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夜天の主 編
急転直下!? メギド・レナーテの侵攻!!
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紫色の身体に血管のような赤い模様を全身に刻む獣が自身の身体から流れ出た紫色の毒液の沼の中で目を覚ました。丸太のように太い四足、毒液が滴る鋭い牙、ムチのように長い尾、背中に生える三対の虫のような翼が特徴的な他に類を見ない風貌をしている。
――異端の龍共め。人間の力に何を期待しているのか。長きに渡る過去の歴史が物語っているというのに。時間の無駄だ。均衡が崩れた今、人間など殺してしまえばよい。
その獣は人類の歴史の中で一度だけ姿を現し、一昼夜で大陸の四分の一を毒で汚染された土地に変貌させた伝説の紫毒獣王――メギド・レナーテ。その名前は人間が勝手に呼称しているもので本人はそう呼ばれている事すら知らないだろう。因みに普段、配下の者達からは紫毒と呼ばれている。
紫毒は毒沼の中で立ち上がり、三対の虫のような羽を広げた。
人類種を滅ぼそうと決めたのだろう。相変わらず思い立ったら直ぐに行動をする面倒な獣だ。
しかし、こちらとしては今動かれては困る。
白龍皇は外界から遮断していた姿と気配を紫毒の前に晒して声をかける。
「紫毒よ。今はもう暫く動かんで貰えないか?」
ーー神出鬼没の老害め。断ると言えばどうする?
「戦うしかないだろうな」
ーーふっはは。戦わぬ貴様から戦うと言葉が出てくるとは思わなかったぞ。
一拍置いてから、紫毒は広げた翼を羽ばたかせた。
ーーでは戦争と行こうではないか。止めたくばいつでも牙を向けるがよい。
紫毒が軽々とその巨体を飛翔させ空の彼方へと消えていく姿を白龍皇は目を伏せて見送った。
戦うと口にした一方で迷いがあったのだ。
争いになればどちらかは倒れる。
自身の目指す理想郷に未だ未知数ではあるがコウイチの力は必要不可欠となるはずだ。彼を失う訳にはいかないが、同時に紫毒も失う訳にはいかない。
紫毒の毒は殆どの生命にとって害を成す。しかし、この毒によって死した命は豊潤な栄養源となって大地に還り、死んだ土地や草木を蘇らせる。
紫毒は今日まで、この人間たちの環境破壊によって汚染された大地に留まり、毒を撒き散らして生命を殺し、新たな生命が生まれ、そして過ごせる環境を整えていたのだ。毒沼が広がるこの場所も一年後には緑豊かな大地が広がっているだろう。
「見た目と性格はアレだが、誰よりも自然を愛している奴だからな」
滅ぼし、再生させる者――メギド・レナーテ。
移動工房艦アメノマ専用ドック。
未開の大陸に行って帰って来て早数か月が経ち、白龍皇に与えられた刻限まで二ヶ月を切っていた。
そしてコウイチは神鉄を使って大釜を作っていた。
何故作っているのかと言うと……一重に趣味である。
緑葉石の思いの外、順調でアオに言われた通り緑生石と水生石と魔鋼鉄を溶かして叩いたら簡単に出来た。それどころか、緑葉石に神鉄を混ぜたら水質の浄化能力が数十倍(現在、タマモに頼んで詳しいデータを調査中)の新素材(緑葉石改)が完成したくらいだ。それ以外にも緑葉石はコウイチの能力を使わずとも超高温の熱で三つの素材を溶かして固めれば、品質にバラつきがあるものの特別な力を使わなくとも作ることが可能だと判明した。
今の所、これらの情報は蒼龍皇との約束もあってタマモ達には秘密にしている。性能調査に出した緑葉石改(仮)に関しても、こちらからお願いしている立場で素材は貸し出しと詮索しないという無茶苦茶な条件を押し通しているくらいだ。尤も、この船への納品書を見れば大方の予想が付いていそうではある。
