、一緒に響の生活拠点である山に向かった可能性が高い。
「榎はん、何か心当たりが?」
楸が、榎の態度に気付いて、尋ねてくる。
「確証はないけれど、あたしのせいで、綴さんはいなくなったのかもしれない」
綴を助けるためにも、みんなに黙っているわけにはいかない。
榎は先日までの出来事を、かい摘まんで話した。
「―?では、お兄さまは、榎さんのお父さまを助けるために、悪鬼に連れられて病院を出たとおっしゃるのですか?」
青褪める奏の表情を見ていると、榎の中に罪悪感が広がっていった。
話を聞いても、誰も事件の発端である榎を責めない。周囲の気遣いが余計に、榎の胸を締め付けた。
「悪鬼の目的は? 何を要求してきたんや?」
「分からない。あたしは、手紙を運んだだけだから」
「もし、ほんまに綴さんが悪鬼に囚われておるなら、下手に手が出せませんな。綴はんだけやのうて、榎はんのお父はんの身も危険どす」
響が綴をどう扱おうとしているかは分からないが、妨害すればきっと、再び樫男を盾にとってくるだろう。
「どちらも、無事に助けられるかしら……」
「とにかく、悪鬼の居場所はご存知なんでしょう? 綴はんがほんまに悪鬼のところにおるんか、無事なのかだけでも確かめましょう。後は様子を見て、救出の手立てを考えるどす」
楸の提案で、榎はみんなを案内して響のいる場所に向かった。
***
四季が丘の外れの、山間地域。響が家を建てようとしている空き地までやってきた。
何も知らない樫男は、黙々と建設の準備をはじめているらしく、空地には重機や建設用の木材が運び込まれていた。
広場の端、杉の木がまだ密生する場所の側に、響が立っていた。榎達は杉林の影に隠れて、遠目に響を観察した。
響は、殺気を含んだ表情で、足元を睨みつけていた。視線の先を追ってみると、積み上げられた木材の影にうずくまる人影が視界に入った。
木材に背をもたれかけて、ぐったりと座り込む人物。病院服らしい恰好と白い頭髪が目に留まった瞬間。
榎は逆上して、響の前に飛び出していた。
「傘崎響! 綴さんから離れろ!」
榎の声に反応して、響は顔を上げた。ばつがわるそうな、面倒そうな表情で榎を見てきた。足元では、綴がうなだれていた。意識がないのか、腕はだらりと地面に垂れて、微動だにしない。
後ろから、椿達も榎を追い掛けてきた。響を取り囲み、いつでも変身できるように身構えた。
「綴さんに、何をしたんだ!?」
榎が声を荒げると、響は困った様子で肩を竦めた。
「まだ、何も。具合が悪くなったそうですよ。私が背負って山を登ってきたのですが、かなり体に負担があったらしい」
さっきまで、顔を覆っていた殺気は消えていた。だが、綴に向ける流し目は、明らかに邪悪な視線を放っていた。響の言葉を鵜呑みにはできない。
外野の騒ぎに反応して、綴の腕が動いた。頭が上がり、虚ろな目で榎達を見てくる。
「綴さん、大丈夫ですか!?」
「お兄さま、しっかりなさって!」
榎と奏が、必死で声をかけた。苦しそうだが、意識ははっきりしているらしく、榎達に反応を示した。
「榎ちゃん、奏……。僕を、追いかけてきたのか」
「どうして、病院から黙って抜け出したのです? 悪鬼に、何か脅迫でもされたのですか?」
奏の問い掛けに、綴は小さく鼻で笑って反した。
「今までの行いのツケが、回ってきただけさ。今のうちに、余計な問題は清算させておきたかったんだ」
「問題って……。綴さんと悪鬼との間に、何の関りがあるんです!?」
榎が慌てて尋ねるが、返事はなかった。口を開くより前に、綴は再び、気を失ってしまった。
「命に、別状はないと思います。長時間の慣れない移動で、疲労が溜まったのでしょう」
