異世界で最高の鍛冶師になる物語

あまね

文字の大きさ
72 / 79
蒼の皇国 編

真実と失敗作

しおりを挟む
 空を覆う無数の砲身から降り注ぐ砲撃の雨。
 それらは地上に降り注ぐ事はなく、自由自在に方向を変え、変幻自在に形を変えてコウイチ達を襲う。
 全員が防戦一方で自分の身を守るので手一杯だった。
 コウイチは千変万化で数枚の盾を作り全方位から襲ってくる砲撃を耐えていた。

「おいおい、誰がこいつの事をイベント戦のボスって言ったよ? どう考えてもメインシナリオに関係のないチート染みた隠しボスだろ!」

 方向キーを固定して自動レベリングしてたら突然登場するぶらぁぁ系お仕置きボスがぴったりだ。
 しかし残念な事にメインシナリオのラスボスであるらしい現実。

「少し雨宿りをさせて貰おう」

 するり、と盾と盾の隙間を縫ってリョウタが内側へと入り込んでくる。
 途端に砲撃の量が増え、コウイチは千変万化の出力を上げて盾の枚数を増やす。

「ちょっとちょっと、雨宿りの代金は高いですぜ?」
「剣の稽古をつけてやったのでチャラだ」
「ちっ、余計な貸しを作ってたもんだぜ」

 タリアが遠くで「そこズルくない! わたしも入れてよ!!」と言っているが聞こえないフリをした。

「それにしても埒が開かん」

 リョウタは盾の内側から剣を振り、盾へと降り注ぐ砲撃を幾らか切り伏せていく。

「でも、思ってた以上に耐えれてる気がします」
「ああ。セツナと黒いのを一蹴したにしては弱い」

 もし仮にセツナを退ける攻撃力を持っていたとしたら、現存する鉱石で制作した千変万化では耐えることなど出来ない。

「耐えてる褒美にその答えを教えてやるよ」
「っ!?」

 不意にコウイチの眼前に創造神カノンが現れる。その出現を待っていたかの様にリョウタが盾の隙間から飛び出して剣を振るった。
 空を切る。

「聖剣ブルトガングか。見た目も性能も良い剣だよな。でも残念。今の俺には実体が無いからな。あらゆる物理現象は効かないぜ」

 奇想天外な生物やら現象を見過ぎて、実体がない程度では驚きもしない。
 創造神カノンの言う答えとはコレのことなのだろう。

「今目の前にいるお前は立体映像みたいなものって訳か?」
「その通り。遠隔で外部から攻撃を仕掛けてるだけだ。だから、本来の5%くらいしか力が出せないのさ」

 たったの5%。
 事実であるなら絶望という言葉が相応しい。
 コウイチの背筋に凍るような冷たい汗が滲んだ。

「でもまあ、お前らにはそれで十分だろ? でもさ、この攻撃に耐えれる武具作り出してるとは恐れ入ったぜ。その剣凄いじゃん。名前なんて言うんだ?」
「……千変万化」
「仰々しい名前だな。でも、嫌いじゃない。褒美だ、受け取れ」
「くっ!?」

 コウイチへと砲撃の雨が集中していく。
 キャパシティを超えた衝撃に千変万化の盾に亀裂が入り始める。

「まずい!? 全員、コウイチを守れ!」
「んな事言ったって、こっちはこっちでギリギリなのよ!」
「こちらも手が離せません」

 元より前線で戦うタイプではないタリアと一対一に特化しているエイジは自分の身を守るだけで他に回す余力は無かった。
 リョウタが砲撃の雨の前に割って入り、その身で受け止めながら剣で切り払っていく。

「リョウタさん、ダメだ!? あなたの身体が持たない!」
「元より死んでいる身だ。そう簡単には死なぬ」
「そう簡単には死なない様に作ったが、流石にこれは死ぬぞ?」

 創造神カノンの言葉にリョウタは骨を震わす。

「今何と言った?」
「流石に死ぬぞ、って言ったんだが?」
「その前だ!」
「ああ……そう簡単に死なない様に作った」

 つまらなさそうにカノンは言うとため息を吐いた。

「安土亮太。お前は失敗作なんだよ」
「なに?」
「いや、お前だけじゃない。田宮花子、相澤英二、お前らも失敗作なんだよ」
「失敗作だと?」
「そ。俺がお前らをこっちの世界に転移させたのは覚えてるだろ? それは俺に目的の為な訳だが……ただ転移させただけじゃあ、俺の目的は到底達成できない。だから、お前らには試練を与えたのさ。心当たりがあるだろ? 心に大きな傷として残る悲劇がさ」