因みに白龍皇から貰った謎の四角形は……コウイチの力でも干渉することすら出来ず、部屋の棚に飾ってある。ある意味では未開の大陸に行ったのは時間の浪費だった。
さて、コウイチがせっせと作っている大釜は……もう一度言うが完全な趣味である。
完全な時間の無駄である。
しかし、この世界はファンタジーである。
元の世界では出来なかったことが出来る世界なのである。
そしてコウイチはぐーるぐーるする錬金術が大好きである。
今までは素材を直接手で触れていないと材質を変化させることが出来なかったが、最近になって間接的に触れていても同じ行為が出来るようになった。金槌で叩く必要もなくなった。細かな作業になると直接触れていないとダメだが……。
つまり、大まかな作業に限るものの、大釜に水を入れ、素材を入れてぐーるぐーるかき混ぜてインゴットくらいなら作れるワケだ。
ただ、市販の大釜で試したら調合……製作中の釜の中は膨大な魔力が渦巻いているらしく、普通の鋼では耐久性に難があった。そこでコウイチは神鉄を使って大釜を自作し始めたのだった。
何度も言うが完全な時間の無駄である。
この無駄な時間、無駄な行為も自身のモチベーションが向上するだから有用である。
と、豪語してコウイチはメアリ達を説得し今に至る。
神鉄。1キログラムで日本円にすると約1000万円くらいする。それを300キログラム用いて作っているのが趣味の大釜だ。
ほぼ完成状態になってコウイチは初めて気づく。億越えの釜を趣味で作ってしまったことに。
「最悪、元のインゴットに戻せばいいか……」
若干、後悔を覚えつつ、コウイチは早速釜の中に水と素材を放り込み、表面を神鉄の繊維で覆った特製の木の棒でかき混ぜ始める。
「ぐーるぐーる!」
釜の中で次々に出来上がっていく緑葉石に満面の笑みを浮かべながら手作業でやった方が圧倒的に楽だと思うのだった。
大量の水、木の棒、間接的、どれをとっても無駄の積み重ねだ。
「でも、楽しいからOK。……ロ〇ナ先生みたいな一流の錬金術師になってパイを作るんだ!?」
コウイチがそんな馬鹿をやっていた頃。
アヴァロンでは緊急事態のアラートが鳴り響いていた。
『南西方向より魔獣の群れが接近中! 南西方向より魔獣の群れが接近中! 手の空いている冒険者は危険代行人材派遣協会本部へ。民間人の方は指定のシェルター又は各港に待機している航空船で安全地域へ退避をお願いします。繰り返します――』
危険代行人材派遣協会本部――通称:冒険者ギルドの会議室には、アヴァロンを牛耳る錚々たるメンバーが顔を連ねていた。
タマモ、ミドガルズオルムを筆頭に人間、ドワーフ、エルフなど多種多彩な人種が険しい顔をし、司会進行役として巨大なモニターの傍らにメアリの姿があった。
メアリは次々に届く情報を簡単に精査しつつ淡々と読み上げていく。
「現時点で確認されている魔獣の数は凡そ……48万ほどです」
「よんじゅう、はちまん……だと!?」
「殆どはD~Cランク級の魔獣ですが、1匹だけライブラリーに該当しない魔獣がいるそうです。それがこちらです」
メアリが手元のリモコンでスクリーンの表示を切り替えた。
そこに映ったのは虫のような三対の翼を広げた紫色の巨大な魔獣だった。
「なんだ!? あの魔獣は!?」
過去に報告のない異形の魔獣に声を荒げる面々を余所にタマモとミドガルズオルムは誰よりも驚愕といった表情で目を見開いていた。
それに気づいたアヴァロン議会の一人が、
