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蒼の皇国 編

軌道修正ー舞台袖ー

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 世界の狭間のどこかにある崩れかけた塔。
 その最奥部にある管理室。
 多くのモニターが並ぶ中、その殆どはひび割れて真っ暗な状態だ。
 思っていた以上に酷い有様に溜息が出る。

「もう少し手加減があっても良かったんじゃねーの?」

 管理室の隅っこに置かれていたソファで本を読んでいた栗色の髪の少女――ティアに声をかける。
 少年魔王改め”無敵”のマオに成りすましていた”アルカンシェル”のティア。
 純粋な戦闘能力だけで言えば俺よりも強い厄介な相手だ。

「うっさい」

 不愛想な返事が一つだけ返ってくる。
 敵意100%でいつ襲ってきてもおかしくない状態だ。
 彼女を含め大半の相手には過去の所業により嫌われている。
 身から出た錆ということで今後、頑張って改善していこう。

「グングはやり過ぎだって……ギリで強制排出が早かったから良かったけどさ。一歩間違えばこの世界にガチで干渉できなくなってたんですけど?」
「干渉どころか、そのまま死んでれば良かったのに」
「本気で言ってるからマジで許してください」

 それでも今回の件に協力してくれているのだから頭が上がらない。
 ただし、弁明しておくと俺の責任ではない。
 この世界を作ったのは俺だから元を正せば俺の責任になるのだが……。

「で、状況はどんな感じで?」
「最悪。マオが外側で元凶二匹をこき使いながら対応してるけど――まあ、良くて3年。ここから調整をしてプラス2年」
「合わせて5年ってところか……短いな」

 元凶二匹。天目一個とヘパイトスのこと。
 この世界の管理を任せていた偶像神達なのだが、本質的に自分たちのモノづくりにしか興味がなく世界の管理をサボっていた為に世界が歪んで壊れてしまったのだ。
 それに気づいて付け焼刃でコウイチに“創造”の力の一部を与えて無理矢理送り込んだ結果、世界の崩壊が加速してしまった。
 俺たちはその尻拭いにやってきたという訳だ。

「世界の修復。必要な力とヒントは与えたが……あいつらが思うように動いてくれるかは分からんな」
「多分、無理」
「おや、厳しい意見じゃない?」
「今のあの子達は貴方への復讐で周りが見えていない。今回の件でより視野が狭くなった」
「……今回のやつは悪手だったり?」
「でも、他に選択肢はなかった。まあ、悪手なのはそもそも貴方があの子達の人生無茶苦茶にしたから」
「俺は幾つかのレールを敷いただけだ。選んだのはあいつら」
「終着点が全部同じなら一緒。ちゃんと彼女達に良い終わりを作ってあげなよ?」
「言われなくても分かっている」

 全ては俺の罪。
 目的を達する為になら手段を選ばない。
 善意も悪意も殺意も憎悪も全て俺が背負うと決めている。
 そして関わった者全ては最後は幸せにしなければならない義務がある。

「それはさておき、だ。最後のあの仕込みは何だ?」
「最後のって?」
「いやいや、最後は最後だって。グングを使った怪力女。あれ、お前らの仕込みなんだろ?」
「はぁ? 何言ってんの。あれは貴方の仕込みでしょ? 何かのスキルを持ってるみたいだったけど、ただの人間に神の槍を扱える訳ないじゃない」
「俺じゃねぇよ」
「…………」
「…………」

 どうやら別の思惑が俺たちの知らないところで動いているようだ。
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