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本編

39.お風呂

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 家に着いて、今日は最初から美月を甘やかそうと思って、肩を抱いて頭を撫でてみた。いつも私が抱きつきに行くから甘やかしてくれるけれど、美月だって甘えるのが苦手なだけで、嫌いなわけじゃないはず。

 チラ、と様子を伺うように見てきて、私がどっちの気分か確認しようとしている気がする。私を支えてくれて、沢山甘やかしてくれるから、時々本当に年下? って思うくらい大人びている。

 私の甘やかしたい気持ちが伝わったのか、甘えるのが苦手な美月が頑張って甘えてきてくれているのが分かって愛しさでいっぱいになる。
 美月が首筋にキスなんてしてくるから、早々にベッドに連れ込んだ。
 私にとっては願ってもない展開。絶対誘ってたよね?

 まだ明るい時間で恥ずかしそうにしていたけれど、それはもう反応も良くて可愛かった。照れながらも、小さい声で好きって言われた時は、素直な美月の破壊力に、めちゃくちゃにしたくなる衝動を抑えるのが大変だったくらい。

 私の腕の中で安心したように微睡む美月が愛しくて仕方がない。さっきまでの乱れた姿を思い出して顔が緩む。
 まだこのまま抱き合っていたいけれど、もう少ししたら夜ご飯の支度をしようと離れちゃうんだろうな……私が面倒臭がりだから、一緒にいる時はちゃんと食べさせないとって妙な使命感があるみたいだし。

 ご飯の支度も美月と一緒なら楽しいけれど、まだ離れたくないし、なにか頼んじゃおうかな。
 スマホを探して検索を始めると、美月も画面を覗き込んでくる。タピオカを見つけて目を輝かせていて、迷わず注文ページを開いた。

 料理も沢山あって迷ったけれど、美月も好きな韓国料理を選んで注文する。

 美月をからかいながらベッドでイチャイチャして、ご飯を食べ終わってもまだ普段は仕事をしている時間で、せっかくなら寝る前にもう1回、と思っちゃう私は美月の言うように変態なのかな……

 早くお風呂に入ってのんびりしたい、なんて言ったけど下心バレてないよね??

「美月、入浴剤入れる?」
「入れる!」

 私は入れなくてもいいけれど、美月は今もお風呂は恥ずかしいみたいだからな……もっと凄いことしてるのに。

「今日は透明のにしたら?」
「しませーん」

 美月が持っていってもまだ数が多くて、どれがにごり湯のだろうって探しているから、今度分けておいてあげようかな。

「えー。肌見えないじゃんー」
「見えなくていいの!」

 恥ずかしそうにするのが見たくてついからかっちゃう。美月も本気じゃないって分かってくれてるしね。

「そんなに見てきて、脱がせて欲しいの?」
「自分で脱ぎますー!」

 入浴剤を決めて、こっちをチラチラ見てくる。脱ぐのが恥ずかしいんだろうけど、恥じらう姿にそそられるって分かってるのかな……
 あんまりからかって拗ねちゃっても困るし、先に入ってよう。裸になったところで美月を見れば下着に手をかける所で、なんだかエロい。私の思考がピンクなだけかもしれないけれど。

「陽葵ちゃん、私が髪洗っていい?」
「いいの? 洗ってー!」

 メイクを落として、髪を濡らしたところで美月が入ってきて、洗ってくれるって言うから甘えちゃう。手つきが丁寧だし、なんだか髪の毛まで大切にしてくれているみたいでうっとりしちゃうんだよね。

 コンディショナーを流し終えて、身体はどうするのかなって思ったら泡立てたスポンジを押し付けられた。

「あれ、洗ってくれないんだ?」
「身体は自分でやってくださーい」

 残念ながら髪の毛だけらしい。自分の髪を洗い始めたから、美月の身体は私が洗おう、なんて企みながら自分の身体を洗う。短いからあっという間に終わるし、ゆっくり洗えばちょうど良さそう。

「陽葵ちゃん、スポンジ貸して」
「え、やだ」
「なんで?! あと流すだけじゃないの?」

 私の不埒な考えなんて気づかず不思議そうにしている。さて、どんな反応してくれるかな?

「洗ってあげる」
「えっ?! いい、いい! 子供じゃないんだし自分で出来るって!」

 恋人の身体を洗ったっておかしくないよね? 