「タマモ殿、あれをご存じなのですか?」
聞かれたタマモは少し考えてから口を開いた。
「アレは紫毒。600年くらい前に南西にある小大陸を滅ぼした魔獣や。メギド・レナーテとかいう名前で文献に残っとるはずやね」
「メギド・レナーテ!? 聞いた事があります。全身から猛毒を垂れ流し、生けるもの全てを殺す最悪の魔獣……」
考古学者風の男が戦慄した表情、その一方で口元は嬉しそうに歪めていた。
その言葉で、辛うじて冷静を保っていた会議室は一瞬にして混乱に陥ってしまった。
「タマモ殿!? 対抗は出来るのですか!?」
「ウロボロスと地下工房は手が離せへんから、ウチから出せる戦力ゆうたらウチとミドの二人だけ。アヴァロン守りながら紫毒を抑え込むんは二人でやっとやろうね」
「それなら――」
「だが、他の魔獣をアンタらに任せることになる」
ミドガルズオルムが無理難題を彼らに突きつけた。
「ぐっ……メアリ嬢、現状で状況に対応できる協会員の人数は?」
「総数300名ほど。その中でD~Cランクの魔獣との交戦経験があるのは200名ほど、集団及び混戦の経験があるのは……30名もいません」
絶望的な数字だった。
「そうだ! あの子供に渡した最新鋭艦ならどうだ?」
「おお、それがあったか!?」
白羽の矢が立てられたのは移動工房艦アメノマだ。
不意にメアリは大きなため息をついた。
冷静に考えれば容易に判断できるはずだ。
「移動工房艦アメノマで対応できるのは良くても10万といったところでしょう。残り38万はどうしようもありません」
「……無理か」
焼け石に水。
その10万も艦に搭載されている火器全てを使いつくし、最後に融合炉を暴走させて自爆させた場合の期待値だ。実際には7万くらいが関の山だろう。
どう計算しても48万の魔獣に対抗できる術はない。
世界中に飛び散っている協会員全員と政治的に協力関係にある参加国家が戦力を裂いてくれてやっと五分五分になるくらいだと思われる。
「ミド、今からウー君とあの子呼び戻したとして何分必要や?」
「おいおい、最終段階だぞ。呼び戻せるワケねーだろ!?」
「無理は承知や。せやけど、このままやったら守りたいモノも守られへん。もしあの子が本当に黒いのに認められるんやったら……そろそろ終わってもおかしくはない。ウチはその可能性に賭けたいんよ」
「…………。一番足が速い奴に走らせて……12時間だ」
「奇跡を信じて12時間守り通すか、アヴァロンを捨てるか。ウチらに残された選択肢は二つに一つ。ウチは奇跡を信じて一人でもこのアヴァロンを守るつもりや。皆は好きにしたらええよ」
タマモはそれだけ言うと席を立ち、会議室を後にした。
――異端の龍共め。人間の力に何を期待しているのか。長きに渡る過去の歴史が物語っているというのに。時間の無駄だ。均衡が崩れた今、人間など殺してしまえばよい。
その獣は人類の歴史の中で一度だけ姿を現し、一昼夜で大陸の四分の一を毒で汚染された土地に変貌させた伝説の紫毒獣王――メギド・レナーテ。その名前は人間が勝手に呼称しているもので本人はそう呼ばれている事すら知らないだろう。因みに普段、配下の者達からは紫毒と呼ばれている。
紫毒は毒沼の中で立ち上がり、三対の虫のような羽を広げた。
人類種を滅ぼそうと決めたのだろう。相変わらず思い立ったら直ぐに行動をする面倒な獣だ。
しかし、こちらとしては今動かれては困る。
白龍皇は外界から遮断していた姿と気配を紫毒の前に晒して声をかける。
「紫毒よ。今はもう暫く動かんで貰えないか?」
ーー神出鬼没の老害め。断ると言えばどうする?
