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蒼の皇国 編
敵はアオ!? アヴァロン消滅の危機!
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タマモの病室に緊急回線が繋げられ、地下第三工房のゲンジから報告が上がる。
”第2動力が暴走を始めちまいやがった! 何とか他の動力の出力を調整して連鎖暴走を防いではいるが……あと何分持つか”
突然、旧動力が暴走を始めた。
突然というのは嘘である。
旧動力はいつ暴走しても不思議では無かったのだ。今までは二十四時間体制でメンテと管理を行って防いでいたに過ぎない。ついに今日、メンテナンスでは対応しきれない事態に陥り、動力の一つが暴走を始めてしまった。
アヴァロンには5機の魔力融合炉の動力が稼働している。それらは並行に連結され魔力を循環させることでアヴァロンという巨大な金属の塊を空に浮かせるだけの膨大なエネルギーを産生し続けていた。
このシステムの最大の欠点は5機が平行に連結されていることにある。動力のどれか一つでも停止したり暴走を始めればエネルギーの循環に乱れが生じて、全ての動力が連鎖的に暴走を始める。
『ウチの代わりに言葉を伝えてもろてええか?』
タマモの念話にコウイチは頷いた。
今のタマモの肉体は非常に衰弱している。声が出せない代わりに使用している念話も十キロ程度しか飛ばせないらしい。この病院から第三工房は十キロ以上の距離があり、ゲンジに直接念話を送れないのだろう。
『第2動力の暴走で怪我した子はおらんね?』
「第2動力の暴走での怪我人はいるのか?」
”そいつは大丈夫だ。いつ暴走するかもわかんねえからな。最近はロボットを使った遠隔メンテで済ませてたからな。まあ、それが仇になっちまった感じだけどよ”
遠隔によるメンテナンス故にカメラ越しでは分からない細かな歪みを見逃してしまったらしい。
『過ぎたもんはしゃーなし。第2動力を循環路から離断。他の動力は直ちに停止』
「えっと、第2動力を循環路から離断、他の動力は停止させろって」
”停止って……そいつあ無理ですぜ? んなことしたら行き場を失った循環路内の魔力でアヴァロンが吹き飛んじまう!?”
モニターの向こうでゲンジが目を見開いて声を荒げる。
『それは問題あらへん。ウー君、いるんやろ?』
「ええ、準備完了していますよ」
不意にどこからともなく、真っ赤なコートにモノクルをかけた怪しい男――ウロボロスが現れ、その掌の上には複雑に入り乱れる魔法陣の球体が浮かんでいた。
”そいつは?”
「仮想魔力循環路。これで行き場を失った魔力を広域に散布してしまいます。これならば魔力の泉が発生することも高濃度の魔力を浴びることによる病気などになることもないでしょう」
”発動までにどれくらいありゃいい?”
「即時可能ですよ。そんな事よりも新動力の稼働には何分必要ですか?」
”……約40分だ”
「最悪です」
『最悪やね』
「絶望的ですね」
ウロボロス、タマモ、メアリが頭を抱える中、コウイチは一人、事態の状況を飲み込めなかった。
後で説明されたことだが、アヴァロンは高度約14000メートル位置に浮遊している。高度1万メートルから物体が自由落下した場合、約3分だそうだ。プラス4000メートルあるので約5分あるかどうか。
しかし、新型の動力が稼働するには40分かかる。
致命的かつ絶望的な状況だった。
そんな状況の中、タマモの病室の扉が開き、一人の少女が無言で入室してきた。
ローブに着られたような蒼い髪の少女アオだった。
「なっ、貴方はっ!?」
『何故、こんなところにおる!?』
ウロボロスとタマモは声を揃えて言葉を続けた。
「蒼龍皇っ!?」
『蒼いの!?』
蒼龍皇? 蒼いの?
