51 / 61
3
ごじゅう
しおりを挟むそう、はぐれないようにと、思っていたのに私は気づいたら南の街で1人ポツンとたっていた。
いやいやいや、待って!!!
おかしい!今までみんな一緒だったじゃない?アークが転移魔法を展開して、私ははぐれないようにとヘレスと手を繋いだわ。
そして、ここ街に来て無事にみんなで転移できた事を喜び、休憩しようとアークが店を探していて、私は、私は、なぜ、1人?
おかしい。さっきまでペレスがそばにいたはずなのに!
私は周りに絶望しながらヨロヨロと頼りない足取りで街中を歩けば、前からガタイのいい男の人にぶつかられよろけてしまった。
「あっ…」
転ぶーーーと咄嗟に手をつこうとしたが、その前に誰かに体を支えてもらった。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます…」
私の体を支えてくれたのは、優しそうな感じの女の人だった。
その人は片手に買い物袋を持ち、私に向かってニコッと笑いながら私の服を軽く叩いてくれた。
1人にされた時、やはり優しそうな人に出会うと心が染みる。
「あの、失礼ですが、迷いましたか?」
優しそうな女の人は少し眉を下げながら、私にそう聞いてくる。
私は言葉を詰まらせながら、渋々現実を受け止め頷いた。
あまりのしかめっ面に女の人はクスクスと笑っていたけど、私は気にせず流した。
それから私はリアと名乗った女の人の家にお邪魔することになった。
「リアさん、本当にいいんですか?」
「いいのいいの!それから敬語もいらないっていったでしょう?」
「でも、、、リアさんの方が年上なのに、」
「あら?おばさんって言いたいの?」
少し悪戯っぽく笑いながらそういったリアに私は慌てて首を振り、違います!と言った。
そんな私の慌て振りをみてさらに笑みを深めて笑うリア。そんな彼女をみて自分は揶揄われたのだと気づく。
少し彼女を睨みながらも、私も声を出して笑った。
「リアさん、ここに住んでるの?」
しばらく歩くと、少し街外れの場所にポツンと可愛らしい家が立っていた。
自然に囲まれており、家の前には木の板でリアと書かれていた。
実家に比べれば小さな家だが、馬小屋よりかは大きかった。
リアはじーっと家を観察している私をみて、ふふふと笑っていた。
「そうよ。ここに1人で住んでるの!さあ、行きましょう!」
「え、あ、待ってよ!」
先に行こうとするリアを追いかけて私はまた転びそうになる。
「ルゥ!!!!!」
誰かの懐かしい声がしたような。
私はその声に振り返りそうになったが、目の前にいたリアが私の腕引っ張った。
「あ、れ?私、また転びそうに?」
「そうよ、よく転ぶのね。もう、気をつけてこの辺は魔物は出ないけれど、毒蛇や毒草があるんだから」
「え、あ、うん!気をつける!ごめんね、リアさん。ありがとう」
毒蛇や毒草があると聞き、背筋がゾッとしたが確かにこんだけ自然豊かだとそういう生き物がいても不思議ではない。
私は改めてリアさんに助けられたと安堵し、彼女にお礼を言った。彼女はそんな私をみてふふっと笑っていた。
何かおかしいところがあっただろうか?
私は首を傾げたが、考えてもわからなかったのでそのまま彼女について行き、家に入った。
「ちょっと!おねーちゃん、入っちゃったじゃん!」
「うるさい、ヘレス。仕方ないだろう!」
後ろの方に仲間がいて、自分が危険な状況下にいるとは知らずに。
「ルゥ、おねがい。無事でいてくれ。」
相手の結界の中に入って姿を消してしまったルミナスを思い、強く願いながら片手で何やら魔法を展開し始めるルシファー。
そんな彼をみてヘレスとアークは静かにその場を離れた。
彼が展開する魔法が何かは知らないが、おそらくかなりの上位魔法であることは確かだったからだ。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
【完結】淑女の顔も二度目まで
凛蓮月
恋愛
カリバー公爵夫人リリミアが、執務室のバルコニーから身投げした。
彼女の夫マクルドは公爵邸の離れに愛人メイを囲い、彼には婚前からの子どもであるエクスもいた。
リリミアの友人は彼女を責め、夫の親は婚前子を庇った。
娘のマキナも異母兄を慕い、リリミアは孤立し、ーーとある事件から耐え切れなくなったリリミアは身投げした。
マクルドはリリミアを愛していた。
だから、友人の手を借りて時を戻す事にした。
再びリリミアと幸せになるために。
【ホットランキング上位ありがとうございます(゚Д゚;≡;゚Д゚)
恐縮しておりますm(_ _)m】
※最終的なタグを追加しました。
※作品傾向はダーク、シリアスです。
※読者様それぞれの受け取り方により変わるので「ざまぁ」タグは付けていません。
※作者比で一回目の人生は胸糞展開、矛盾行動してます。自分で書きながら鼻息荒くしてます。すみません。皆様は落ち着いてお読み下さい。
※甘い恋愛成分は薄めです。
※時戻りをしても、そんなにほいほいと上手く行くかな? というお話です。
※作者の脳内異世界のお話です。
※他サイト様でも公開しています。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
聖女を騙った少女は、二度目の生を自由に生きる
夕立悠理
恋愛
ある日、聖女として異世界に召喚された美香。その国は、魔物と戦っているらしく、兵士たちを励まして欲しいと頼まれた。しかし、徐々に戦況もよくなってきたところで、魔法の力をもった本物の『聖女』様が現れてしまい、美香は、聖女を騙った罪で、処刑される。
しかし、ギロチンの刃が落とされた瞬間、時間が巻き戻り、美香が召喚された時に戻り、美香は二度目の生を得る。美香は今度は魔物の元へ行き、自由に生きることにすると、かつては敵だったはずの魔王に溺愛される。
しかし、なぜか、美香を見捨てたはずの護衛も執着してきて――。
※小説家になろう様にも投稿しています
※感想をいただけると、とても嬉しいです
※著作権は放棄してません
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
亡くなった王太子妃
沙耶
恋愛
王妃の茶会で毒を盛られてしまった王太子妃。
侍女の証言、王太子妃の親友、溺愛していた妹。
王太子妃を愛していた王太子が、全てを気付いた時にはもう遅かった。
なぜなら彼女は死んでしまったのだから。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる