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さんじゅうきゅう

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「待って、間違えた…何するのが好き?」

「うーんと、人間の街を壊すの!」

「ううん…なに色が好き?」

「赤!真っ赤な血と絶望の悲鳴がセットだと余計に好きだよ!」



…待って!!!!さっきから、この子こわい!!!!破壊の魔物ヘレスだとわかってるんだけど、いやだって、見た目が幼い女の子だから。

こうやって、見た目に騙されてみんな死んだのかしら?なんて考えては辞めた。


「…じゃあ、誰が好き?」

「うふふふっアークとおねーちゃん!」

「私もヘレスの事好いてる、ありがとう」

「わあ、一緒だねー!」

にこにこ笑う透明な瞳はとても無邪気で、本当にただの女の子にしか見えない。
私のことを好きだというのも本当なのだろうけど。もし、その好きという気持ちが突然消えたら?契約者じゃない私は、すぐに殺されてしまう。

そう考えると私はやはり、ヘレスがこわい。


「おねーちゃんもう質問終わり?」

「うーん、じゃあ、最後にもう一個!」

「なになに?!」

「ヘレスはどうやってヘレスになったの?」


多分この質問がダメだったんだと、後に反省した。だけど、私は気づかずヘレスのーーー彼の怒りに触れてしまった。


破壊の魔物ヘレスは私の質問に目を大きく開き、そして、スッと細めた。

そして、聞いたことのないくらい低い声で私にこう言った。

「それを知ってどうする」

その声は上級魔物の名に恥じぬ、殺気とそして威厳、恐怖などが含まれていた。
私はその声を聞いて、身体が石になったように動かなくなる。

…私は今、ヘレスに恐怖している。

それを理解している。理解しているのに、何もできない。ただ相手を見つめ、隙を見せずただそこにいることしかできなかった。


「…恐怖で声を出ぬか、人間」

そう言って、女の子には似合わない人を見下すような蔑むような表情を見せ、私を嗤うヘレスに今度は私が目を見開く。

これは、誰だ?
目の前にいるのは、私たちと共にいたヘレスなのか?

そんな私を見て、ヘレスが手を振りかざす。
振りかざされた手からは禍々しい魔力が。

私は咄嗟に風魔法で防御し、体に結界魔法をかけた。


「っ!!」

「ふん、流石我々の封印を解いただけのことはあるな。」

「ど、ういう事だ!お前は、破壊の魔物、ヘレスではないのか?」


もう一振りというように、先ほどより強い魔力が、私に向かって放たれそうになったが第三者の存在にヘレスは手を止めた。

私は、扉のところに立っているアークを見て、肩の力を抜いた。

しかし、結界魔法は解かない。

何が起こるか分からないからだ。




「やはり、あの説は本当だったのだな。

破壊の魔物ヘレスは、昔人だったというのは。」



何も言わずにアークを見ていたヘレスが、彼の発言に肩を揺らし反応した。

私はアークの発言に少しばかり驚くが、この話はかなりこの国では有名で、真偽は不明だが御伽話のような感じで民に知られている。


「どうした、図星か?ヘレスよ。いや、エステレラ初代勇者リヒトと呼ぶべきか?」





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