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私は、ハープを希望します。

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ゲームでは、クロード殿下ハープを、アンドレアはバイオリン、ユリウスはフルート、エドワードは打楽器、アルバートはパイプオルガンを弾いていた。

今もバイオリンは、私の得意な楽器だ。
私の右に出るものはいないだろう。
普通に考えれば、私はバイオリンだ。
だが、しかし。

今回の目的は思い出作りなのだ。

あの神シチュエーションを再現する為にクロード殿下とふたりで一つのハープを奏でたい。
五歳の時からクロード殿下とハープを弾いてきた私は、実はハープも得意だ。
ひとりでも存分に演奏できる。
しかし、ふたりで弾くことに意味があるのですよ。

若干ひいていたアルバート第二王子を視線で制した私はクロード殿下とふたりで一つのハープというご褒美を勝ち取った。

ユリウスとエドワードが、生温い笑顔を貼り付けていたって構うものか。


あと、3ヶ月しかないんだ。
だったら、やりたいことをやろうではないか。
溢れる煩悩を満たしたい私と本能に忠実な獣性が、ガッチリ手を組んだ瞬間だった。



「アンドレア。明日が楽しみだね?」

最後の二人きりでの練習。
王子宮のホールで、クロード殿下に後ろから抱き込まれながら、ハープを弾く。
前からはハープの名手である殿下の奏でる天上の音楽、後ろからは殿下の低音覇王ボイス。
がっしりとした身体に包み込まれる安心感。
運命の番の抗いがたい匂い。
クロード殿下から与えられる夢のシチュエーションにもう夢見心地だ。
この一月幸せだった。

この練習が、今日で終わるなんて。

「明日で、こうしてふたりでハープを弾くことが、なくなるなんて、寂しくなりますわ。」

「アンドレアは、悪い子だね。」

悪役令嬢ですもの。筋金入りよ。

「アンドレア。来年はふたりで出よう。」

来年は皇国にいる。
そして、来年、この腕の中にいるのはレン。
残酷な現実に涙が一筋零れ落ちた。

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