奏が冷静に、綴の状態を観察する。今のところ、大きな外傷は見られない。身の危険はないと分かり、少し安心した。
だが、不機嫌そうな響の姿が視界に入った瞬間、何の罪悪感も抱いていない態度に、榎の怒りが沸き上がった。
「綴さんに何かしたら、許さないといったはずだぞ!」
「何かするかどうかは、綴くんの返答次第だといったはずです。ただの病弱なお坊ちゃんかと思っていたら、とんだ食わせものだ。さんざん振り回されて、少し腹が立っているのですよ。あなたたちがもう少し遅く到着していれば、私の鬱憤も晴らせたかもしれないのに」
響の吐き捨てた返事は、更に榎を逆上させる。歯を食いしばり、響を睨みつけて殺気を飛ばす。
榎は百合の花の髪飾りを構え、力を込めた。
夏姫に変身し、ずっと持ち歩いていた、呪われた剣を構える。
剣はぼんやりと、濃い緑色の光を放ちはじめる。了生が貼ってくれた、呪いを抑え込むお札が、火を噴いて一瞬で灰になった。
後ろでは、椿達も変身して、榎の援護をする形で武器を構えてくれていた。
榎たちの敵意を受け取った響の表情が、冷たく凍りついた。目を細めて、榎に殺気を放ち返してくる。
「本気で来るのなら、私も約束を破りますよ? 小父さんの身の安全を、保障できなくなる」
「榎はん、落ち着いて! 下手に刺激したら、いかんどす」
人質が危険と判断した楸が、慌てて榎を制止にかかる。
だが、怒りで頭に血が上った榎には、周りの声が聞こえなくなってきた。
「黙れ! もう、お前の言葉なんて、信用しない!」
榎が約束を守っても、結局、大切な人を解放してはくれなかった。今もなお、盾として利用しようとしている。
悪鬼に誠意なんて期待した、榎が馬鹿だった。言葉で話して理解できない相手だと、再度理解した。
全身が、熱い。まるで、体中の流れる血が、沸騰して煮えたぎっているみたいだ。
腕が、足が榎の意図と関係なく疼きだす。頭が痛い。
強烈な力が内側から溢れ出して、爆発しそうだ。榎は地面に膝をついてうずくまり、大きな悲鳴を上げた。
榎の記憶は、その瞬間、完全に途切れた。
榎と椿は、急いで四季が丘病院に直行した。楸と柊も、髪飾りで連絡をとると、駆け付けてくれた。人探しなら、周辺の地理に明るい人手が多いほうが有り難い。
電話で聞いた奏の話によると、昨晩の間に綴の姿が消えたらしく、朝に看護師が検温に来たときには、病室がもぬけの殻になっていた。
病院の人達や、連絡を受けた奏も慌てて周囲を探したが、既に病院内に姿はなかった。
途方に暮れた奏は、榎なら何か知っているかもしれないと思い立ち、電話をかけてきたのだった。
「奏さん! 綴さんは、まだ……?」
病院の中庭で奏と合流した榎は、現状を尋ねる。だが、奏は青褪めた顔で首を横に振るばかりだ。
「病院の中や周囲は、くまなく探したのですが……。窓から外に出た形跡があるのですが、足が不自由なお兄さまが、誰の力も借りずに外に出るなんて、どう考えても無理ですわ」
綴の病室は、四階だ。健全な人間でも、抜け出すなんて至難の技だろう。
「じゃあ、誰かに連れ去られたの!? まさか、誘拐とか……」
「身代金の要求とか、来てへんのか?」
椿と柊が次々に尋ねるが、奏は否定した。
「いいえ、何もありませんわ」
「誘拐とは限りまへん。決めつけは、視野を狭めます。誰か、一緒に行動しそうな人物に、心当たりはおらんのどすか?」
「想像も、つかないのです。月麿に気配を探ってもらっているのですが……」
奏は今にも泣きそうな顔だ。綴の居所も、いなくなった原因も分からずに、疲労困憊していた。
「警察に連絡は?」
「父から、止められています。まずは事実を確認してからと」
「騒ぎを、大きくしとうないんどすな」
本当に誘拐なのか、それ以外の理由があるのかをはっきりさせなくてはならない。
