77 / 78
蒼の皇国 編
軌道修正ー舞台袖ー
しおりを挟む
世界の狭間のどこかにある崩れかけた塔。
その最奥部にある管理室。
多くのモニターが並ぶ中、その殆どはひび割れて真っ暗な状態だ。
思っていた以上に酷い有様に溜息が出る。
「もう少し手加減があっても良かったんじゃねーの?」
管理室の隅っこに置かれていたソファで本を読んでいた栗色の髪の少女――ティアに声をかける。
少年魔王改め”無敵”のマオに成りすましていた”虹”のティア。
純粋な戦闘能力だけで言えば俺よりも強い厄介な相手だ。
「うっさい」
不愛想な返事が一つだけ返ってくる。
敵意100%でいつ襲ってきてもおかしくない状態だ。
彼女を含め大半の相手には過去の所業により嫌われている。
身から出た錆ということで今後、頑張って改善していこう。
「グングはやり過ぎだって……ギリで強制排出が早かったから良かったけどさ。一歩間違えばこの世界にガチで干渉できなくなってたんですけど?」
「干渉どころか、そのまま死んでれば良かったのに」
「本気で言ってるからマジで許してください」
それでも今回の件に協力してくれているのだから頭が上がらない。
ただし、弁明しておくと俺の責任ではない。
この世界を作ったのは俺だから元を正せば俺の責任になるのだが……。
「で、状況はどんな感じで?」
「最悪。マオが外側で元凶二匹をこき使いながら対応してるけど――まあ、良くて3年。ここから調整をしてプラス2年」
「合わせて5年ってところか……短いな」
元凶二匹。天目一個とヘパイトスのこと。
この世界の管理を任せていた偶像神達なのだが、本質的に自分たちのモノづくりにしか興味がなく世界の管理をサボっていた為に世界が歪んで壊れてしまったのだ。
それに気づいて付け焼刃でコウイチに“創造”の力の一部を与えて無理矢理送り込んだ結果、世界の崩壊が加速してしまった。
俺たちはその尻拭いにやってきたという訳だ。
「世界の修復。必要な力とヒントは与えたが……あいつらが思うように動いてくれるかは分からんな」
「多分、無理」
「おや、厳しい意見じゃない?」
「今のあの子達は貴方への復讐で周りが見えていない。今回の件でより視野が狭くなった」
「……今回のやつは悪手だったり?」
「でも、他に選択肢はなかった。まあ、悪手なのはそもそも貴方があの子達の人生無茶苦茶にしたから」
「俺は幾つかのレールを敷いただけだ。選んだのはあいつら」
「終着点が全部同じなら一緒。ちゃんと彼女達に良い終わりを作ってあげなよ?」
「言われなくても分かっている」
全ては俺の罪。
目的を達する為になら手段を選ばない。
善意も悪意も殺意も憎悪も全て俺が背負うと決めている。
そして関わった者全ては最後は幸せにしなければならない義務がある。
「それはさておき、だ。最後のあの仕込みは何だ?」
「最後のって?」
「いやいや、最後は最後だって。グングを使った怪力女。あれ、お前らの仕込みなんだろ?」
「はぁ? 何言ってんの。あれは貴方の仕込みでしょ? 何かのスキルを持ってるみたいだったけど、ただの人間に神の槍を扱える訳ないじゃない」
「俺じゃねぇよ」
「…………」
「…………」
どうやら別の思惑が俺たちの知らないところで動いているようだ。
その最奥部にある管理室。
多くのモニターが並ぶ中、その殆どはひび割れて真っ暗な状態だ。
思っていた以上に酷い有様に溜息が出る。
「もう少し手加減があっても良かったんじゃねーの?」
管理室の隅っこに置かれていたソファで本を読んでいた栗色の髪の少女――ティアに声をかける。
少年魔王改め”無敵”のマオに成りすましていた”虹”のティア。
純粋な戦闘能力だけで言えば俺よりも強い厄介な相手だ。
「うっさい」
不愛想な返事が一つだけ返ってくる。
敵意100%でいつ襲ってきてもおかしくない状態だ。
彼女を含め大半の相手には過去の所業により嫌われている。
身から出た錆ということで今後、頑張って改善していこう。
「グングはやり過ぎだって……ギリで強制排出が早かったから良かったけどさ。一歩間違えばこの世界にガチで干渉できなくなってたんですけど?」
「干渉どころか、そのまま死んでれば良かったのに」
「本気で言ってるからマジで許してください」
それでも今回の件に協力してくれているのだから頭が上がらない。
ただし、弁明しておくと俺の責任ではない。
この世界を作ったのは俺だから元を正せば俺の責任になるのだが……。
「で、状況はどんな感じで?」
「最悪。マオが外側で元凶二匹をこき使いながら対応してるけど――まあ、良くて3年。ここから調整をしてプラス2年」
「合わせて5年ってところか……短いな」
元凶二匹。天目一個とヘパイトスのこと。
この世界の管理を任せていた偶像神達なのだが、本質的に自分たちのモノづくりにしか興味がなく世界の管理をサボっていた為に世界が歪んで壊れてしまったのだ。
それに気づいて付け焼刃でコウイチに“創造”の力の一部を与えて無理矢理送り込んだ結果、世界の崩壊が加速してしまった。
俺たちはその尻拭いにやってきたという訳だ。
「世界の修復。必要な力とヒントは与えたが……あいつらが思うように動いてくれるかは分からんな」
「多分、無理」
「おや、厳しい意見じゃない?」
「今のあの子達は貴方への復讐で周りが見えていない。今回の件でより視野が狭くなった」
「……今回のやつは悪手だったり?」
「でも、他に選択肢はなかった。まあ、悪手なのはそもそも貴方があの子達の人生無茶苦茶にしたから」
「俺は幾つかのレールを敷いただけだ。選んだのはあいつら」
「終着点が全部同じなら一緒。ちゃんと彼女達に良い終わりを作ってあげなよ?」
「言われなくても分かっている」
全ては俺の罪。
目的を達する為になら手段を選ばない。
善意も悪意も殺意も憎悪も全て俺が背負うと決めている。
そして関わった者全ては最後は幸せにしなければならない義務がある。
「それはさておき、だ。最後のあの仕込みは何だ?」
「最後のって?」
「いやいや、最後は最後だって。グングを使った怪力女。あれ、お前らの仕込みなんだろ?」
「はぁ? 何言ってんの。あれは貴方の仕込みでしょ? 何かのスキルを持ってるみたいだったけど、ただの人間に神の槍を扱える訳ないじゃない」
「俺じゃねぇよ」
「…………」
「…………」
どうやら別の思惑が俺たちの知らないところで動いているようだ。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~
三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】
人間を洗脳し、意のままに操るスキル。
非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。
「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」
禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。
商人を操って富を得たり、
領主を操って権力を手にしたり、
貴族の女を操って、次々子を産ませたり。
リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』
王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。
邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!
Switch jobs ~転移先で自由気ままな転職生活~
天秤兎
ファンタジー
突然、何故か異世界でチート能力と不老不死を手に入れてしまったアラフォー38歳独身ライフ満喫中だったサラリーマン 主人公 神代 紫(かみしろ ゆかり)。
現実世界と同様、異世界でも仕事をしなければ生きて行けないのは変わりなく、突然身に付いた自分の能力や異世界文化に戸惑いながら自由きままに転職しながら生活する行き当たりばったりの異世界放浪記です。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~
飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。
彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。
独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。
この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。
※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる