【完結】冷酷な悪役令嬢の婚約破棄は終わらない

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レオンハルト王子が他の令嬢と踊り始めるのを見届けたアリシアは、静かにその場を離れた。彼女の計画は、単なるダンスの拒否では終わらない。今夜、彼女はこの宮殿で起こる一連の事件の首謀者となるのだ。

アリシアは、人目を避けるように廊下を進み、裏庭へと続く扉を開けた。そこには、彼女の忠実な侍女、エリザが待っていた。

「お待ちしておりました、アリシア様」

「準備はできているのね？」

エリザはうなずき、手に持った小さな袋を差し出した。その中には、特製の毒薬が入っていた。アリシアはそれを受け取り、冷静に確認する。

「これで、全てが終わるわ。あの王子も、そして彼を取り巻く全ての者も」

アリシアの瞳には冷酷な光が宿っていた。しかし、その奥には複雑な感情も渦巻いていた。彼女が悪役令嬢としての道を選んだ理由には、深い悲しみと裏切りがあったのだ。

彼女は再び宮殿の中へ戻り、慎重に歩を進めた。目指すは王子の個室。そこで彼は、この夜のために特別に用意されたワインを味わうことになっていた。そのワインに、アリシアは毒を混ぜるつもりだった。

途中、彼女は一人の若い騎士とすれ違った。彼の名はルーカス。王子の親友であり、アリシアにとっても幼馴染だった。彼の存在が、彼女の心を一瞬揺さぶる。

「アリシア、こんなところで何をしているんだ？」

ルーカスの問いかけに、アリシアは冷ややかに答えた。

「少し外の空気を吸っていただけよ。あなたこそ、こんなところで何をしているの？」

「王子の命を守るために巡回しているんだ。最近、妙な噂が多いからね」

アリシアはその言葉に一瞬だけ胸が痛んだ。しかし、彼女は決意を揺るがせなかった。

「そう、頑張ってね。私はもう部屋に戻るわ」

そう言ってアリシアは歩き出した。その背中を見送るルーカスの視線が、いつもとは違う鋭さを持っていることに気づくことなく。

王子の個室の前に立ったアリシアは、深呼吸をしてから扉をノックした。扉が開かれ、王子の侍従が出迎えた。

「王子にお届け物があるの。どうしても今夜、手渡したいの」

侍従は一瞬ためらったが、アリシアの毅然とした態度に押され、彼女を中に通した。王子は部屋の奥で書類に目を通していたが、アリシアの姿を見て驚きの表情を浮かべた。

「アリシア、何の用だ？」

「特別なワインをお届けに参りました。今宵の祝いにふさわしいものですわ」

そう言って彼女はワインの瓶を取り出し、優雅に差し出した。王子はそれを受け取りながら、怪訝な顔をした。

「これは...」

その瞬間、部屋の外から騒がしい足音が聞こえた。ルーカスが駆け込んでくると、彼は息を切らしながら叫んだ。

「そのワインに手をつけるな、王子！」

アリシアは驚きの表情を浮かべたが、その瞳には一瞬の焦りが見えた。ルーカスが彼女を睨みつける。

「アリシア、何を企んでいるんだ？」

部屋の緊張感が一気に高まる中、アリシアは冷静を装いながらも、内心では全てが終わったことを悟っていた。