アオは蒼龍皇の協力者である冒険者のはずだ。
何かの間違いではないかと睨み合う三人を交互に見る。
「どういうこと?」
コウイチの言葉を無視してアオは二人に告げた。
「100メートルでこの鉄の塊を消滅させる。彼との約束。これが最大限の譲歩」
そう言うとコウイチはアオに首根っこを掴まれ、気づいた時には窓を突き破って空高くに舞い上がっていた。
”第2動力が暴走を始めちまいやがった! 何とか他の動力の出力を調整して連鎖暴走を防いではいるが……あと何分持つか”
突然、旧動力が暴走を始めた。
突然というのは嘘である。
旧動力はいつ暴走しても不思議では無かったのだ。今までは二十四時間体制でメンテと管理を行って防いでいたに過ぎない。ついに今日、メンテナンスでは対応しきれない事態に陥り、動力の一つが暴走を始めてしまった。
アヴァロンには5機の魔力融合炉の動力が稼働している。それらは並行に連結され魔力を循環させることでアヴァロンという巨大な金属の塊を空に浮かせるだけの膨大なエネルギーを産生し続けていた。
このシステムの最大の欠点は5機が平行に連結されていることにある。動力のどれか一つでも停止したり暴走を始めればエネルギーの循環に乱れが生じて、全ての動力が連鎖的に暴走を始める。
『ウチの代わりに言葉を伝えてもろてええか?』
タマモの念話にコウイチは頷いた。
今のタマモの肉体は非常に衰弱している。声が出せない代わりに使用している念話も十キロ程度しか飛ばせないらしい。この病院から第三工房は十キロ以上の距離があり、ゲンジに直接念話を送れないのだろう。
『第2動力の暴走で怪我した子はおらんね?』
「第2動力の暴走での怪我人はいるのか?」
”そいつは大丈夫だ。いつ暴走するかもわかんねえからな。最近はロボットを使った遠隔メンテで済ませてたからな。まあ、それが仇になっちまった感じだけどよ”
遠隔によるメンテナンス故にカメラ越しでは分からない細かな歪みを見逃してしまったらしい。
『過ぎたもんはしゃーなし。第2動力を循環路から離断。他の動力は直ちに停止』
「えっと、第2動力を循環路から離断、他の動力は停止させろって」
”停止って……そいつあ無理ですぜ? んなことしたら行き場を失った循環路内の魔力でアヴァロンが吹き飛んじまう!?”
モニターの向こうでゲンジが目を見開いて声を荒げる。
『それは問題あらへん。ウー君、いるんやろ?』
「ええ、準備完了していますよ」
不意にどこからともなく、真っ赤なコートにモノクルをかけた怪しい男――ウロボロスが現れ、その掌の上には複雑に入り乱れる魔法陣の球体が浮かんでいた。
”そいつは?”
「仮想魔力循環路。これで行き場を失った魔力を広域に散布してしまいます。これならば魔力の泉が発生することも高濃度の魔力を浴びることによる病気などになることもないでしょう」
”発動までにどれくらいありゃいい?”
「即時可能ですよ。そんな事よりも新動力の稼働には何分必要ですか?」
”……約40分だ”
「最悪です」
『最悪やね』
「絶望的ですね」
ウロボロス、タマモ、メアリが頭を抱える中、コウイチは一人、事態の状況を飲み込めなかった。
後で説明されたことだが、アヴァロンは高度約14000メートル位置に浮遊している。高度1万メートルから物体が自由落下した場合、約3分だそうだ。プラス4000メートルあるので約5分あるかどうか。
しかし、新型の動力が稼働するには40分かかる。
致命的かつ絶望的な状況だった。
そんな状況の中、タマモの病室の扉が開き、一人の少女が無言で入室してきた。
ローブに着られたような蒼い髪の少女アオだった。
「なっ、貴方はっ!?」
『何故、こんなところにおる!?』
ウロボロスとタマモは声を揃えて言葉を続けた。
「蒼龍皇っ!?」
『蒼いの!?』
蒼龍皇? 蒼いの?
アオは蒼龍皇の協力者である冒険者のはずだ。
何かの間違いではないかと睨み合う三人を交互に見る。
「どういうこと?」
コウイチの言葉を無視してアオは二人に告げた。
「100メートルでこの鉄の塊を消滅させる。彼との約束。これが最大限の譲歩」
そう言うとコウイチはアオに首根っこを掴まれ、気づいた時には窓を突き破って空高くに舞い上がっていた。
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