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第三部 四季姫革命の巻
二十七章 interval~広がる邪気、集う闇~
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平安京の、はるか上空。
夏姫の結界によって外にはじき出された語は、焦点の合わない瞳で下界の様子を見下ろしていた。
「最悪だ。なにもかも、うまくいかない。僕は何のために、力を手に入れたんだ? 何のために、ヘイアン時代になんて、やってきたんだ?」
語は、隠形鬼の腕に抱かれながらも歯を食いしばり、呪いの言葉を吐き続けていた。
全身に深い傷を負い、初めて経験する痛みと戦いながら、更に恨みは募る。
この傷を実の子供に刻み付けた、憎らしい母親の顔が、脳裏から離れない。
この結果からも、既に答は見えた。
あの女は、自身の子供のことなんて何も考えてはいない。所詮、あの女にとって語は、ていのいい道具であり、捨て駒でしかなかったわけだ。
そんな立ち位置で満足してたまるか。
考えれば考えるほど苛立ち、苛立てば苛立つほどに、傷口から血液と共に、邪気がとめどなく漏れ出して止まらない。
「どいつもこいつも、僕の邪魔ばかり。何もかも滅茶苦茶だよ」
邪気は血と混ざり合って、地上に滴り落ちる。地面に落下した邪気の塊は強い怨念となり、京の周辺からありとあらゆる悪しきものを引き寄せ始めていた。
悪鬼であったり、妖怪であったり、人の恨みの権化であったり。
この世の、人間に敵対するどす黒い全ての存在が、語の強い感情に惹き付けられて集結しつつある。
今こそが、この地で繁栄を築き続けて、人外の存在をないがしろにしてきた人類に報復を加える時だとでも言わんばかりに。
「お母さまが大人しく死んでくれないっていうなら、もう、この世界そのものを滅ぼせばいい。千年後の世界に行ったって、世界そのものがなければ、どれだけお母さまがすごくたって、何もできやしないんだから」
いい気味だ、と語は笑った。
「深淵の悪鬼の力を以てすれば、日本中、世界中の悪鬼や妖怪を呼び寄せられる。さあ、お姉ちゃんたち、こいつら相手に、どう戦うのさ!」
夏姫の結界によって外にはじき出された語は、焦点の合わない瞳で下界の様子を見下ろしていた。
「最悪だ。なにもかも、うまくいかない。僕は何のために、力を手に入れたんだ? 何のために、ヘイアン時代になんて、やってきたんだ?」
語は、隠形鬼の腕に抱かれながらも歯を食いしばり、呪いの言葉を吐き続けていた。
全身に深い傷を負い、初めて経験する痛みと戦いながら、更に恨みは募る。
この傷を実の子供に刻み付けた、憎らしい母親の顔が、脳裏から離れない。
この結果からも、既に答は見えた。
あの女は、自身の子供のことなんて何も考えてはいない。所詮、あの女にとって語は、ていのいい道具であり、捨て駒でしかなかったわけだ。
そんな立ち位置で満足してたまるか。
考えれば考えるほど苛立ち、苛立てば苛立つほどに、傷口から血液と共に、邪気がとめどなく漏れ出して止まらない。
「どいつもこいつも、僕の邪魔ばかり。何もかも滅茶苦茶だよ」
邪気は血と混ざり合って、地上に滴り落ちる。地面に落下した邪気の塊は強い怨念となり、京の周辺からありとあらゆる悪しきものを引き寄せ始めていた。
悪鬼であったり、妖怪であったり、人の恨みの権化であったり。
この世の、人間に敵対するどす黒い全ての存在が、語の強い感情に惹き付けられて集結しつつある。
今こそが、この地で繁栄を築き続けて、人外の存在をないがしろにしてきた人類に報復を加える時だとでも言わんばかりに。
「お母さまが大人しく死んでくれないっていうなら、もう、この世界そのものを滅ぼせばいい。千年後の世界に行ったって、世界そのものがなければ、どれだけお母さまがすごくたって、何もできやしないんだから」
いい気味だ、と語は笑った。
「深淵の悪鬼の力を以てすれば、日本中、世界中の悪鬼や妖怪を呼び寄せられる。さあ、お姉ちゃんたち、こいつら相手に、どう戦うのさ!」
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