異世界で最高の鍛冶師になる物語

ふみかん

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蒼の皇国 編

真実と失敗作

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 空を覆う無数の砲身から降り注ぐ砲撃の雨。
 それらは地上に降り注ぐ事はなく、自由自在に方向を変え、変幻自在に形を変えてコウイチ達を襲う。
 全員が防戦一方で自分の身を守るので手一杯だった。
 コウイチは千変万化で数枚の盾を作り全方位から襲ってくる砲撃を耐えていた。

「おいおい、誰がこいつの事をイベント戦のボスって言ったよ? どう考えてもメインシナリオに関係のないチート染みた隠しボスだろ!」

 方向キーを固定して自動レベリングしてたら突然登場するぶらぁぁ系お仕置きボスがぴったりだ。
 しかし残念な事にメインシナリオのラスボスであるらしい現実。

「少し雨宿りをさせて貰おう」

 するり、と盾と盾の隙間を縫ってリョウタが内側へと入り込んでくる。
 途端に砲撃の量が増え、コウイチは千変万化の出力を上げて盾の枚数を増やす。

「ちょっとちょっと、雨宿りの代金は高いですぜ?」
「剣の稽古をつけてやったのでチャラだ」
「ちっ、余計な貸しを作ってたもんだぜ」

 タリアが遠くで「そこズルくない! わたしも入れてよ!!」と言っているが聞こえないフリをした。

「それにしても埒が開かん」

 リョウタは盾の内側から剣を振り、盾へと降り注ぐ砲撃を幾らか切り伏せていく。

「でも、思ってた以上に耐えれてる気がします」
「ああ。セツナと黒いのを一蹴したにしては弱い」

 もし仮にセツナを退ける攻撃力を持っていたとしたら、現存する鉱石で制作した千変万化では耐えることなど出来ない。

「耐えてる褒美にその答えを教えてやるよ」
「っ!?」

 不意にコウイチの眼前に創造神カノンが現れる。その出現を待っていたかの様にリョウタが盾の隙間から飛び出して剣を振るった。
 空を切る。

「聖剣ブルトガングか。見た目も性能も良い剣だよな。でも残念。今の俺には実体が無いからな。あらゆる物理現象は効かないぜ」

 奇想天外な生物やら現象を見過ぎて、実体がない程度では驚きもしない。
 創造神カノンの言う答えとはコレのことなのだろう。

「今目の前にいるお前は立体映像みたいなものって訳か?」
「その通り。遠隔で外部から攻撃を仕掛けてるだけだ。だから、本来の5%くらいしか力が出せないのさ」

 たったの5%。
 事実であるなら絶望という言葉が相応しい。
 コウイチの背筋に凍るような冷たい汗が滲んだ。

「でもまあ、お前らにはそれで十分だろ? でもさ、この攻撃に耐えれる武具作り出してるとは恐れ入ったぜ。その剣凄いじゃん。名前なんて言うんだ?」
「……千変万化」
「仰々しい名前だな。でも、嫌いじゃない。褒美だ、受け取れ」
「くっ!?」

 コウイチへと砲撃の雨が集中していく。
 キャパシティを超えた衝撃に千変万化の盾に亀裂が入り始める。

「まずい!? 全員、コウイチを守れ!」
「んな事言ったって、こっちはこっちでギリギリなのよ!」
「こちらも手が離せません」

 元より前線で戦うタイプではないタリアと一対一に特化しているエイジは自分の身を守るだけで他に回す余力は無かった。
 リョウタが砲撃の雨の前に割って入り、その身で受け止めながら剣で切り払っていく。

「リョウタさん、ダメだ!? あなたの身体が持たない!」
「元より死んでいる身だ。そう簡単には死なぬ」
「そう簡単には死なない様に作ったが、流石にこれは死ぬぞ?」

 創造神カノンの言葉にリョウタは骨を震わす。

「今何と言った?」
「流石に死ぬぞ、って言ったんだが?」
「その前だ!」
「ああ……そう簡単に死なない様に作った」

 つまらなさそうにカノンは言うとため息を吐いた。

「安土亮太。お前は失敗作なんだよ」
「なに?」
「いや、お前だけじゃない。田宮花子、相澤英二、お前らも失敗作なんだよ」
「失敗作だと?」
「そ。俺がお前らをこっちの世界に転移させたのは覚えてるだろ? それは俺に目的の為な訳だが……ただ転移させただけじゃあ、俺の目的は到底達成できない。だから、お前らには試練を与えたのさ。心当たりがあるだろ? 心に大きな傷として残る悲劇がさ」