「戦うしかないだろうな」
ーーふっはは。戦わぬ貴様から戦うと言葉が出てくるとは思わなかったぞ。
一拍置いてから、紫毒は広げた翼を羽ばたかせた。
ーーでは戦争と行こうではないか。止めたくばいつでも牙を向けるがよい。
紫毒が軽々とその巨体を飛翔させ空の彼方へと消えていく姿を白龍皇は目を伏せて見送った。
戦うと口にした一方で迷いがあったのだ。
争いになればどちらかは倒れる。
自身の目指す理想郷に未だ未知数ではあるがコウイチの力は必要不可欠となるはずだ。彼を失う訳にはいかないが、同時に紫毒も失う訳にはいかない。
紫毒の毒は殆どの生命にとって害を成す。しかし、この毒によって死した命は豊潤な栄養源となって大地に還り、死んだ土地や草木を蘇らせる。
紫毒は今日まで、この人間たちの環境破壊によって汚染された大地に留まり、毒を撒き散らして生命を殺し、新たな生命が生まれ、そして過ごせる環境を整えていたのだ。毒沼が広がるこの場所も一年後には緑豊かな大地が広がっているだろう。
「見た目と性格はアレだが、誰よりも自然を愛している奴だからな」
滅ぼし、再生させる者――メギド・レナーテ。
移動工房艦アメノマ専用ドック。
未開の大陸に行って帰って来て早数か月が経ち、白龍皇に与えられた刻限まで二ヶ月を切っていた。
そしてコウイチは神鉄を使って大釜を作っていた。
何故作っているのかと言うと……一重に趣味である。
緑葉石の思いの外、順調でアオに言われた通り緑生石と水生石と魔鋼鉄を溶かして叩いたら簡単に出来た。それどころか、緑葉石に神鉄を混ぜたら水質の浄化能力が数十倍(現在、タマモに頼んで詳しいデータを調査中)の新素材(緑葉石改)が完成したくらいだ。それ以外にも緑葉石はコウイチの能力を使わずとも超高温の熱で三つの素材を溶かして固めれば、品質にバラつきがあるものの特別な力を使わなくとも作ることが可能だと判明した。
今の所、これらの情報は蒼龍皇との約束もあってタマモ達には秘密にしている。性能調査に出した緑葉石改(仮)に関しても、こちらからお願いしている立場で素材は貸し出しと詮索しないという無茶苦茶な条件を押し通しているくらいだ。尤も、この船への納品書を見れば大方の予想が付いていそうではある。
因みに白龍皇から貰った謎の四角形は……コウイチの力でも干渉することすら出来ず、部屋の棚に飾ってある。ある意味では未開の大陸に行ったのは時間の浪費だった。
さて、コウイチがせっせと作っている大釜は……もう一度言うが完全な趣味である。
完全な時間の無駄である。
しかし、この世界はファンタジーである。
元の世界では出来なかったことが出来る世界なのである。
そしてコウイチはぐーるぐーるする錬金術が大好きである。
今までは素材を直接手で触れていないと材質を変化させることが出来なかったが、最近になって間接的に触れていても同じ行為が出来るようになった。金槌で叩く必要もなくなった。細かな作業になると直接触れていないとダメだが……。
つまり、大まかな作業に限るものの、大釜に水を入れ、素材を入れてぐーるぐーるかき混ぜてインゴットくらいなら作れるワケだ。
ただ、市販の大釜で試したら調合……製作中の釜の中は膨大な魔力が渦巻いているらしく、普通の鋼では耐久性に難があった。そこでコウイチは神鉄を使って大釜を自作し始めたのだった。
何度も言うが完全な時間の無駄である。
この無駄な時間、無駄な行為も自身のモチベーションが向上するだから有用である。
と、豪語してコウイチはメアリ達を説得し今に至る。
神鉄。1キログラムで日本円にすると約1000万円くらいする。それを300キログラム用いて作っているのが趣味の大釜だ。
ほぼ完成状態になってコウイチは初めて気づく。億越えの釜を趣味で作ってしまったことに。
「最悪、元のインゴットに戻せばいいか……」
若干、後悔を覚えつつ、コウイチは早速釜の中に水と素材を放り込み、表面を神鉄の繊維で覆った特製の木の棒でかき混ぜ始める。
「ぐーるぐーる!」
釜の中で次々に出来上がっていく緑葉石に満面の笑みを浮かべながら手作業でやった方が圧倒的に楽だと思うのだった。
大量の水、木の棒、間接的、どれをとっても無駄の積み重ねだ。
