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ごじゅう

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そう、はぐれないようにと、思っていたのに私は気づいたら南の街で1人ポツンとたっていた。


いやいやいや、待って!!!
おかしい!今までみんな一緒だったじゃない?アークが転移魔法を展開して、私ははぐれないようにとヘレスと手を繋いだわ。

そして、ここ街に来て無事にみんなで転移できた事を喜び、休憩しようとアークが店を探していて、私は、私は、なぜ、1人?


おかしい。さっきまでペレスがそばにいたはずなのに!

私は周りに絶望しながらヨロヨロと頼りない足取りで街中を歩けば、前からガタイのいい男の人にぶつかられよろけてしまった。

「あっ…」

転ぶーーーと咄嗟に手をつこうとしたが、その前に誰かに体を支えてもらった。

「大丈夫ですか?」

「あ、ありがとうございます…」


私の体を支えてくれたのは、優しそうな感じの女の人だった。
その人は片手に買い物袋を持ち、私に向かってニコッと笑いながら私の服を軽く叩いてくれた。

1人にされた時、やはり優しそうな人に出会うと心が染みる。

「あの、失礼ですが、迷いましたか?」

優しそうな女の人は少し眉を下げながら、私にそう聞いてくる。
私は言葉を詰まらせながら、渋々現実を受け止め頷いた。

あまりのしかめっ面に女の人はクスクスと笑っていたけど、私は気にせず流した。

それから私はリアと名乗った女の人の家にお邪魔することになった。


「リアさん、本当にいいんですか?」

「いいのいいの!それから敬語もいらないっていったでしょう?」

「でも、、、リアさんの方が年上なのに、」

「あら?おばさんって言いたいの?」


少し悪戯っぽく笑いながらそういったリアに私は慌てて首を振り、違います!と言った。

そんな私の慌て振りをみてさらに笑みを深めて笑うリア。そんな彼女をみて自分は揶揄われたのだと気づく。

少し彼女を睨みながらも、私も声を出して笑った。




「リアさん、ここに住んでるの?」


しばらく歩くと、少し街外れの場所にポツンと可愛らしい家が立っていた。

自然に囲まれており、家の前には木の板でリアと書かれていた。

実家に比べれば小さな家だが、馬小屋よりかは大きかった。

リアはじーっと家を観察している私をみて、ふふふと笑っていた。

「そうよ。ここに1人で住んでるの!さあ、行きましょう!」

「え、あ、待ってよ!」

先に行こうとするリアを追いかけて私はまた転びそうになる。





「ルゥ!!!!!」



誰かの懐かしい声がしたような。
私はその声に振り返りそうになったが、目の前にいたリアが私の腕引っ張った。

「あ、れ?私、また転びそうに?」

「そうよ、よく転ぶのね。もう、気をつけてこの辺は魔物は出ないけれど、毒蛇や毒草があるんだから」

「え、あ、うん!気をつける!ごめんね、リアさん。ありがとう」

毒蛇や毒草があると聞き、背筋がゾッとしたが確かにこんだけ自然豊かだとそういう生き物がいても不思議ではない。

私は改めてリアさんに助けられたと安堵し、彼女にお礼を言った。彼女はそんな私をみてふふっと笑っていた。

何かおかしいところがあっただろうか?

私は首を傾げたが、考えてもわからなかったのでそのまま彼女について行き、家に入った。










「ちょっと!おねーちゃん、入っちゃったじゃん!」

「うるさい、ヘレス。仕方ないだろう!」

後ろの方に仲間がいて、自分が危険な状況下にいるとは知らずに。


「ルゥ、おねがい。無事でいてくれ。」


相手の結界の中に入って姿を消してしまったルミナスを思い、強く願いながら片手で何やら魔法を展開し始めるルシファー。

そんな彼をみてヘレスとアークは静かにその場を離れた。

彼が展開する魔法が何かは知らないが、おそらくかなりの上位魔法であることは確かだったからだ。







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