だが、もし綴の身に危険が迫っていたら。訳も分からないまま戸惑っていては、手遅れになるかも知れない。
榎はじっとしてはいられなかった。
「あたしたちだけでも、探そう。みんなも、協力して欲しい」
みんなは大きく、頷いてくれた。
「ですが、車で連れ去られとったら、お手上げどす。まだ近くにおるとええんどすが」
手掛かりがなさ過ぎて途方に暮れていると、奏の携帯電話の着信が鳴った。
「待って、月麿から連絡ですわ」
忙しなく、通話をはじめる。奏の表情に、勢いが戻った。
「お兄さまの気配を、感知したそうです。まだ、四季が丘のどこかにいると」
月麿からの報告が、大きな進展をもたらした。
「遠くには、行っていないのね」
「気配が分かるなら、まだご無事どす」
「早いうちに、手分けして探したほうがええな」
効率よく捜索するために、地域を分担して作戦を練る。
みんなの話を聞きながら、榎はふと、中庭の隅に目をやった。ちょうど、綴がいた病室の窓の真下に当たる部分だ。綴の部屋は、今は窓も締め切ってあるが、今朝は開けっ放しになっていたらしい。
この場所から、綴は外に出て、どこかに消えた。でも、足跡も何も残っていない。まるで、空でも飛んで行ってしまったみたいに。
こんな芸当、人間にできるわけがない。
そう考えた瞬間。榎の中で嫌な予想が一本の線になって、繋がった。
「まさか……あの山に行ったのか?」
先日の、響と綴の手紙のやり取り。
あの中身が、綴に病院を抜け出す指示が書かれたものだったとしたら。
二人で示し合わせて、一緒に響の生活拠点である山に向かった可能性が高い。
「榎はん、何か心当たりが?」
楸が、榎の態度に気付いて、尋ねてくる。
「確証はないけれど、あたしのせいで、綴さんはいなくなったのかもしれない」
綴を助けるためにも、みんなに黙っているわけにはいかない。
榎は先日までの出来事を、かい摘まんで話した。
「―?では、お兄さまは、榎さんのお父さまを助けるために、悪鬼に連れられて病院を出たとおっしゃるのですか?」
青褪める奏の表情を見ていると、榎の中に罪悪感が広がっていった。
話を聞いても、誰も事件の発端である榎を責めない。周囲の気遣いが余計に、榎の胸を締め付けた。
「悪鬼の目的は? 何を要求してきたんや?」
「分からない。あたしは、手紙を運んだだけだから」
「もし、ほんまに綴さんが悪鬼に囚われておるなら、下手に手が出せませんな。綴はんだけやのうて、榎はんのお父はんの身も危険どす」
響が綴をどう扱おうとしているかは分からないが、妨害すればきっと、再び樫男を盾にとってくるだろう。
「どちらも、無事に助けられるかしら……」
「とにかく、悪鬼の居場所はご存知なんでしょう? 綴はんがほんまに悪鬼のところにおるんか、無事なのかだけでも確かめましょう。後は様子を見て、救出の手立てを考えるどす」
楸の提案で、榎はみんなを案内して響のいる場所に向かった。
***
四季が丘の外れの、山間地域。響が家を建てようとしている空き地までやってきた。
何も知らない樫男は、黙々と建設の準備をはじめているらしく、空地には重機や建設用の木材が運び込まれていた。
広場の端、杉の木がまだ密生する場所の側に、響が立っていた。榎達は杉林の影に隠れて、遠目に響を観察した。
響は、殺気を含んだ表情で、足元を睨みつけていた。視線の先を追ってみると、積み上げられた木材の影にうずくまる人影が視界に入った。
木材に背をもたれかけて、ぐったりと座り込む人物。病院服らしい恰好と白い頭髪が目に留まった瞬間。
榎は逆上して、響の前に飛び出していた。
「傘崎響! 綴さんから離れろ!」
