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後日談 狡猾な竜はほくそ笑む
しおりを挟むアンドレアと共に王子宮に帰ってきた。一年ぶりだ。
「あれ?何で実家じゃないの?」って顔を浮かべたアンドレアが可愛すぎる。
片時も離せるわけがないじゃないか。
隣国でアンドレアと会えたのが、たしか去年の今頃。
耳無しとして知られていた私が始祖たる黄金竜に変化したのだ。
国の慶事として大事になりかけた。
発表はしたものの、一年かけて披露の準備をすることとして残務処理をし、簡単なものは全部弟に押し付けて、なんとかアンドレアを追いかけ留学した。
無論、関連行事の中にアンドレアとの結婚式も組み込むのは忘れない。
アンドレアには、卒業式でアカデミーの伝統に乗っ取った形で求婚した。あくまでお互いの自由意思で結婚したという形だ。
しかし既に国内では、アンドレアの意志を無視して結婚は確定していた。アンドレアの実家であるサンダーウッド侯爵家は、私に黙ってアンドレアの隣国留学を進めたのだ。アンドレアの婚姻承諾書にサインするのは当然だろう?
知らぬはアンドレアただ一人のみ。
「クロード、どうしたの?」
私を見上げるアンドレアのしっぽが私に絡み付いてきた、可愛い。悶えるほど可愛い。
思わず肩を抱くと、アンドレアが指輪をうっとりと眺めていた。竜の唯一の弱点であり、愛の証である逆鱗だ。
拒絶するなら首輪にしようと思ってたけど、指輪にして良かった。指輪にうっとりする番の姿がたまらなく愛おしい。
竜は逆鱗を与えた者に逆らえないし危害を加えられない、そんな自分の命より大切なものを番に与える事で愛を示しているといわれているが、狡猾な竜がそんな自己犠牲の精神だけで逆鱗を与える訳がない。
逆鱗は、与えられた者も縛るのだ。その指輪は一生離れないし、どこに行こうと何をしようと番の一挙一動がわかるようになっている。最高だ。
アンドレアには知られてはならないが…。
その時、アンドレアが、一人の人物を見て、びっくりした顔をしてへたりこんだ。慌てて抱き上げる。
ん?
私の怒りを感じ取ったのか、その人物を庇うように侍従が進み出た。
「クロード殿下、アンドレア様、私に運命の番がみつかりました。レンと言います。」
アンドレアが私の腕の中で、がばっと起き上がった。
なんだか、ほっとした顔をしている。
私の怒りが鎮まったのを感じ取ったのか侍従が続ける。
「ちょうど一年前、レンが王子宮に迷い込みまして。不審者だと思い捕らえましたら、お互いに運命の番だとわかりまして。」
私が不在とはいえ、王子宮に迷い込めるものだろうか?
しかし、この侍従が己の番相手とはいえ判断を誤るとは思えない。確信を持って迷い込んだと言っている以上確かなのだろう。公私の区別はきっちりつける有能な男だ。
「良かったな。おめでとう。」
とりあえず言っておこう。
アンドレアは、心底嬉しそうにふたりに「お幸せに。」と祝福をしていた。
「侍従の番が可愛いかったからクロードが取られないか不安だったの。」
侍従達が離れた後、アンドレアが、目をうるうるさせながら呟いた。不安そうにお耳がへにゃっと寝ている。
狡猾な竜はほくそ笑めそうにない。
なぜなら、番が天然の竜殺しだから。
クロードは、萌えに瞬殺された。
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アンドレア可愛い♡
後日談まだありますか (,,꒪꒫꒪,,) ?
できればもっと読みたいです!
とても好みです。
あの…完結表記になっていますが、続く予定はありますか…?
もしあれば、更新楽しみにしてます。
お読みいただきありがとうございます。
ストック分を書き終えて完結していた為、完結にしてしまいました。
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まだまだ続きますので最後までお付き合いいだけると嬉しいです。
ありがとうございました。