四季姫Biography~陰陽師少女転生譚~

幹谷セイ

文字の大きさ
332 / 336
第三部 四季姫革命の巻

二十九章 interval~全てが一つに~

しおりを挟む
「くぬおおおおおお!!」
 月麿のフルパワーによって、地脈の門は何とか閉じずに維持できているが、それ以上に開ききることが、どうしてもできない。
「流石に、気合だけではどうにもならんか……」
 了生も了海も、少し焦りだす。やはり、この頭数では、紬姫の抜けた穴を埋めることは困難を極める。
 奏の体も、疲労が濃くなってきた。元々奏の力なんて、雀の涙程度の役にも立たないものだ。どれだけ頑張っても、その影響は微々たるものに過ぎない。
「どうか、皆さんが、語が帰ってくるまでは!」
 無茶な戦いを強いてしまった四季姫たちに。苦しみに気付いてあげられなかった弟に。
 奏はまだ、何もしてあげられていない。
 榎たちは身を挺して語を救ってくれたなら、止めてくれたなら。
 今度は奏が、語を支えなければならないのだから、こんなところで躓いているわけにはいかないのに。
 あまりにも無力な己の現状に、情けなさが込み上げてくる。
 体の力が、抜けてくる。もう、限界なのだろうか。
 奏が座り込み、腕を下ろしかけると、それを背後から支えて持ち上げるものがあった。
「手を下ろすな。そのまま、集中して」
 耳元で聞こえる、懐かしささえ感じる声。
 驚いて横を見ると、綴の横顔がすぐ側にあった。
「お兄様!? お体は……」
 綴はこの地脈を制御するための力を、紬姫から継承している、唯一の人物だ。地脈を安定させるには、欠かせない人材でもある。
 だが、目を覚ましたばかりの綴は、まだまともに動ける状態ではないだろう。地脈に長い間漬かっていたし、さっきも護に人質として引きずり回され、体力は著しく消耗しているはずだ。
「いい。もう、安静なんて、求めている場合ではない。この体が、保たなくても……。これが、お母様の意志であり、僕の意志でもあるのだから」
 綴の決意は強い。どんな言葉をかけても、今の綴を止めることはできないと、直感的に悟った。
 綴は奏の耳元で、優しい口調で語り掛ける。
「兄弟三人で過ごす機会なんて、一度もなかっただろう? 語が帰ってきたら、ゆっくりと話そう。いままでのこと、これからのことを――」
 奏の心が、じんわりと温かくなる。
 安らいでいく感覚。
 どんなに病弱でも、父親が違っていても、ほとんど関わったことがない、よく分からない存在だとしても。
 やっぱりこの人は、頼もしい、奏や語の兄なのだと実感した。
 綴のその言葉で、奏の中に勇気が湧いた。明るい未来が、見えた気がした。
「はい、必ず!」
 再び、奏は腕に力を込めた。
「我らも、力を貸しますぞ!」
 地脈の周囲の竹林の合間から、夥しい数の生き物が飛び出してきた。
 八咫を筆頭とした、下等妖怪たちだ。
 了生が驚いて、声を上げる。
「お前ら、何で……」
「朝月夜さま、宵月夜さまに頼まれ、いざという時のためにと、仲間たちをかき集めて参った! 我ら妖怪一同、四季姫様たちをお助けいたすために、及ばずながら力をお貸しいたしまする!!」
 八咫の一鳴きを合図に、妖怪たちはありったけの妖気を地脈に送り付けた。その力によって、少しずつだが地脈の門が開きつつある。
 応援に駆け付けたのは、八咫たちだけではなかった。さらに山の中から飛び出してきたのは、上等妖怪・小豆洗いと、その娘の梓。さらに山奥の隠れ里に住む妖怪たちだった。
「オラたちもいるど! 隠れ里の妖怪一同も、今こそ四季姫たちへの恩を返すんだ!」
 今までに四季姫たちが助けてきた妖怪たちが結集し、四季姫を助けるために力を尽くしてくれている。四季姫たちのあらゆる行いの結果が、一つに繋がった。
 その奇跡に近い情景を作り出しながら、地脈は徐々に安定を取り戻し、門が完全に開いた。
 これならいける。榎たちは、必ず戻って来られる。
 奏はその期待を確信に変え、綴の体を支えながら更なる力を注ぎ込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

空を舞う白球

桐条京介
青春
私立群雲学園一年生の仮谷淳吾は体育の授業中にホームランを打ったことにより、弱小の野球部からスカウトされるが、まぐれだったので野球の実力がない淳吾は、アルバイトして彼女が欲しいからと断る。 すると上級生の謎の美女が、お弁当を一緒に食べようと登場。告白までされて、ウハウハ気分で浮かれていると、美女が言う。 「これで、野球部に入ってくれるのよね」 美女との交際を継続するため、周囲からの期待に応えるため、隠れて特訓し、色々な人からの助けも得て、淳吾は野球部の一員へとなっていく。 ※この小説は、小説家になろう他でも掲載しています。

処理中です...