「背中とかちゃんと洗えてないかもじゃん? はい、大人しくして」
「えー、本気? 背中だけね??」

 自分でやるのにな、なんて呟きつつも大人しく待ってくれるなんて、なんだかんだ私に甘い。

「ねぇ、どこ触ってるの?!」
「ん? 普通に洗ってるだけだよ?」
「絶対うそ!!」

 もちろんわざとだけどね。真っ赤になっちゃって、ほんと可愛い。

「はい、バンザイしてー」
「絶対やだ!」
「なんで?」

 まあ、理由は分かってるけど。

「変なところ触るでしょ?!」
「変なところってどこー? みつきたんのえっちー」
「またそうやって!! もー、陽葵ちゃん先に入ってて!」

 膨れちゃって可愛いなー。からかうのはこの辺にしておこうかな。

「ごめんって。はい、スポンジ」
「え、ありがと」

 すんなり渡したことに驚いたみたいだったけれど、髪をまとめて、大人しく湯船に浸かって待っていると、洗い終わった美月も入って来た。
 そんなに離れなくても何もしないって。今は。

 私が何がするんじゃないかと警戒していたけれど、入浴剤のおかげで肌も見えないからかだんだんリラックスしてくれていて、気持ちよさそうに目を閉じている。

「美月、寝ないでよー?」
「陽葵ちゃんとは違うから平気ですー」
「え、私だってお風呂じゃ寝ないよ?!」

 確かに髪を乾かしてもらったりソファで横になってるとうとうとしちゃうけど。

「でもすぐ寝るじゃん? 起きててねって言ってもソファで寝てたりするし」

 くすくす笑って、前に寝落ちした時のことを楽しそうに弄ってくる。寝落ちしても、仕方ないなぁってお世話してくれるから優しいよね。

 先に出ることにして、ざっと身体を拭いて髪を乾かす。下着でウロウロすると怒るからちゃんと服も着たし、歯磨きも終えて後は美月を待つだけ。

「陽葵ちゃん、ちゃんと髪乾かした??」

 ソファに座って少し待つと、髪をタオルで拭きながら美月が出てきた。普段もイケメンだけれど、お風呂上がりは色気もあって、毎回ドキドキする。お風呂上がりの美月の動画とか物凄く需要がありそう。

「うん、ちゃんと乾いてるね。偉い」

 そう言って頭を撫でてくれるから思わず腰に抱きついてしまった。そのまま隣に座ってもらって、ピッタリくっついてSNSの更新をする。

「まだ時間あるけど、映画でも見る? 昼間も見たけど……」
「もう寝よ?」
「え、眠い? たまには早く寝よっか」

 今日はもう沢山したからか、またしたいって思ってるなんて考えてもいないみたいで、すんなり寝室に移動してくれた。

「美月、もう1回してもいい??」
「え?! さっきあんなに……」

 仰向けに寝転んでスマホを見ている美月を組み敷くと途端に狼狽え始めた。

「それなら私がするよ。交代しよ?」
「ううん、私がしたい」
「いつもずる……んんっ?! ……は、ぁ……」

 話の途中だったけれど、唇を塞ぐと目がとろんとして力が抜けた。美月はきっとキスが好きだと思う。うっとりしてくれるし、してる時もキスを求められることが多い気がする。

「美月、かわいい。その気になってくれた?」
「ーっ!! なってないっ」

 真っ赤な顔して、涙目でそんなことを言われても説得力がないよ? 私のシャツを掴んでるの気づいてる? 可愛すぎ……


 裸のまま眠りに落ちた美月にしっかり布団をかける。次に泊まれるのは年明けかな、と思ったら終われなくて無理をさせてしまった。

「おはよう。気分は? 大丈夫?」
「うん。あれ、昨日……うー」

 目が覚めた美月は外が明るいのを見てあれ? という顔をして、昨日のことを思い出したのか布団に潜り込んで唸っている。

「無理させてごめんね? 怒ってる?」
「……や、怒ってないけど。陽葵ちゃんばっかりずるい!!」
「え、ずるい??」

 布団から少しだけ顔を出して睨んでくる。ずるいって攻めさせなかったこと?

「いっつも余裕だし、私ばっかり……」
「余裕なんてあったら無理なんてさせないって」

 そんなに余裕があるように見えてる? こんなに夢中なのに。頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めたけれど、ハッとしたように首を振った。

「またそうやって……次は私の番!」
「え、今?」

 もうそんなゆっくりする時間ないけど……

「いまっ?! えっと……次回!!」
「ふふ、楽しみにしてる」
「もー、絶対その余裕無くさせる!!」

 朝起きて、怒られるかなと思ったら次は攻めると宣言された。なにそれ、可愛すぎ。
 攻めてくれる時はヘタレだったりSだったり色んな美月が見られるから、今度はどんな姿を見せてくれるのか楽しみ。
 次の泊まりまで期間が空くから、また私から攻めちゃうかもだけど……
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