「「「っ!?」」」

 砲撃の雨が止む。
 コウイチは彼らに何があったのか聞いている。
 セツナも含め、4人は凄惨な事件に巻き込まれ大切な人達を失っているのだ。

「あれは……お前が仕組んだのか?」
「ああ、そうだ。お前の娘に疫病と酷似する呪いを掛け、憎しみをお前達一家に向く様にしたのさ」
「お前がっぁぁ!? 何故だ!!」

 リョウタが創造神カノンに向けて剣を振るーーが、虚しく空を切る。

「システムを超越した存在を生み出すこと、それが俺の目的だ」
「そんな事で妻と娘を巻き込んだのか」
「まあな」
「なぜっ!! 2人は関係ないはずだ!」
「強力な感情を糧にすることで超越した存在へとーー俺たちの領域へと辿り着ける。特に負の感情は作りやすい。その為の必要悪」
「必要悪だと!?」
「もし恨むんだとしたら自分を恨むんだな。お前と結婚しなければお前の妻は死ななかった。娘だって同じだ」

 さも当たり前と言った風。
 なんて傲慢で自分勝手な理屈なのだろうか。怒りを通り越して呆れた感情さえも芽生えてくる。
 まるで命に何の価値も感じていないかのうようだ。

「詭弁だ!」
「いいや、事実さ。俺はお前に力を与えたが、それ以外のことはお前が選んだんだ。他の奴らも同じだぞ? 悲劇が起きるまでの道のりはお前たりが選んだ道だ」
「その悲劇を何故ーー!?」
「俺の目的の為だ! この世界は俺の目的を達する為に作った。お前達はその一部でしかない! 俺が作ったモノをどうしようが俺の勝手だろ? それにタダで何でも貰えると思ってんじゃねぇよ!」

 悪びれた様子もない創造神カノンの物言いコウイチも堪忍袋の緒が切れた。

「ふざけんな!? 俺たちはお前のオモチャじゃない! 命を弄ぶのも良い加減にしろ!?」
「あん?」

 ギロリと創造神カノンがコウイチを睨みつけた。

「おい、異物。お前がキレるのは勘違いも甚だしいぞ。身の程を弁えろ」
「何を言ってる。俺をこっちの世界に転移させたのもあんたの計画の内なんだろ?」
「それを勘違いだと言っている。俺はお前の転移に一切関わっていない。全ては偶像神どもが勝手にやったことだ。
 しかしだ。管理責任者ってのはある。だから、異物であるゴミを排除しに出張ってきた訳だ」
「……俺を殺しに来たってことか?」
「ああ、そうだ。逆に言えばお前が大人しく殺されれば他の誰も傷つかない」

 一本の砲身がコウイチに向けられる。
 次第に魔力が収束していき発射態勢が整う。
 コウイチの中に迷いが生まれていた。
 未だにセツナは戻らず、創造神カノンの力は想像以上でこのままでは全員殺されるだろう。創造神カノンの目的が自身の殺害であるならばーー、

「コウイチ、馬鹿なことを考えるな! お前がいなければ俺たちの目的は達成出来ん。それに仲間を見捨てて生き延びるくらいなら、ここで死んだほうがマシだ!」
「ええ、その通りです。二度と仲間は失いません!」
「特にどんな理由があっても貴方にだけは奪わせないわ」

 リョウタに続き、エイジ、タリアがコウイチを守るように加勢する。
 その刹那、3人を取り囲む砲身ーー間髪入れずの砲撃。
 撃墜された3人は、コウイチの横を通り抜けて落下していく。

「えっーー」

 何が起きたのか理解が追いつかなかった。
 ただ分かるのは、創造神カノンによるものだと言うことだけ。

「邪魔だ、失敗作ども。そして消えろ、異物」
「っ!?」

 細い10本の砲撃がコウイチの退路を塞ぐ。
 極太の砲身から収束された魔力が発射される。
 膨大な魔力の濁流だ。
 避けられない。
 ヒビの入った千変万化では受け止め切れない。
 死ぬ。

 砲撃が被弾する寸前ーー、

「やらせない!」

 コウイチの眼前に氷の花が咲き、膨大な魔力の濁流を受け止めていた。

 それは地上からの加勢。

「それはわたしのモノ。奪わせない」

 アオが展開した防御魔法だ。
 氷の花に綻びが生まれる。
 濁流の勢いが収まる気配はない。

「ハクちゃん、お願い!」
「任せて!」

 別の方角。
 メアリが地上からコウイチに向けてハクを投げ飛ばした。
 ハクが色とりどりの障壁で身を固めて一直線に突っ込んでくる。
 コウイチの退路を塞ぐ細い砲撃を突き抜け、コウイチと氷の花との間に身体を滑り込ませた。

「コウイチはハクが守る!!」

 綻んだ氷の花を補強するように五色の花びらが追加される。
 アオとハクとの即興技により頑強となった氷の花は魔力の濁流を押し返していく。

「ほう、これを受け止めるとはな。なるほど、確かに……それなら可能だな」

 創造神カノンが地上へと視線を向けて納得したような顔をする。
 その視線の先はアオだった。

「歯向かう以上は失敗作と言えど排除する」

 明後日の方向に砲身が出現する。
 そして収束した魔力が放たれる。
 何をする気だ?
 アオを失敗作と呼んだ……失敗作?

「アオ! 狙いはもう片方だ!!」
「え?」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

処理中です...