「「「っ!?」」」

 砲撃の雨が止む。
 コウイチは彼らに何があったのか聞いている。
 セツナも含め、4人は凄惨な事件に巻き込まれ大切な人達を失っているのだ。

「あれは……お前が仕組んだのか?」
「ああ、そうだ。お前の娘に疫病と酷似する呪いを掛け、憎しみをお前達一家に向く様にしたのさ」
「お前がっぁぁ!? 何故だ!!」

 リョウタが創造神カノンに向けて剣を振るーーが、虚しく空を切る。

「システムを超越した存在を生み出すこと、それが俺の目的だ」
「そんな事で妻と娘を巻き込んだのか」
「まあな」
「なぜっ!! 2人は関係ないはずだ!」
「強力な感情を糧にすることで超越した存在へとーー俺たちの領域へと辿り着ける。特に負の感情は作りやすい。その為の必要悪」
「必要悪だと!?」
「もし恨むんだとしたら自分を恨むんだな。お前と結婚しなければお前の妻は死ななかった。娘だって同じだ」

 さも当たり前と言った風。
 なんて傲慢で自分勝手な理屈なのだろうか。怒りを通り越して呆れた感情さえも芽生えてくる。
 まるで命に何の価値も感じていないかのうようだ。

「詭弁だ!」
「いいや、事実さ。俺はお前に力を与えたが、それ以外のことはお前が選んだんだ。他の奴らも同じだぞ? 悲劇が起きるまでの道のりはお前たりが選んだ道だ」
「その悲劇を何故ーー!?」
「俺の目的の為だ! この世界は俺の目的を達する為に作った。お前達はその一部でしかない! 俺が作ったモノをどうしようが俺の勝手だろ? それにタダで何でも貰えると思ってんじゃねぇよ!」

 悪びれた様子もない創造神カノンの物言いコウイチも堪忍袋の緒が切れた。

「ふざけんな!? 俺たちはお前のオモチャじゃない! 命を弄ぶのも良い加減にしろ!?」
「あん?」

 ギロリと創造神カノンがコウイチを睨みつけた。

「おい、異物。お前がキレるのは勘違いも甚だしいぞ。身の程を弁えろ」
「何を言ってる。俺をこっちの世界に転移させたのもあんたの計画の内なんだろ?」
「それを勘違いだと言っている。俺はお前の転移に一切関わっていない。全ては偶像神どもが勝手にやったことだ。
 しかしだ。管理責任者ってのはある。だから、異物であるゴミを排除しに出張ってきた訳だ」
「……俺を殺しに来たってことか?」
「ああ、そうだ。逆に言えばお前が大人しく殺されれば他の誰も傷つかない」

 一本の砲身がコウイチに向けられる。
 次第に魔力が収束していき発射態勢が整う。
 コウイチの中に迷いが生まれていた。
 未だにセツナは戻らず、創造神カノンの力は想像以上でこのままでは全員殺されるだろう。創造神カノンの目的が自身の殺害であるならばーー、

「コウイチ、馬鹿なことを考えるな! お前がいなければ俺たちの目的は達成出来ん。それに仲間を見捨てて生き延びるくらいなら、ここで死んだほうがマシだ!」
「ええ、その通りです。二度と仲間は失いません!」
「特にどんな理由があっても貴方にだけは奪わせないわ」

 リョウタに続き、エイジ、タリアがコウイチを守るように加勢する。
 その刹那、3人を取り囲む砲身ーー間髪入れずの砲撃。
 撃墜された3人は、コウイチの横を通り抜けて落下していく。

「えっーー」

 何が起きたのか理解が追いつかなかった。
 ただ分かるのは、創造神カノンによるものだと言うことだけ。

「邪魔だ、失敗作ども。そして消えろ、異物」
「っ!?」

 細い10本の砲撃がコウイチの退路を塞ぐ。
 極太の砲身から収束された魔力が発射される。
 膨大な魔力の濁流だ。
 避けられない。
 ヒビの入った千変万化では受け止め切れない。
 死ぬ。

 砲撃が被弾する寸前ーー、

「やらせない!」

 コウイチの眼前に氷の花が咲き、膨大な魔力の濁流を受け止めていた。

 それは地上からの加勢。

「それはわたしのモノ。奪わせない」

 アオが展開した防御魔法だ。
 氷の花に綻びが生まれる。
 濁流の勢いが収まる気配はない。

「ハクちゃん、お願い!」
「任せて!」

 別の方角。
 メアリが地上からコウイチに向けてハクを投げ飛ばした。
 ハクが色とりどりの障壁で身を固めて一直線に突っ込んでくる。
 コウイチの退路を塞ぐ細い砲撃を突き抜け、コウイチと氷の花との間に身体を滑り込ませた。

「コウイチはハクが守る!!」

 綻んだ氷の花を補強するように五色の花びらが追加される。
 アオとハクとの即興技により頑強となった氷の花は魔力の濁流を押し返していく。

「ほう、これを受け止めるとはな。なるほど、確かに……それなら可能だな」

 創造神カノンが地上へと視線を向けて納得したような顔をする。
 その視線の先はアオだった。

「歯向かう以上は失敗作と言えど排除する」

 明後日の方向に砲身が出現する。
 そして収束した魔力が放たれる。
 何をする気だ?
 アオを失敗作と呼んだ……失敗作?

「アオ! 狙いはもう片方だ!!」
「え?」
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