「でも、楽しいからOK。……ロ〇ナ先生みたいな一流の錬金術師になってパイを作るんだ!?」
コウイチがそんな馬鹿をやっていた頃。
アヴァロンでは緊急事態のアラートが鳴り響いていた。
『南西方向より魔獣の群れが接近中! 南西方向より魔獣の群れが接近中! 手の空いている冒険者は危険代行人材派遣協会本部へ。民間人の方は指定のシェルター又は各港に待機している航空船で安全地域へ退避をお願いします。繰り返します――』
危険代行人材派遣協会本部――通称:冒険者ギルドの会議室には、アヴァロンを牛耳る錚々たるメンバーが顔を連ねていた。
タマモ、ミドガルズオルムを筆頭に人間、ドワーフ、エルフなど多種多彩な人種が険しい顔をし、司会進行役として巨大なモニターの傍らにメアリの姿があった。
メアリは次々に届く情報を簡単に精査しつつ淡々と読み上げていく。
「現時点で確認されている魔獣の数は凡そ……48万ほどです」
「よんじゅう、はちまん……だと!?」
「殆どはD~Cランク級の魔獣ですが、1匹だけライブラリーに該当しない魔獣がいるそうです。それがこちらです」
メアリが手元のリモコンでスクリーンの表示を切り替えた。
そこに映ったのは虫のような三対の翼を広げた紫色の巨大な魔獣だった。
「なんだ!? あの魔獣は!?」
過去に報告のない異形の魔獣に声を荒げる面々を余所にタマモとミドガルズオルムは誰よりも驚愕といった表情で目を見開いていた。
それに気づいたアヴァロン議会の一人が、
「タマモ殿、あれをご存じなのですか?」
聞かれたタマモは少し考えてから口を開いた。
「アレは紫毒。600年くらい前に南西にある小大陸を滅ぼした魔獣や。メギド・レナーテとかいう名前で文献に残っとるはずやね」
「メギド・レナーテ!? 聞いた事があります。全身から猛毒を垂れ流し、生けるもの全てを殺す最悪の魔獣……」
考古学者風の男が戦慄した表情、その一方で口元は嬉しそうに歪めていた。
その言葉で、辛うじて冷静を保っていた会議室は一瞬にして混乱に陥ってしまった。
「タマモ殿!? 対抗は出来るのですか!?」
「ウロボロスと地下工房は手が離せへんから、ウチから出せる戦力ゆうたらウチとミドの二人だけ。アヴァロン守りながら紫毒を抑え込むんは二人でやっとやろうね」
「それなら――」
「だが、他の魔獣をアンタらに任せることになる」
ミドガルズオルムが無理難題を彼らに突きつけた。
「ぐっ……メアリ嬢、現状で状況に対応できる協会員の人数は?」
「総数300名ほど。その中でD~Cランクの魔獣との交戦経験があるのは200名ほど、集団及び混戦の経験があるのは……30名もいません」
絶望的な数字だった。
「そうだ! あの子供に渡した最新鋭艦ならどうだ?」
「おお、それがあったか!?」
白羽の矢が立てられたのは移動工房艦アメノマだ。
不意にメアリは大きなため息をついた。
冷静に考えれば容易に判断できるはずだ。
「移動工房艦アメノマで対応できるのは良くても10万といったところでしょう。残り38万はどうしようもありません」
「……無理か」
焼け石に水。
その10万も艦に搭載されている火器全てを使いつくし、最後に融合炉を暴走させて自爆させた場合の期待値だ。実際には7万くらいが関の山だろう。
どう計算しても48万の魔獣に対抗できる術はない。
世界中に飛び散っている協会員全員と政治的に協力関係にある参加国家が戦力を裂いてくれてやっと五分五分になるくらいだと思われる。
「ミド、今からウー君とあの子呼び戻したとして何分必要や?」
「おいおい、最終段階だぞ。呼び戻せるワケねーだろ!?」
「無理は承知や。せやけど、このままやったら守りたいモノも守られへん。もしあの子が本当に黒いのに認められるんやったら……そろそろ終わってもおかしくはない。ウチはその可能性に賭けたいんよ」
「…………。一番足が速い奴に走らせて……12時間だ」
「奇跡を信じて12時間守り通すか、アヴァロンを捨てるか。ウチらに残された選択肢は二つに一つ。ウチは奇跡を信じて一人でもこのアヴァロンを守るつもりや。皆は好きにしたらええよ」
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