榎の声に反応して、響は顔を上げた。ばつがわるそうな、面倒そうな表情で榎を見てきた。足元では、綴がうなだれていた。意識がないのか、腕はだらりと地面に垂れて、微動だにしない。
後ろから、椿達も榎を追い掛けてきた。響を取り囲み、いつでも変身できるように身構えた。
「綴さんに、何をしたんだ!?」
榎が声を荒げると、響は困った様子で肩を竦めた。
「まだ、何も。具合が悪くなったそうですよ。私が背負って山を登ってきたのですが、かなり体に負担があったらしい」
さっきまで、顔を覆っていた殺気は消えていた。だが、綴に向ける流し目は、明らかに邪悪な視線を放っていた。響の言葉を鵜呑みにはできない。
外野の騒ぎに反応して、綴の腕が動いた。頭が上がり、虚ろな目で榎達を見てくる。
「綴さん、大丈夫ですか!?」
「お兄さま、しっかりなさって!」
榎と奏が、必死で声をかけた。苦しそうだが、意識ははっきりしているらしく、榎達に反応を示した。
「榎ちゃん、奏……。僕を、追いかけてきたのか」
「どうして、病院から黙って抜け出したのです? 悪鬼に、何か脅迫でもされたのですか?」
奏の問い掛けに、綴は小さく鼻で笑って反した。
「今までの行いのツケが、回ってきただけさ。今のうちに、余計な問題は清算させておきたかったんだ」
「問題って……。綴さんと悪鬼との間に、何の関りがあるんです!?」
榎が慌てて尋ねるが、返事はなかった。口を開くより前に、綴は再び、気を失ってしまった。
「命に、別状はないと思います。長時間の慣れない移動で、疲労が溜まったのでしょう」
奏が冷静に、綴の状態を観察する。今のところ、大きな外傷は見られない。身の危険はないと分かり、少し安心した。
だが、不機嫌そうな響の姿が視界に入った瞬間、何の罪悪感も抱いていない態度に、榎の怒りが沸き上がった。
「綴さんに何かしたら、許さないといったはずだぞ!」
「何かするかどうかは、綴くんの返答次第だといったはずです。ただの病弱なお坊ちゃんかと思っていたら、とんだ食わせものだ。さんざん振り回されて、少し腹が立っているのですよ。あなたたちがもう少し遅く到着していれば、私の鬱憤も晴らせたかもしれないのに」
響の吐き捨てた返事は、更に榎を逆上させる。歯を食いしばり、響を睨みつけて殺気を飛ばす。
榎は百合の花の髪飾りを構え、力を込めた。
夏姫に変身し、ずっと持ち歩いていた、呪われた剣を構える。
剣はぼんやりと、濃い緑色の光を放ちはじめる。了生が貼ってくれた、呪いを抑え込むお札が、火を噴いて一瞬で灰になった。
後ろでは、椿達も変身して、榎の援護をする形で武器を構えてくれていた。
榎たちの敵意を受け取った響の表情が、冷たく凍りついた。目を細めて、榎に殺気を放ち返してくる。
「本気で来るのなら、私も約束を破りますよ? 小父さんの身の安全を、保障できなくなる」
「榎はん、落ち着いて! 下手に刺激したら、いかんどす」
人質が危険と判断した楸が、慌てて榎を制止にかかる。
だが、怒りで頭に血が上った榎には、周りの声が聞こえなくなってきた。
「黙れ! もう、お前の言葉なんて、信用しない!」
榎が約束を守っても、結局、大切な人を解放してはくれなかった。今もなお、盾として利用しようとしている。
悪鬼に誠意なんて期待した、榎が馬鹿だった。言葉で話して理解できない相手だと、再度理解した。
全身が、熱い。まるで、体中の流れる血が、沸騰して煮えたぎっているみたいだ。
腕が、足が榎の意図と関係なく疼きだす。頭が痛い。
強烈な力が内側から溢れ出して、爆発しそうだ。榎は地面に膝をついてうずくまり、大きな悲鳴を上げた。
榎の記憶は、その瞬間、完全に途切れた。
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